いつもの朝
場所:自室
夢を見た。しかも、いつものように、記憶を繋ぎ合わせた筋道立っていないものではなかった。
男「変な夢だったな...」
時刻は15時半。季節は夏。
普通ならば、暖かい太陽の陽射しが満ち、部屋を明るく照らしている。
しかし、男の部屋はカーテンで遮光されており、僅かな明かりさえ届かないよう、厳重に閉められている。
耳には、時計の秒針が刻む音が僅かに聞こえるばかりである。
これが、この男の日常である。
いつもと違うのは、夢だけであった。
男「(まあ、昨日遅くまでゲームやってたせいだろう)」
その違和感にも、自分なりの答えを見つけ、いつものように再び目を閉じる。
しかし、眠れない。
僅かな秒針の音が、男の入眠を許さない。
前日、遅くまで起きていたため、確かに眠気はまだある筈なのだが、小さな事が気になって眠れない。
そういう日もある。
男「(仕方ない...)」
男はしぶしぶ体を起こし、暗闇の中に手を伸ばす。ひもを探り、掴み、引っ張る。
カチッという音とともに、部屋に明かりが灯る。
男「まぶしっ...」
思わず声が漏れる。
手を目の上にかざし、目を細める。
不快だが、慣れるまでは仕方ない。
ようやく、明るさにも慣れた男は、慣れた手つきでテレビの電源を入れる。
相変わらず、テレビでは下らないニュースを取り上げている。
中には、男がいる国にとって重大な事柄もあるが、全てこの男にとってはどうでも良い事であった。
そのまま、昨日のゲームの続きをプレイしても良かったが、やる気が起きず、テレビを消す。
携帯を見る。
新着の通知はない。
そのまま、誰かが作ったアプリを起動し、誰かがまとめた記事をみる。
記事について、自分なりのコメントを残そうかと一瞬思うが、文章を考えることが面倒臭く感じ、また次の記事へと流し読んでいく。
世間を賑わせている事件も、この男にとっては取り止めの無い物である。
世間とは離れた、変化のない怠惰と諦めの連続がこの男の日常であった。