12. 戦闘後
相手のパーティに戦闘可能な者は居なくなった。戦いは終わったのだ。
だが、良い気分では無い。
当たり前だ。好き好んで殺戮をした訳じゃあない。これ以上この場所にいたら先程口にした携帯食を戻しそうだ。
「....」
三つの呪文を立て続けに受け、苦悶の表情を浮かべたまま動かない魔術師が一人。
ゾンビの麻痺毒で動かない僧侶が一人。
首無し戦士が一人。
そして、レベルが0以下となり、魂の喪失したミイラプリーストが一人。
とても目を向けられる光景では無い。
「どうしたのですか?」
「...なんて言うまでもありませんね...」
「...ああ、流石に応えるよ」
「最初はそんな感じです」
「その内慣れますよ」
「....そうだな」
本当はそんな事に慣れたく無いが、自ら選んだ道だ。躊躇いを見せてはならない。
そう考えても、色んな気持ちが火山の如く噴き出してくる。そんな中で一番考えないようにしていた母親の事までも、とうとう思い出してしまった。
僕に嫌疑がかけられたせいで恐ろしい目にあっていないか、安否はどうなのか、そう思うと胃が痛くなってきた。
良い暮らしをさせてやると言ったはずなのに、今やっている事は母を苦しめる結果になるだけではないか。
「う...うう...」
涙が出てきた。明るい所で暮らせないというのはそういう事である、とようやく理解したのだ。
「....」
すぐに止めないと、と考えても考えてもどんどん湧いてでてくる。そんな年では無いというのに...
「泣いてますの?」
「な、泣いてない...」
急いで顔を拭うも、どうしても赤面だけは隠す事は出来ない。畜生。
「泣いてないからな!」
「..ふふっ」
最早子供のようにしか見えない様を見てか、彼女はくすくす笑った。
「男の子にだってそんな時ありますもの。別にいいんですよ」
「『男の子』なんて言うなよ、冒険者は立派な『大人』なんだ!」
「....さっきそいつらやっつけちゃったけど」
そう言って、思わず死体に目を向けようとしたが、チラリと見えた瞬間、音速で首を戻した。
「(危ない危ない危ない普通に見ようとしちゃったよ)」
しかし、これらはこの後持ち帰らなければならない。真祖アルカルドへの供物として捧げるのだ。
「(...しかしまぁ、こんな死体、どうするつもりなのだろうか?)」
食べる、とは言っても死体を喰らうなぞ野犬の行動だ。偉そうな口ぶりをする奴がそれをするとは思えないが...
麻痺した奴くらいなら新鮮だからなんとか...今のは悪過ぎる考えだな。
さて、戦闘終了時は探索続行か否かの分かれ目でもある。
これ以上戦っても持てる数は限られてるし、呪文の残りだって大した回数では無い。駆け出しの僕では尚更だ。
正直、帰ってしまいたいので彼女にその旨を尋ねた。
「...そうですね、じゃあ帰りましょうか」
彼女もちゃんとわかってくれたようだ。よかった。
動かない者達の大半をゾンビ共に担がせ、帰路につく事とした。残りは仕方なく僕とレベル1僧侶達で手分けした。
僕の正気度は保てるだろうか。
今回は運良く被害無しで済んだが、あの街の範囲だけでもかなりの冒険者が存在している。連れているモンスターでも力不足になる場合が出てくるだろう。
果たして僕はこの先、生き残れるだろうか。




