告白
8話、あしかけ3日かけて書いたのにうまくアップできてなかった…。ありえないくらいショックです。もうあんな長文を書き直す気力がないので、当初の8話は8話と9話に分けます。しくしく…
ちはるが行方不明になって3日目。会社の中で親しかった人間やバーベキューに参加したメンバーは警察から話を聞かれたが、あっさりしたものだった。みちるも調書を取られたが、みんなと一緒で30分ほどで終わった。しかも、会社の接客ブースで調書は取られたので、拍子抜けしてしまった。社内での最初の頃の動揺は収まりつつあったが、相変わらずみちるの心に平安は訪れない。仕事中はそれでも打ち込もうと必死だった。そうすることで、いつもの自分を保とうとしていたが、とっくに周りの同僚たちはみちるが落ち込んでいることに気づいていた。ふと時計を見ると、お昼まで15分を切ったところだった。さっき始業の朝礼をしたばかりのような気がしたので、時間の経過の早さに驚く。軽くため息をついていると、誰かが傍に来た。振り向くと氷室がいた。
「どうしたんですか」
「ランチって、誰かと行く予定あるのかな?」
「最近はひとりで行ってます。今日も特に約束はありません」
「ランチ、誘ってもいいかな」
「ええ、構いません」
「じゃぁ後で。エントランスで待ってるよ」
「わかりました」
誰かと少し話をすると気分が落ち着いた。最近会社ではあまり喋ってないことに気づいたが、もちろんそれはちはるがいないから。昼食もいつもちはると一緒に行っていた。あれこれと迷うみちるはいつもちはるに行く店を決めてもらっていた。いつになったらちはるは戻って来るのだろう。ちはるだけじゃない、他にも行方不明になった人はいる。待つ人間はいつになったら眠れない夜から開放されるのだろうか。そんなことを思いながらも書類に目を通していると、12時のチャイムが鳴る。12時から昼食に出る人間はやれやれと伸びをしたりして、ひとりで行く者、連れ立って行く者とざわざわと出口に向かって行く。氷室は先に出たようだ。みちるも昼食に出て行く者の後に続いてオフィスを出る。すると廊下がざわついている。何かあったのだろうか。
「どうしたの?」
近くにいた後輩に聞く。
「みちるさん、あれ見てください」
後輩が指差した先には山田がいた。警察から釈放されたのか、特に付き添いの刑事もおらず、会社に出てきたところを男性社員に捕まっていた。
「山田君…無罪放免になったのかしら」
「多分、証拠不十分だったんじゃないんですか。それじゃ」
これ以上昼休みの時間が削られるのがもったいなかったのか、後輩はそう言うとさっさと行ってしまった。それでも野次馬は一向に減らなかったが、山田が野次馬の中にみちるがいるのに気づくと足早に歩み寄ってきた。最初は誰を目当てに歩いてきていたのかわからなかったが、
「凪野さん」
と山田が呼ぶとみちるに注目が野次馬から一斉に寄せられて、みちると山田の間に道を作る。急に呼ばれたみちるは戸惑った。
「山田君…無罪放免になったのね」
「もちろんですよ。僕はやっていません」
今までの会社で見る山田とは違う。力強くて自信に満ちている。
「だったらよかった」
「凪野さん、あいつには気をつけてください。もうあなたのすぐ傍まで来ています」
「え?」
山田が放った言葉にみちるは困惑を隠せない。周りの野次馬も何のことだか理解できずにざわめくばかりだ。訳がわからず立ち尽くしていると、みちるは時間を思い出した。慌てて腕時計を見ると12時10分に時間が差し掛かろうとしていた。
「山田君ごめんなさい。私約束があるからまた後で話し聞くわ」
そう言ってみちるが駆け出そうとすると、山田がみちるの腕を強く掴む。
「凪野さん、僕は冗談を言っているんじゃないんです。早く手を打たないと…」
「ごめんなさい。何を言っているのか…」
急に山田がみちるの腕を掴んだので周りの野次馬からのざわめきが大きくなった。
「いやっ…離して!」
みちるが悲鳴をあげたので、何人かが山田をみちるから引き剥がす。
「凪野さん早く逃げて!」
など様々に声を受けて、みちるは急いで氷室との待ち合わせ場所に向かう。角を曲がる時にちらっと山田を見ると何人かの男性社員に押さえつけられてもなお、何かを叫んでいた。エレベーターを待つと時間がかかるので、階段を飛ぶようにして下りた。ビルのエントランスでは日に日に強くなる日差しを避けるように氷室が待っていた。走ってきたみちるに気がついて笑顔になる。
