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世界よ、さようなら  作者: 家正丸
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逃げる者達、追いかける者

そこからは一方的な蹂躙であった。

一斉に飛びかかる盗賊に対しミラは腰を低くし武器を躱す。そして後ろに引いたハサミを横一文字に振るい盗賊達を吹き飛ばす。

吹き飛ばされた一人の盗賊にハサミを広げ首を挟む。

バチン!と大きな音を立てハサミが閉じられると盗賊の頭が上方に飛んでいった。まるで枝を切ったような感じだ。

遅れて首から血が噴き出す。

あまりにも悲惨で無慈悲な光景に荒くれ者である盗賊たちは恐怖に尻餅を付くもの、その場で固まるものと様々である。


ミラは笑いながら話だす。


「おい、お前たちマスクって知ってるか?まぁ知らねぇか…映画って言うんだがな。間抜けな奴らが役を演じて台本通りロールプレイするんだよ。劇場や舞台みたいなもんだ。とりあえず、そのマスクってタイトルのやつが好きでね。それが愉快痛快でな。主人公が楽しくかっこ良く気に入らねぇ奴らを、ぶっ殺していくんだよ。マスクを着けているときだけ最強なんだ。兎に角、強いんだよ。どんな敵にも負けねぇ。それで、何故てめぇもマスク着けてるかって?そりゃ私も最凶最悪にして強えってことさ。これ見て生きて帰った奴はあんまし見なかったな。せいぜいお前たちも死なねぇように楽しく踊ってみせろよ。なかなか死なねぇようだったり生きて逃げてみせれば褒めてやるよ。まぁ生きていても殺すがな」


ミラが話している間、誰一人として動けなかった。

動いた瞬間にこのマスクの死神に命を刈り取られる恐怖。


その静寂を切り裂く様に一筋の金切音がした。


頭と呼ばれた男の腹にハサミが刺ささり貫通している。そのまま地面に仰向けに倒れるが、それより先にハサミの先が地面に刺さり男はだらしなく宙に浮いている形となっている。

それに歩いて近寄るミラ。


「かはぁ…が、た。た、すけてくれ、なんでも、なんでもや、るから」


自分の血に溺れながら頭はミラに助けを乞う。


「あ?嫌だね。無理な相談だ。お前たちは同じような台詞を言われて助けてたことがあったか?男だと殺し、女だと犯し殺す。子供は売り飛ばし老人はなぶり殺しにする…恥を知れゴミ屑どもが…」


ミラはそう言いハサミを引き抜き、再度首にハサミを刺す。

首と胴体が分かれ明穂の足元に転がっていく。

転がった顔は苦悶の表情に歪め目は開かれている。

明穂はその首だけと成った目と目が合い、先程の悲惨な現状から耐えかね地面に蹲り溜まったものを吐き出す。


「ひぃぃ!?か、頭がやられた…」


「に、にげろ!!」


「死にたくねぇ!」


完全に場を制圧したミラ。首を飛ばされた頭を見て盗賊たちは散りジリに逃げ出して行く。


そんな様子にミラはどこか他人事かの様にブレザーのポケットから大きな麻袋を取り出す。

そして刈り取った盗賊の頭をゴミでも放り込むかの様に入れていく。


「あぁ…君は少し落ち着くまでそこに居てくれ」


ミラは明穂にそう言うと麻袋を肩に担ぎハサミ片手に森へと走り消えていく。


明穂は吐いた口の中を不快に思い、カバンからペットボトルを取り出す。未だに先程の光景が頭から離れず蓋を開ける手が震える。

なかなか蓋を開けることが出来ずにいたがやっとの思いで開け、ボトルの水を口に含み口を濯ぐ。

残りを少し飲みあとは頭からかける。服が濡れるがお構いなしにかけると少しスッキリとした。

ジャケットの中にシワシワに成ったハンカチを取り出し顔と頭を拭く。

そして少し落ち着き地面に座り込む。

辺りは暗いが、上空には日本の月よりも大きな月と知らない星座たちが広場をほんのりと照らしていた。

周りには盗賊たちの無惨な死体と血と臓物の臭いが充満していた。

その臭いにまた吐きそうになりながら耐える明穂である。


(ミラ…だっけ、盗賊よりこえぇ。やばいなぁ、帰ってきたら殺されないかな…まぁ、報酬があればと言ってたっけ?)


