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1-2 「裏道」にて

 (どのくらい、走ったのだろう。)

 

 自分の感覚では1時間ぐらいは走ったのだろうか。いや、それ以下なのか。はたまた、それ以上なのか。全く判断がつかない。


 僕は、必死に足を動かしながら頭も同時進行で動かしていた。

 しかし、長時間続けているからか。上と下、どちらも悲鳴を上げてくる。

 だが、僕は相変わらず気づかないふりをし、本当の限界を迎えるまで動作を行っていた。


 横目で、流れていく風景を一望していて、気付いたことがある。それは、()()()()()()()ということだ。僕の予想ではこんな人通り少ない所は、新聞や廃棄物があちらことら散乱している場だと思っていた。しかし、ここを見ると飲みかけの空き缶や生ごみがところどころに転がってはいるが、それ以外の家具や小物が全く見当たらない。


 それに、ここに入った後、僕は僕以外の人間、動物を見ていない。当たり前のように存在している虫さえもだ。むしろ、無さ過ぎてここが気味悪く感じる。まるで、僕が異端者みたいだ。


 (しかし、今何時なんだ)

 

 長時間走っているが、まだ向こうは日盛りのはずだ。なのに、こっちはずっと真夜中みたいに真っ暗が途方に続いている。どこを移動してもあまりの暗さに同じ場所を迷っているような感覚がある。こんなことだったら、目印ぐらい置いておけば良かった、と後悔したが辺りの現状を思い出し諦めに入った。


 漆黒のような暗さで、霞みたいに視界ぼやけている。おかげで、落下物の有無がつきにくい。よく、目をこらさないと変なところにぶつかり、最悪、致命傷を追うことになる。



「はぁ・・・光が欲しい」



 ふいにそう思ってしまった。こんな気持ち初めてだ。言語化するのが難しい。なんと表せばよいのだろうか。今までできていたことができなくなったような。

 当たり前だと思っているものが存在しないとはこんなに、気持ち悪いこととは。僕は初めて感じるモノに対し、中からモヤモヤが湧いていった。


 いつもだったら、こんな思いはしないはずだ。したくても、できないはず。それほど、ここは本当に生物に取って適してない場所なのか。それとも僕が直ぐに、順応できない体質か性格なのか。どちらにせよ、今の様子は変わらない。

 

 魔力に恵まれていたら、こんな状況をいとも簡単に覆すことができるのだろうか。光属性に適合してたら、光を産み出せることも朝飯前なのだろうか。


「羨ましい。」



 僕も今より恵まれた体質だったら。今までの苦労は無くて良かったんじゃないか。努力も馬鹿みたいにしてこなくて良かったんじゃないか。

 

 

 「あ、―――っとっ!」



 突然、足が何かにつまずいた感覚が体中を貼り廻った。考えを巡らせてたせいなのか、危うく飲み残しのワインの瓶に引っかかりそうになった。幸運にも派手に転倒をすることは防げたが、自分の悪い癖がここにも引っかかるとは。

 

 思い返せば30分前ぐらいに、この原因で左のすねに傷を作った気がする。さほど、大きいものではないが。

 急に眼が覚めてきた。ポヤットしてる暇はない。神経を研ぎ澄まし、足場にも注意を払わなければ。

 その時、一瞬、脳裏に家族が浮かび上がってきた。全員が、満面の笑みで僕を待っているような気がした。


 (そうだ。なるべく、穏便に済ませたいんだった。)


 本来の目的というのを忘れていた気がする。今、走っているのは自分のためだけではない。家族のためでもあることに。

 僕の現状はおそらく誰一人知っていないはずだ。今ぐらいの外見だったら「友達といっしょに遊んだ」ぐらいの理由で済ませることはできるだろう。家族は呆れるかもしれないが。

 

 これ以上、傷を増やすわけにはいかない。無いものねだりしてる暇もない。時間も確認できないなら安心してる余裕はない。おそらく、僕に与えられている残り時間は、自分が思っているよりもうんと少ないはずだ。

 


 最後に時計を確認したのは今朝の8時。そのときに家を出たはずだ。僕の家の門限は友達の家より厳しい。だから、夜の6時まで何か一つでも連絡しないと大騒ぎになってしまう。

 

 昔、帰りが5分ぐらい過ぎただけなのに、2時間ぐらい正座で質問攻めだったからな。それほど、僕のことを大切に思っているかもしれない。だが、あんなのはもう勘弁だ。ギリギリを責めるのは悪手か。

 


 となると、目標は午後5時にし、家から出たところをスタートにして残り9時間と設定しよう。だが、この裏道に入る前に奴らをまいたり、ここに滞在してる時間が長かったから1,2時間はもうとっくに過ぎてるだろう。

 

 それでも、7時間。だからといってゆとりがあるとは思っていけない。時間いうものは思ったより残酷ということは僕も知っている。


 それに、僕の運動神経はさほど良いとは言えない。走ることは、僕と同年代より同じくらいか、それ以上かもしれない。だが、それだけだ。自信があるのは。それ以外は5歳児とはれるかどうか怪しいものだ。どのくらいかというと、30センチの小さな水たまりを軽々とジャンプで乗り越えられないくらいだ。

 

 あの時の友達と妹の笑いぐらいは本当に酷かったな。腹を抱えて呼吸ができなくなる程までだったからな。なんか、腹が立ってきた。



「って、思い出してる暇はない」

 


 それより、速く、この気味悪いところから心地よい光が照らす表に抜け出さなければ。親に、家族に、迷惑をかけないために。

 

 素早く、目立たず、あと、転ばないよう「慎重」に行動しよう、と僕は改めて決意した。

また、随分長くお待たせしました。

次回も今回のように遅くなるかもしれませんが、気長にお待ちしてください


今回、いつもより、少し多めに書きましたが、これぐらいがいいのか、もっと長くてもOKなのか、それとも前回と同じくらいの長さでよいのか。 


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