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世界よ、さようなら  作者: 家正丸
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追いかける者、その後

明穂は目を開けると自分の知らない、自分の部屋の天井ではなかった…。

(激しく言いたい…が、それより身体が動かねぇ。身体中が痛ぇ)



明穂は自分の頭の中を整理する。

意識が無くなる前の事を思い出す。

扉を開けたら異世界だった…。

いきなり盗賊に追われ、マスク姿の制服を着たミラ(東條未来)に助けられ…。

そして今まで生きて来た中で最も恐怖を味うはめになった。


やっと覚醒してきた思考と身体で顔を動かす。


どうやらベッドに寝かされているようだ。顔を横に動かした瞬間驚きで言葉に詰まる。


「ん…やっと起きた」


明穂が言葉を発するより早く、明穂の枕元横に少女の顔があった。

どこか眠たそうな目と表情であり亜麻色のショートカットの顔に特徴的な獣耳がついている。

いつもの明穂であれば『ケモミミキターー!』と叫ぶのであろうが半覚醒状態の今では本調子ではない。


「えっと、ここはどこで君は誰かな。なんで俺はここに?」


明穂は眠たそうにベッドに顎を乗せたままの少女に聞く。


「ここは街の教会。わたしの名前はマリ。それでおじさんは…ミラおねえちゃんが運んできた」


(お、おじさんって俺はまだ…。マリちゃん…それにしても教会ね…そっか、俺はやっぱりあの時気を失ったのか。しかもミラ…未来さんに運んでもらって)


気絶前の記憶が蘇る。


(マスクを取ると美人な日本人だったなぁ。しかも、気を失う寸前、柔らかな何に…受け止められ、しかもとても良い匂いが…)


明穂の顔は恥ずかしさから赤くなるが、少女は特に気づく様子もなくジッと明穂を見ている。


「あぁ、起きたら呼んでくるように言われたんだった…まってて」


マリはそう言うと部屋を出ていく。

後ろ姿にはスカートからふさふさの尻尾が出ていた。


(ふぅ、俺はこれからどうするかな。いつまでもここに居るわけは出来ないし、かと言って行く宛もないし…未来さんにも報酬渡さなきゃなぁ)


明穂が考えていると部屋のドアがノックされる。


「はい…どうぞ…」


少し緊張しながら明穂がそう言うと扉が開けられる。

そこに現れたのはミラであったが昨日とは全然違う姿に戸惑ってしまう。

マスクはつけておらず、綺麗に切り揃えられたおかっぱに整った顔立ち。色が白い腕と足が見え、学生服は着ておらず濃く青いチュニック姿で女性らしい線が出ている。

明穂は昨日とのギャップと気絶する前の記憶で顔がまた赤くなるのを感じ目線を少しずらしてしまう。


「良かった…眼が覚めたのね。昨日は気絶しちゃったから、あなたには申し訳ないけど勝手にここに運ばせてもらったわ。少しそのまま待ってて。簡単だけど今飲み物と食べ物を持ってこさせているから」


そう言うとミラは優しく微笑む。


「すみません。何から何まで…ありがとうございます。俺は鷹野明穂と言います。昨日は本当に助けて頂いてありがとうございました。その…未来さん」


明穂がお礼を述べ頭を下げると、ミラは口に手を当て優しく笑う。


「ふふっ、そんな未来さんなんね。ミラで言いわよ」


ふと、明穂は昨日のミラと比べてしまう。昨日のミラは絶対的な強者であり今の姿、話し方まで違和感だらけである。

実際今、目の前に居るミラと昨日のミラは別人なのではないかと感じさせられる程である。


「今…明穂さんちょっと失礼な事考えていたでしょ…」


ミラはそう言うと頬を膨らませる。


「いぇ…そ、そう…昨日と雰囲気が違うなぁ〜なんて」


そんな会話をしていると扉が開かれる。そこには先程の少女マリが食事を載せたワゴンを押して部屋に入ってくる。


「ミラおねえちゃん、食事持ってきた」


マリはそう言いながらワゴンをベッドの側まで押してくるとミラの横に並びミラを見ている。


「ありがとう助かるわマリ。私は少しこのお兄さんと、お話があるからマリは遊んでおいで」


ミラは優しくマリの頭を撫でる。

マリも気持ち良さそうに撫でられスカートから出たふさふさの尻尾を振っている。

撫でられていることに満足したのかマリは部屋からでていった。


「さぁ、冷めない内に食べてください。話はそれからで。起きたばかりで身体にあまり負担をと思って軽めにさせてもらったけど、足りなかったら言ってくださいね」


ミラは明穂が食べやすいようにと気を使い窓際のテーブルまで行くと椅子に座り裁縫を始める。

明穂は起き上がりベッドに腰掛けた。食事の乗せられたワゴンに手を掛ける。

トレイには木の深皿に入ったシチューらしき白いスープ。少し硬めの丸いパンが2つ。木のコップに入った紫色の液体。


「いただきます…」


明穂が感じた通り白いスープはシチューであった。野菜は小さめにされ少しではあるが柔らかい肉らしき物が入っている。パンは思った以上に柔らかく食べやすいものであった。

紫色の液体はアルコールも味もかなり薄いワインであった。

ゆっくり味わいながら完食した明穂である。


「ごちそうさまでした」


明穂が食べ終わるとミラがワゴンを入り口付近まで退かしベッドの側まで椅子を持ってくるとそこに腰掛ける。


「さぁ、何から話ましょうかね」


ミラは少し顔を曇らせながら明穂に微笑みかけるのであった。

マリ


亜麻色の髪に犬耳の獣人の少女。

どこかいつも眠たそうな表情と目をしている。

身よりもなく現在は教会に住んでいる。ミラにはよく懐いており本当の姉のように慕う。


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