プロローグ
訓練所。そこでは冒険者を生産する為の場所である。ここでの卒業試験をクリアして、ようやくLV1の戦士や魔術師になれるのだ。
今、新たな冒険者が生まれようとしている。
「卒業試験、始めッ!」
「てえぇぇぇい!」
試験内容パーティ、あらかじめ組んでおいた四人一組のパーティで教官一人との模擬戦闘を行う、というもの。四人一組とは言っても、全員戦士、というような事は無く、クラス構成はおおよそ定められており、大抵は戦士二人、僧侶魔術師が一人ずつと言ったところだ。
「(緊張するなぁ)」
魔術師のアンドレも、その一人である。早速、炎魔法の詠唱を始めた。
「ぬぉぉお!」
他の訓練生がなんとか教官を抑え付けてくれている。
「フンッ!」
が、戦士二人を押しのけて突破された。詠唱中のアンドレが目をつけられている。
「まず一人目だ!」
しかし、振り下ろされた武器は空を切った。そして完成した炎魔法が教官にぶつけられた。
「ぐおっ!」
もろに当てたものの、流石は教官、硬い。
「危ない危ない...」
「いいスジしてるじゃあねぇか...」
「体制を立て直せー!」
敵のよろめきを機に、訓練生らの隊形が再構築される。危なくなったが、試験はこれからだ。
「すまねぇな、だが今ので緊張はほぐれたぜ」
「とりあえず”治癒”かけるね」
「おう、二度と同じ轍は踏まねえ!」
「かかってこい!」
「いくぞおおぉぉぉ!」
ーーーーー
卒業試験は一先ず終わった。後は結果を待つのみだ。
来たる発表の時でも、またアンドレは震えていた。
「うわあ落ちたらどうしよう」
「心配すんな。お前がいなけりゃパーティは崩れていたんだぞ」
「そうよ、自信を持って」
戦士のフォルテと僧侶のアルマが励ましてくれた。その横で彼と同じ戦士のエースも微笑んでいる。
ちなみにこの戦士の二人は兄弟。フォルテが兄で、エースが弟である
「皆ありがとう、でもお前達はどうなんだよ?」
「俺かぁ..実をいうとだな...」
「もう貼り出してるよ!見に行かなきゃ!」
「マジか!」
フォルテらの気持ちを聞く前にとうとうやってきた。四人ともはやる気持ちを抑えつつも、早足で掲示板の方に向かった。
アンドレは数字が見えるようになると左上から視界を流していく。
「156..156...」
流石は卒業試験、数字が飛び飛びだ。100台だがゆっくりと読むようにと121、147、....
「あった!あった!」
天にも昇る気持ちだ。これまでの自身の努力がついに報われたのだ。
「俺もあった!」
「私もよ!」
「同じく!」
他の三人についても同様だった。
「ついに俺たちもいっぱしの冒険者になれるんだな!」
「ああ!兄者!」
「トランレーゼ」国の住民は皆、冒険者という職業に憧れを抱いている。未開地の開拓が十分に済んでいない中では、自ら調査の前線に立てる勇者が必要とされたのだ。
そして、彼らのもたらす財宝、及び新種の生植物は、人々を惹きつけ、いまや多くの産業の中心に立とうとしている。
そして、都市に対して特に功績をもたらした冒険者は、王宮の近衛騎士に重用される事もある上、そうでなくても、未開地は未だ宝の山でもある。
しかし、ダンジョン、未開地は常に死と隣り合わせなので、訓練所での教育、修行を受け、そして試験を乗り越えて卒業しなければそれらへ入る事は原則認められていない。
という訳で、「冒険者」の地位は今高まっている。
余韻に浸りつつ、アンドレらはその後、合格者に対する説明会、ライセンスの発行を終え、
翌日に酒場にて集合する事を約束をして各々住処にと別れた。
アンドレは帰宅中、ずっと発行されたばかりのライセンスを見つめていた。
「母ちゃん見たらなんて言ってくれるかな」
辺りをキョロキョロ見渡したりと、挙動不振になりながら歩いていると、誰かが声を掛けてきた気がした。
怪しい、と思われたのか、おそるおそる振り返ると、何やら知らない人らしいが、どこかで見た事ある。
「卒業おめでとう、アンドレ」
「貴方は...」
「小さい頃に会ったきりだから覚えてないかな?マーカスだよ、マーカス。」
「あ、マーカスさん⁉︎お久しぶりです!」
アンドレは近衛騎士である父親をもっているが、小さい時に戦争で亡くしていると聞いた。なので今は母親との二人暮らしだ。
