15. あらまぁ
「こんな感じかな」
あらぬ疑いをかけられ、追われる身となった事から、逃げるようにこの穴ぐらに足を踏み入れ、最下層までメガトン落下する所まで、一通りの経緯を彼女に話した。
「酷い!騎士が罪を被せるなんて...!」
これを聞いた彼女はアンドレに対する理不尽に憤っていた。
「フワッフワした話だけど信じてくれるのか?」
「貴方が嘘を言ったつもりでないなら私は信じますよ?」
先程の表情から一転、笑顔を見せてそう言った。彼女の目に疑いは無く、半ばビクビクして話していたので安心した。
「...ありがとう」
「こちらこそ話してくれてありがとうございます、辛い事を言わせましたね...」
こんなに心の優しい言葉を投げかけられると、また目が緩くなってきた。アルカルドのけなすような口ぶりとは対照的、悪魔の眷属である筈なのに、まるで天使に見えるぞ。
「おかげで元気が出たよ...よし!」
途端に明るくなったアンドレは本棚へと駆け込み、その中にあるあの赤い書物を取り出すと、また戻ってきた。
「それは...まさか...」
「『大賢者ハイトの原典』さ。アルカルドには何も言われなかったからこうして読んでるんだ。つい最近からだけど...」
アンドレがそう言うと、シェリダンはあらまぁ! と驚嘆を浮かべた。
「原典ですって! 貴方、読めるのですか⁉︎」
「いーや...次の項でダウンしちゃったよ...」
シェリダンの過度な期待を改めるように言葉を返したが、彼女は驚きを重ね、大きく口を開いた。
「まぁ、すごいじゃないですか!私も拝借したのですが、その時は最初の数行で気を失ってしまいました....今はなんとか2割程まで読み進めてますけど」
「これで良いのか...」
彼女曰く、これで『読める』扱いをされるようだった。褒められているみたいだが、吸血鬼の肉体でも等しく耐えかねる辺り、“原典”の難解さを物語っている風にしか聞こえないぞ...
「とにかく、魔術師に欲しいものは殲滅力だから、早く上位の呪文を習得しないと...」
「一応は私も、魔術師呪文をかじっておりますので、出来る範囲でよろしければ指南しましょうか?」
「ほ、本当か」
そういえば吸血鬼はかなりの魔術師呪文の使い手でもあると聞いている。勿論、駆け出しの僕より難しいものや、広範囲の火炎呪文だって覚えているらしいので、願っても無い話だ。
「アンドレ君ならば比較的短期間で覚えられると思いますよ」
「そうであるように努力するよ...」
この後は彼女から魔道を教えてもらった。意外とビッシリとした指導で軽くまた数時間は拘束された。訓練所から卒業した身なのにね。
終わった後はどっと疲れが襲ってきて、すぐに寝込んでしまった。「おやすみなさい」の声が聞こえたのを最後に意識は深い底へと沈んでいった。




