14. 焼きカエルと身元話
「ロウ・ザ・サード...」
それは異国の冒険者の名前である。一握りの天才か、相応の修練を積んだ者のみがなれる“忍者/Ninja”のクラスに就いており、その枠組みで比べても、敵う者はいないという。
単独で多くの魔物を切り刻んでいく姿を見て、人々は彼に敬意と賞賛を込め、“嵐卿”と呼んでいる。
「シェリダンさんはこの後どうするんだ?」
「今の外界は、嵐卿の事もありますが、いつも以上に冒険者の蔓延る様子となっている故、しばらく留まろうかと」
「アンドレ君の世話も言われてますし、ね?」
「また付いていってくれるのか?」
「ええ」
ありがたい。吸血鬼は下層の魔物なので、パーティ戦闘力は倍以上になる。あと優しいし、綺麗だし...って何を言っているんだ。
それにしてもこの焼きカエルは中々美味い。味付けを施して無いはずなのに、しっかりと旨味を感じられるのだ。
ちなみに、モンスター達の分もあるそうで、そいつらも一緒に食べている。そりゃあゾンビだってお腹は空く、ていうか飢えが原動力みたいなものだから当たり前か。
「(ていうかあのカエル肉たっぷりの箱に新聞とか混ぜてんだな...)」
すりすり、
生暖かい感触に気付き、見てみると、カエル肉を切らした暴食ウサギ共が擦り寄っていた。
「お前らはえーんだよ!」
「見ろこいつらを!これが普通の速度なんだよ!」
未だ口をつけている僧侶とゾンビを指差し、諭そうとする。しかし、
*ヴォーパルバニーはこちらをじっと見つめている*
*ヴォーパルバニーはこちらをじっと見つめている*
*ヴォーパルバニーは前歯を煌めかせている*
指差す方を振り向こうともしないぞこいつら。これが馬耳東風ならぬ兎耳東風って何いわせとんねん。
「...しょうがないなぁ」
小動物の瞳にまた根負けしたアンドレはこちらの持つ肉のほとんどを差し出すと、すぐに噛り続けた。
ガジガジガジガジガジ
「(物凄い勢いで削れていくぞ...)」
美味しかっただけに残念な気持ちになったが、 横からシェリダンが入ってきて、こちらにもう一切れ二切れ程差し入れてくれた。
「いっぱいありますからね」
「あ、ありがとう...てかそんなにあって腐らないのか?」
「『ブラックボックス』の空間は時間が止まってますので、何百、何千年だって新鮮な状態を保てますよー」
「盛り過ぎだろソレ」
聞けば聞く程素晴らしい道具だ。母ちゃんもこんなものがあれば泣いて喜ぶだろうな。
「ところで、アンドレ君」
「うん?」
「貴方はどうしてこんな所にやってきたのか聞いてなくって...」
「もし差し支えなければ教えてくれません?」
「あー...」
そういえば彼女は僕の素性を知らなかったのだった。外に顔を出しているのなら、お尋ね者であった事くらいは知っているかもしれないが...
「うん、言わなくっちゃあいけないな」
「まずは...」