マーカスも同僚であると同時に。その父親の友人で、たまにアンドレの家に遊びにきたりしていた。彼もまた、アンドレの憧れでもある。
「大きくなったな。いずれ私と肩を並べるかもしれんな..ハハ...」
「大袈裟ですってば!僕魔術師ですし」
にしてはニヤニヤとしている。
「ん、戦士の道には進まなかったのか」
「ええ、僕、魔法の方が向いてるみたいで、父には少しだけ教えてもらったんですけどね」
「ならば王宮付の魔導師を目指すという訳か。騎士ロットの息子がか。それも面白いな」
ロットというのはアンドレの父の名前だ。母はカルディアという。
「そんなお前に贈り物だ」
するとマーカスは小袋から、装飾品らしきものを取り出した。
「これは...」
「合格祝いだ。受け取ってくれ」
そう言って、その装飾品を差し出した。
これの価値には疎いが、なんとなく高そうだ。きっと良い効果をもたらしてくれるだろう。
「こんな凄そうなものを僕に...?」
「遠慮するな」
「ありがとう、マーカスさん」
アンドレはその装飾品を受け取った。
「カルディアさんにもよろしく伝えておいてくれ」
「わかったよ」
「またな」
そう言ってマーカスは立ち去っていった。
引き続きアンドレはウキウキ気分で帰路についた。
「ただいまー!」
勢い良く戸を開けると、母親が迎えてくれた。
アンドレはずっと持っていたライセンスをどんと突き出すと、まぁっ、と驚いた顔を見せてくれた。
「よく今まで頑張ったねアンドレ、お前は本当に自慢の息子だよ」
「お父さんもそう言ってくれるさ」
「これで母ちゃんを楽にさせてやるからな」
父親の稼ぎはいまや無くなろうとしている。それ故に苦しい思いをする母親を助けてやりたい。それがアンドレの望みだった。
「ありがとう」
「でもね、アンドレ。私が不自由をしない事よりも、アンドレが無事でいてくれる事が本当の親孝行である事を絶対に忘れないでね」
「わかってるよ」
「なら良し。今夜はアンドレの大好きなチキングリルよ!お母さん頑張って作ったからね!」
「本当⁉︎」
16にもなって子供のように喜ぶアンドレ。しかし今のご時世、鶏のムネ肉ですら高級食材である。ましてや豚や牛なんて一般都民の食卓には一生かかっても並ばないだろう。
しかしアンドレにとってはそんな事どうでも良かった。母がいる、友がいる、それだけで良い(ご馳走に舌を包みながら)。
彼は幸せだったのだ。
それに、いずれ自分家族の稼ぎ口になるのだ。もっと良いものを食わせてやる、そう誓った。
ーーーーー
翌日
朝早く準備を済ませ、玄関に向かうアンドレを母は呼び止めた。
「今日は何処にいくの?」
「早速初陣さ」
母は寂しそうな顔をした。
「大丈夫だよ、母ちゃん。絶対帰ってくるからさ」
「わかってる、だけど約束してね」
「?」
「お母さんを置いていかないでね」
それは、母の最初のお願いだった。初めての冒険なのに大袈裟であるが、どうしても父を思い出してしまう。
「勿論だ。絶対に一人にしないからさ」
「魔術師なのに、お父さんと似てきたね。アンドレ」
「父ちゃんに比べたらまだまだだけどな。じゃあ、いってくるね!」
「いってらっしゃい」
母は、アンドレが見えなくなるまで笑顔で見送った。遠くなる程、何故か彼の姿は霞んで見えた。
アンドレは待ち合わせ場所である酒場の方へと着くと、何やら騒々しい。あまり寄った事は無いのだが、
明らかに人入りがおかしかった。
一体何があったのか、足を早めて人だかりに紛れ込んだ。
「国王様はご立腹とのことだぜ」
「アミュレットが盗まれたんだって?そんなに凄い奴なのかい」
「その犯人を捕まえれば出世出来るかなぁ」
民衆の騒ぎを聞いていると、大事件を予感した。人混みをかき分け、視線の的となっている一文を見つけ出した。ザックリ書くと以下の内容だった。
『国宝である”護符”が盗まれた。その犯人を捕らえよ。生死は問わない。』
とのことだった。
その一文の隅には、その護符が描かれていた。
アンドレはその形状に見覚えがあった。それもつい最近だ。
「まさか...」
アンドレはポーチから、祝いとして貰った装飾品を取り出した。
「嘘...だろ?」
視線を何往復かさせるものの、これは図にある通りの護符そのものだった。
何がなんだか訳がわからなかった。というより信じられなかった...これが護符であるとすればあのマーカスは...