「遅くなってごめんなさい」
「変な電話にでも捕まっちゃった?」
「それが…」
みちるは今しがたあった出来事を氷室に話すと、一瞬冷たい目をした気がした。だが、もともとどこかに冷たいものを持っているのは感じていたことだ。みちるは気にしないことにした。
「変なのに捕まっちゃったね。おいしいもの食べて忘れよう」
すぐに笑顔に戻るとみちるを促して歩いた。
「ランチのお店…全然決めてませんでした、私」
「俺は当てがあるんだけど、そこでいいかな?」
「構いません。楽しみです」
「ハードル上げるなよ」
みちるの言葉に苦笑いをする。店は大通りから1本中に入ったところで、片道2、3分の距離だった。店自体は小ぢんまりしていて、店と知らないと素通りしてしまいそうだ。氷室は顔なじみのようで、一言二言店主と話すと、奥の席に通された。二人ともランチセットを頼んだ。水をひと口飲んで落ち着くと、みちるが先に口を開いた。
「今日はどうして誘ってくださったんですか」
「君があんまりにも落ち込んでるからだよ」
「私、そんなに落ち込んで見えますか」
「ああ…みんな心配してるんだから」
「いつも通りに振舞おうとしてたんですけど…ポーカーフェイスが下手ですね、私」
「こんなの上手い下手の問題じゃないだろう。辛いときは辛いって言えよ」
氷室がいつもらしからぬ少し強めの口調で言うので、みちるは驚いた。いつも穏やかなのに、この人はそんな面もあるのか。
「すみません」
みちるはつい謝っていた。
「ごめん…君に謝らせるつもりじゃなかったんだ」
ちょうどそこで料理が運ばれてきたので会話が途切れた。この日の昼食はワンディッシュミールになっていて、一皿に前菜からメインまで盛り付けられていた。デザートとコーヒーはまた後から運ばれてくる。
「食べようか」
氷室が促す。
「期待通り、おいしそうですね」
雰囲気を和らげるために、みちるは悪戯っぽく笑って言った。そんなみちるの表情に安堵したのか
「やっぱり君は笑っていないとね」
氷室はほっとしたかのように言った。
「今は…信じて待つしか私にはできませんけど、なんか大丈夫な気がするんです」
「俺もそう思うよ」
不安な時はとにかく自分の考えが正しいと言ってくれる存在は大事なのだ。それからは他愛のない話もした。昨日見たテレビの話、最近読んだ雑誌、好きなもの嫌いなもの。みちるは花が好きだ。凪野家の庭は女3人で育てた花が春から秋にかけて咲き乱れる。小さな梅の木もあって、梅雨前にはぷっくりと丸い実をつけるので、それを梅酒にしたりジャムにするのが毎年の楽しみである。みちるの話を聞いた氷室は感心して聞いていた。
「まめなんだね。俺には真似できないよ」
「好きだから続けられると思うんです」
「俺もなにか始めようかな…凪野さんスポーツは?」
「私は水泳をしてました。でももう学生時代の話ですから」
「水泳か。お兄さん達は何かしてたの?」
「1番上の兄は殺陣を何故か習っています。役者じゃないのに…。2番目の兄は野球を高校の時にしてました。弟は…なんだかよくわかりません」
「でも仲がいいんだな」
「そうなんですかねぇ」
「この前送っていった時に会ったのは2番目のお兄さんだったね」
「そうです。弟とよく食べ物のことで喧嘩になるんです。子供っぽくて」
「楽しそうだな」
氷室は笑った。メインは食べ終えていて、後はデザートを残すだけだった。店主が食後の飲み物を訊きにきたので、みちるはコーヒーを紅茶に変えてもらった。メインの皿が下げられて、デザートを待っていると氷室がおずおずと口を開いた。
「実は、今日誘ったのはもうひとつ理由があるんだけど」
「なんですか?」
「本当はこんな時に言うべきじゃないんだと思ってたんだけど…」
「言ってください。私気にしませんから」
「そうかい」
「はい」
少し間を置いて氷室が言った。
「僕と結婚を前提に付き合ってもらますか」
「私と、ですか」
「急に迷惑だよね。夏川さんのこともあるのに…ごめん」
「そんな、謝らないでください。私は…」
みちるはうまく答えられなかった。
ちょっとつじつま合わなかったので一部訂正しております。。
記憶力…やばい




