三者三様
似た者同士の会話 の続編です。
よろしければ先にそちらをお読みになってから、お読みいただけるとありがたいです。
目を覚ましたら縛られていて、猿轡をされていた。
「しかし、なんで男性って女性をいやらしい目で見るんだろ?ちょっと怯えている女の子のキャラ見ただけですぐ犯されたんじゃないのって考察するしさー」と女は言うが、そんな議論も気になるが状況説明を頼む。
「女性は性的、男性は暴力的って世間的理論からじゃないかな?」、そう言った男は縛られていて顔しか見えない。縄と縛られ方のせいでエビフライに見えなくもない。
「うーん、女性は助けるより犯せって感じ?」、それよりもまず俺を助けろ。
「男同士では普通そうならないよね?そっちの方が面白そうだけど」、なんだか話が不吉な方へ向かってきた。
「やっぱり男は…あ」、エビフライ巻きの男が俺に気づく。それを見て女も俺を見て猿轡を外す。
「色々聞きたいことはあるだろうけど、説明下手なので私は一自黙る!」、俺の縄を解くこともなく黙る女。
「状況説明頼む」と俺は言った。他に言いたい事はあるがツッコミが追いつかない。
「えっと…本当は僕だけの予定だったんだけど……まああれだよね、実験動物を増やしたいと言うか……」、喋り方も内容もイラっときた。
「あぁ?」、だから威圧を込めてこう言った。
「教育的指導!」、と言っていきなり女に殴られた。
「!?」、何か喋ろうとしたが内容がすっ飛んだ。しかしまた喋ろうとしたが。
「うーん、あまり好きな声じゃない…」と不満そうに、また殴られた。頭痛くなるだけなのであまり喋らないでおこう。
「えっと…話に戻るけど、簡単に言えば…ツガイだよ。まあその…男同士の恋愛というか性的な事に興味があるらしくて…」、今すぐ殴りたい、そう思った。
「まあまあ、そんな顔しないで」と言って俺の口にカタクチイワシをねじ込む。…うまかった。
「ほら、夏休みの自由研究的な感じなのよ!」、ドヤ顔にイライラくる。
「……そっちの男は、何なんだ?いいのか?」、視界にチラチラ入ってくる薄ら笑いのエビフライがうざい。
「あ…一応彼氏です。いや、うちの彼女がすみません」、なんだその自分の子供が迷惑かけました的な軽さは。
「…女、お前は彼氏が他のやつとあれこれするのはいいのか?」と、俺は女を見つめつつ言った。
「寝取られとかスワッピングとか逆寝取られとか、愛や性癖の形はいろいろある、私はそれを知りたい見たい!」、見なくていい。
「恋人レンタルとかもあるのよ~。と、言う訳で思う存分掘るがいい!」、どうしてそこへたどり着いた。
「あ、はは…」と男は苦笑いしているがそれでいいのか。あれか、お前はドMの国のドM王子か。
「俺は同性愛者ではない」、まずはここからだと思った。
「でもそうじゃなくてもダッチワイフ的に抱くことは出来るでしょ?」、どうして?と言わんばかりの顔だ。
「どうせ男は性欲の塊なのさ~、って言うとどうせレイプされて男恐怖症なんだろって言われるのよ!」、急にどうした。
「別にそんなことないし!ちょっとおっぱい大きいからそりゃ見られるけどそんなことないし!」、そういやこの女結構胸でかいな。
「性癖やフェチなんて人それぞれだ。大きい胸が嫌いな奴もいる」という俺がそうだ。
「じゃあどこが好き?」と聞かれて少し考えた結果…。
「胸は小さいほうが好きだ。女は胸よりケツが好きだ」、まあ一番は顔なんだが。
「じゃあこの男のケツを掘るがいい!」、だからどうしてそこに行く。
「女がいいつってんだろ」、そもそもそこじゃないんだがな。
「見なさいよこの顔!」と言って彼氏らしきじんぶ…いや、エビフライの髪の毛掴んで、俺の顔の近くへ持ってくる。
「よくよく見れば女の子に…あ、見えないなこれ」、まるで子供がおもちゃを投げ捨てるかのように床に投げつけられたエビフライ。それでも笑っているあいつはやっぱりドM王子だと確信した。
「…まとめると、トチ狂ったお前らの特殊プレイに参加ってことで拉致監禁か」、とりあえず本題らしきとこへ。
「うん!」、殴りたい、このドヤ顔。