「道を開けろお前達」
思考を遮るは、国王の兵士達であった。彼らは、お触れ文に群がる民衆を散らせた。
人々はかき分けられ、アンドレだけが取り残された。
そして、悠然とアンドレに歩み寄るのは、彼らを率いる騎士マーカスであった。
「マーカスさん...?」
思わぬ再会であったが、ジャストタイミングで疑問を晴らす事が出来る。アンドレはその装飾品を彼に差し出した。
「どういう事ですか。」
マーカスは表情を変えずに黙っていた。昨日とは全く違う、不気味な雰囲気を醸し出している。
「そうか、お前が持っていたのか」
「?」
彼は護符を手に取ったが、直前の言葉の意味が理解できなかった。
「国に仇なす賊め、討ち取ってくれる。」
「⁉︎」
そう言ってマーカスは剣を抜き、
「フンッ!」
アンドレをその手にかけんとした。
「危ッ...!」
間一髪でかわしたが、鋭い風圧が彼を煽った。
「どうして...?」
マーカスは何も答えなかった。その表情は冷たく、淡々としたものであった。
僕はマーカスに嵌められたのか?様々な疑問が湧き上がるも、アンドレは最早どうしようもない状態だった。
「(逃げなくては)」
窓ガラスを炎魔法で叩き割り、アンドレは一目散に外へと逃げた。捕まれば処刑されるのは間違いないだろう。
「逃げたぞ、追え。」
兵士達も続いてきた。
一方、兄弟戦士の、フォルテとエースも酒場に着こうとしていた。アルマも一緒である。
「アンドレ...?」
そこで、酒場から勢いよく逃げ去るアンドレが見えた。何があったのかを、フォルテは近くの者に聞いてみた。
「あいつか、反逆者として追われているみたいなんだ」
「どういう...事だ?」
〜〜〜
街路を掛けるアンドレ。足を緩めれば殺されてしまう。彼はとにかく街の外へと逃げようとした。
「...」
しかし、門の前にも二人程兵士がいた。このままでは挟み撃ちの形と化してしまう。
「バクチだな...」
アンドレは走りながら、睡眠呪文の術式を組み始めた。これが両方に効けば街の外に出れるが、かなりの精度を要求される。
「おい貴様!そこで止まれ!」
制止の声が聞こえてきたが、構わない。向かってきた兵士二人に睡眠呪文をかけた。
「(頼む)」
倒れ伏す兵士を一人見たが、もう一方は動きを止めず、そのまま突撃を続けている。
「あうッ...!」
避けきれず、アンドレの脇腹に槍が突き刺さった。痛みに堪え切れなく、膝をついた。
「これで詰みだな」
兵士は動けないアンドレを見下ろしている。いずれ他の追手もやってくるだろう。
「どうして..こうなった...」
どのように繕っても自身に非を見出すことが出来ない。ただ、自分は家族の支えになろうとしただけなのに。
最早、それは叶わないと、ひび割れようとしたアンドレに、三つの足音が鳴った。
「アンドレ!」
やってきたのは、酒場で会うと約束したフォルテ、エース、アルマの三人だった。
「お前達、何故ここに?」
「魔術師一人で突っ込むのは無謀だとちゃんと勉強したはずだぜ?」
「ちゃんとパーティを組まなきゃ」
「でも僕は..」
「貴様らもその反逆者に加担する気か?バカな真似はよせよ」
「....」
「ああ、その通りさ!」
「⁉︎」
フォルテは剣を振りかぶり、思いっきり兵士の顔面に殴りつけた。
「ぐわっ!」
兵士は倒れ伏した。
「気絶したようだな」
「お前、何をしたのかわかっているのか⁉︎」
「勿論わかっているさ。」
「これで私達も、貴方と同じ犯罪者ね。」
「パーティメンバーだからな。」
「皆...」
「ついでに回復はしておいてわ。動ける?」
彼女の言う通り、気がつくと脇腹の熱い感覚は取り払われている。これでまた走れるようになった。
「さあ、追っ手が来る。いくぞアンドレ」
「ごめん...」
四人は門を抜けた。地獄の逃避行が始まった...