明穂はとっさにカバンを漁る。

取り出したのは『金』である。


「入れといて良かった。てか、これで足りるかな…俺の命、金5g…」


口にして悲しくなる明穂であった。




時間にしてどのくらい経ったであろうか。10分と言われればその様な気はするし、はたまた1時間と言われれば長いか…と言われる時間を只座って過ごす明穂である。

時折、動物の鳴き声らしいものが遠くから聞こえてくる。その鳴き声の間に人の悲鳴が聞こえてくるのである。

その悲鳴も8人目からピタリと止まる。


(盗賊全員か…確か10人ほどだったもんな…)


そんな事を考えていると森から足音が聞こえてくる。

段々と近づくにつれ人影が顕になる。

先程森に駆けて行ったミラが帰って来たのだ。相変わらず不気味なマスクは着けているものの、ハサミは手にしていない。代わりに駆けて行った時よりも大きく膨れた麻袋を肩に担いでいる。


「よいしょっと…すまんな。待たせて」


ミラは持っていた麻袋を近くの木の根元に置く。麻袋からは血が滲み出ており中に何が入っているかは明確である。


首を縦に振るしか出来ない明穂であるが、徐々に近づいてくるミラ。


「ほ、報酬の件な、なんですけれども!」


その不気味なマスクと先程の殺戮劇から緊張し噛んでしまう明穂。

ニヤリとするミラが更に近づいてくる。


「ひぃぃっ…!」


そんな明穂の様子にもお構いなしにミラは座りこんで、もとい腰が抜けている明穂に視線を合わせるためにしゃがみ込むミラ。


「と、その前に君って日本人だよね?」


「ふへぇ?」


いきなりの事に変な声が出てしまう明穂である。

そしてミラはというと、マスクに片手を当てるとマスクが光の粒子になり消える。

そして現れた顔は日本人の女性の顔であった。マスクを着けていたときに光っていた赤い目は、黒い日本人特有の色。肌も透き通るように白いが目はな顔立ちも、かなり整い美人であるが日本人であった。


「はじめまして。私は東條未来。あなたと同じ日本人で、昔この世界に転移してきたものよ」


それを聞いた明穂は完全に力が抜け切ってしまった。いきなり異世界に来てしまい、盗賊に追われ…崖から落ち…殺されるかもしれないと言う非日常を短時間に合い目の前には馴染みの同郷の日本人である。


倒れ込みそうに成った明穂をミラは胸に抱きとめる。

そこで明穂は気を失ってしまった。

人間の限界が来てしまったのだ。あまりにも一気に疲弊してしまい人の防衛反応であろう。気を失った明穂を抱きとめたミラは先程の殺戮を行った者と同一人物とは思えないくらいに優しい表情をしているのだった。

アキ


年齢 25歳


本名 『鷹野明穂(たかのあきほ)

しがない会社員。

会社でのポジションは下の中。

決して業績は悪くないが目立たないようにが信念。

目立たって面倒ごとに巻き込まれるのは大嫌い。面倒には眉間に皺が寄る。基本ぼっち…。

独り言は多い。



ミラ


20歳 人族 女性


12歳の時に転移してくる。

本名『東條未来(とうじょうみらい)

転移後は様々な国で傭兵稼業に身を置き戦闘において天性を持つが性格に難あり。

短気で血の気が多いと言われているが、あまり彼女と関わりを持つものはいない為、詳細は不明。

口から上を常に白いマスクを着けている。

理由は表情を読まれない為、傷を隠している、趣味、等で理由は定かではない。

人を含め命を奪った数は万を超えるとも言われているが詳細は不明。

なりふり構わず命を奪うわけではなく、一般市民など命を奪う必要がない場合はハサミは使えないとされているが、これもまた不明である。

着ている服も当時の学生服であるスカートにブレザーを再現された物を着ている。



使用武器


自分の身長程の巨大なハサミを武器とする。

全体に軽量化されたミスリル合金を使用しており、身体強化なしでも振り回して使用出来るよう設計されている。

使わない時は縮小、拡大の魔術が掛けられている為彼女の服の中に収められている。

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