「あとはあれだね、前に彼と話していただけど、見た目異常者だけど中身正常者が欲しかったんだよね」、そう言って、女は俺の金色の髪を触る。
「…ハーフなだけだ」、ハーフなだけ、でも俺の黄色い髪と青い目は黒髪黒目の日本人には異常らしい。
「ハーフだったの!?調べによると、見た目悪いけど結構ゴミ拾いしてるし、喧嘩しているのはカツアゲされた子を守るためであったり、ほっぺの引っかき傷は木から降りられなくなった猫を助けようとして逆に引っかかれたものであったり…」、どこで調べたそんな情報。あと恥ずかしいからその辺でやめてほしい。
「いやー、まさかハーフだったとは…それよりご飯食べる?」、お前は自由人か。
「大丈夫、料理は上手だから。作るのは彼だけどね!」、お前じゃないのかよ。
「さあさあ、早く料理作って~」と言いながらエビフライの縄を解き、エビフライはエビフライのようではなくな…エビフライ食いたくなってきた。
「と、とりあえずチャーハンでいいかな?」、俺はコーヒーが飲みたい気分だ。
「うん!」、嬉しそうに笑う女と見ていると、本当にカップルなんだなと思う。彼の手錠などの拘束がなければ。
「早く作ってよ早く」、3人分なんだろ?そんなに早くは作れないと思うぞ。
「あれだね、料理作っている時って暇だね」と言いながら、ツンツンと包丁の先っぽで男をつつく女。
「ひーまーだーわー」、刺さってる刺さってる。さっきよりも深く刺さってるぞおい。
「んー…」、何をどう思ったのか男の頬にキスをする女。なんかイラっときたので俺は回想に入る。
そう、あれは俺が海岸の砂浜のゴミ掃除を終えたあとのことだった。
「すぅ…はぁ~」と、タバコの息を吸って吐く。次は何をしようか。昔やっていた家庭教師のバイトでもやろうかな?
「あっ!」、そんなことを考えていたら、近くで女の声が聞こえ、見ると女がすっ転んでいた。
「…大丈夫か?」、周りに誰もいなかったので、俺が助けるしかないと思ったので、近づいてみた。
「……」、女は喋らずずっとうつぶせだ。
「おい、大丈夫か?」、女の方に手をかけたその瞬間、女の目がキラリと光ったような気がして、次の瞬間見えたのは警棒のようなもの。けれど、普通とは違いバチリと電流が流れてきた。
そして俺は、気を失った。
「ねぇ、あいつのだけタバスコ入れない?!」、とまあ回想していたんだがなんだか不吉なこと言ってるな。
「いや、それはさすがにかわいそうだよ…」、ナイス彼氏。
「むー!」、むーじゃねえよブス。
「………はぁ」、とひとつため息をついた。流石にこんな状況だと大人しくしている方が良さそうだ。
「こんな感じで…どうかな?」、あのドMエビフライもどきも味方か敵かわからないからな。
「うん!美味しい!」、味見をした女は嬉しそうだ。
『どうでもいい』、これが俺の本質であり性格。見た目で怖がられたり否定されたりで、何を言ったって誰もわかっちゃくれない。だから俺は、『どうでもいい』と諦め口数も少なくなっていた。
「……殺したきゃ殺すがいいさ」、どうでもいい。別に、生きようが死のうがどうでもいい。だから、そう呟いた。
「もしもだけど、身も心もボロボロにされてもそう言える?」、女は近づいて俺に尋ねる。
「もうとっくにボロボロさ」、ハッと鼻で笑いつつそう言った。
「ボロボロじゃないもん。あなたはまだ動けるんだから」、本当に、わけのわからない女だと思った。
「まあボロボロになっても関係ないんだけどね。私はこの知的欲求を解消できるならなんでもいいんだし」、痴的欲求じゃないのか。
「大丈夫だよ、飽きたら返すし。その前に…死んじゃうかもしれないけどね」、女の笑いには狂気が混ざっているように見えるが、どこか可愛くも見える。
「……あの…」、エビフライだった男がチャーハン持ってどうすればいいのかわからない状態になってるな。
「あ、出来たなら食べよ。もちろん、あなたもね」と言って、またカタクチイワシを俺の口に突っ込む。
(どうやら、まだしばらくはこの三人生活が続きそうだ)、モグモグとカタクチイワシを食いつつ、呆れながらそう思った…。