〜〜〜〜
終始、追手が張り付いてくる。それに、足が疲れてきた。
「くそっ、流石のトランレーゼ軍隊。緩めてきやしねぇか。」
「なんでこんな事しちゃったのかしらねぇ。」
「お前ら、何も考えずにあんな事したのか?」
そういうとフォルテは頷いた。やれやれ、とアンドレは頭を抱えた。
追手の確認に後ろに振り向くと、
「まずい..!」
勢いよく向かってくる騎馬部隊が見えてきた。
やがてそれは四人を抜き去り、こちらへと立ちはだかる。足が止まった。
「貴様らはもう終わりだ。覚悟を決めろ。」
今度こそ詰んだ。
が、三人は諦めていなかった。
「集中攻撃だ!」
フォルテはそう叫ぶと、騎馬部隊の一人に突っ込んだ。
「うおおおぁあ!」
「⁉︎」
馬上の騎士に向けて突きを繰り出すフォルテ。
しかし、身体を揺さぶって攻撃は空振りに終わり、無防備な腕を差し出す結果となった。
「....」
「ッ...!」
「フォルテッ!」
返しの一閃はフォルテの左肩を寸断する致命的なものだった。剣と腕が無力にも後ろへと弾かれる。
しかし、騎士の振りとほぼ同時に、つがいのエースはもう片方へ回り込み、突き進んだ。
「フッ!」
差し出した剣は脇腹から貫かれ、騎士の力は失われようとしているが、幸い、いや不幸にも急所は避けているのか、馬から降りまいと持ち直そうとしている。
「ダメ押しの”苦痛”よ!」
「がっ...⁉︎」
アルマの呪文による、致命的な一押し。死体は馬の足元へと崩れ落ちた。すぐの出来事であったが、何分にも感じられた。
アルマはアンドレの手を引っ張る。
「今よアンドレ!乗馬して逃げるのよ!」
「お前らはどうすんだよ⁉︎」
アルマとエースは兎も角、片腕がイかれたフォルテはどうするのか考えたくなかった。
「...行くわよ。そんな事言ってると私達、全滅しちゃう。」
「残るぜ。俺はもう足手まといなんだよ」
「同じく。兄者を置いていく事は出来ないし、こいつらを止めないと送り出せない。」
「行けよ。恨んだりしないからさ。」
「お前達何言ってん...」
アルマが合図をしたのか、馬が走り出した。二人の戦士を置いて。
「エースッ!フォルテッ!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
一瞬、行き場のない感情をアルマへと向けようと振り向いたが、僅かな理性と彼女の表情を見て、そんな考えはすぐに消え失せた。
「ごめんなさい...でもこうするしかないの..」
「わかってるよ..」
「全部僕のせいなんだ...」
するとアルマは僕の背中から抱き寄せてきた。
「⁉︎」
「貴方のせいじゃないのよアンドレ。」
「私達が、勝手にやった事なの。だから負い目を感じなくていいの。」
「それにフォルテもエースも、アンドレは何もやってないって信じ切っていたわ。」
「勿論私もね。」
「アルマ....」
「!」
一筋の矢が横切った。軌跡を辿ると、弓を引いたホースメンが見えた。撒いたはずだが、しっかり追い付かれていた。
「まずいぞ...!」
しかし、呪文を放つよりも先に次の一矢が引かれていた。
キリキリキリ...
「アンドレ!」
その直前、アルマは彼を覆うように抱え込んだ。
ビス!ビスッ!
「ッ!」
ヒヒーンッ!
矢の一つは馬の尾尻へ命中し、痛みで暴れ出した。その影響でアンドレ達はバランスを崩し、落馬してしまった。
「うわっ!」
「ぐっ...!」
アンドレにアルマが覆い被さる態勢で倒れ込んでしまう。本来なら口元が緩むような状況だが、今はそれどころではない。
「だが相討ちよ...!」
向こう側の馬がそのまま走り去ってゆく。しかし、搭乗者がいない、いわば野生に近い状態になっていた。
視線を来た方へ移すと、こちらと同じく倒れ込んだ兵士が苦しみ、悶えている。アルマがどさくさに放った”苦痛”の呪文の所為だろう。
だが、「相討ち」とはどういう....
「お前..」
その意味はすぐにわかった。彼女の口元に血液が漏れている事と、背中に一本の矢が深々と突き刺さっていた。しかも急所の位置に。
「ごめんね、ここでお別れみたい」
「こういうのは僕の役割なのに...なんで....」
「そんなの....決まってるじゃない....」
彼女の声が弱々しくなっていく、もういい。もう喋らないでくれ。
「フォルテが言っ...た事...も..あるん...だけど...さ」
アンドレは止めようとしたが震えた手で彼の口元に被せようとする。言わせろ、という事なのか
「わ...たし...ね....アン....ドレ...の...こ...」
「と.....」
「....」
アルマは事切れた。被せたつもりの手は力無く地に引かれていく。
「あ....あ.....」
声の無い叫びがアンドレの心を埋め尽くしていく。視界さえも狂っていく。頭がおかしくなりそうだ。
追手なんて最早どうでもいいと思いたかったが、仲間達の最期の想いがなんとか彼を現実へ引き戻した。
幸い、兵士共はまだ来ていない。
ついでにアルマはどさくさに踏み潰されないよう、脇道まで抱きかかえて、そっと優しく置き、軽く祈りを捧げた。
「フォルテ、エース、アルマ。ごめんなさい。お前達はこんな事を望んでるかはどうかは知らないけど、絶対に仇をとってやるからな。」
「奴の亡骸を手土産にしてやる。」
自身を嵌め、かつ仲間達を奪い去った、騎士マーカス。奴だけは絶対に許す訳にはいかない。そう誓った。
「...ていうか何だこれは。」
先程は気にならなかったが、改めて見まわすと、奇妙な穴ぐらがあった。
「この中で暫くやり過ごそうか。」
アンドレはその中へ入っていく。
入ってすぐに掛けてある梯子を降りていくと、そこは2本の通路が伸びていた。思ったより広そうだ。
興味本位で右側の通路を進んで見ると、広場に出た。
「なんか意図的だな」
さらに広場を調査するが、ここは行き止まりである事が分かっただけだ。元いた道へ戻ろうとするが...
スカッ、スカッ、
足をいくら動かしても景色が進まない。まさかと思い足元を見ると、そこは底無しの真っ黒であった。
シュート!
「ぬわあああぁぁぁ...ぁ.....ぁ....」
〜〜〜〜〜
「あああああッ!」
ッドン!
「いだッ!」
いきなりどえらいダメージを受けた上、訳のわからない階層へ投げ出された。大分深い。
「いたたた...これ生きて帰れないヤツじゃないの?」
「でも、一応探索は続けようか。まだ生きてるワケだし。」
幸い、とは言えないが、ここから先は一本道のようだった。やがて通路の終わりに行き着くと脇の方に扉があった。
「...ゴクリ」
意を決し、その扉を開けると、先程に比べて明るく、一階(?)の広場よりも大きかった。ここだけは単なる迷宮区よりも、生活スペースと呼ぶに差し支えない。
「なんだここは...?」
「むっ」
辺りを見回すと、隅っこの方に、奇妙な魔法陣を見つけた。気になった理由は一つ。
本でしか見た事の無いものと重なったからだ。
「まさか...ね」
アンドレはその魔法陣に歩み寄り、それに触れようとしーーー
「それに触れるな莫迦物ッ!」
突然の声に寸前で手が止まる。しかし、声の主へと顔を向けると、
「危ない危ない....」
「....」
かなり背丈の低いぞ。子供か?
「ていうか誰じゃお前?」




