1-1 ペテルブルク
「ペテルブルク」
それは僕たちが生きるこの世界の名称。
何千年何万年も昔からあるこの地には、様々な顔を持っている。
北には、ゴツゴツとした溶岩に百万度の熱を持つ、サラマンダーの火山。
西には精霊たちが司る雄大な茂みのある草花の楽園。
南には水龍が管理されてる飲めば良薬になるフェリアリ湖。
東には一年中霧だらけで、行った者は二度と帰れなくなるカリスの迷宮。
無限に広がる生物の碁盤。途方もないグラデーションの美しい青空。
そこで暮らす妖精、エルフ、巨人、獣人・・・そして僕たち、人間。
それらは、魔力の始祖、『デュ・ラサ』が創ったと語られている。
あらゆる全ての力を駆使してこの美しい世界を具現した、らしい。
これは全種族の常識だと昔、優しい父が僕に話してくれたことがある。眉間にしわがあるが表情で優しさを語っていた。
そして、僕の頭をガシガシと丁寧に撫で「必ず、覚えておけ」と笑いながら言った。
僕はというとそんな常識は少しも興味が出なかった。父には悪いが、正直つまらなったからである。
それより、その後、父上が読み聞かせをしてくれたあの昔噺のほうに気をそそられた。
五千年前の出来事で作りも古い本だが、知っている人は多いらしい。
その物語の名は・・・・
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ペテルブルクの中央に存在するのは人間の都と言われる、王都ーーアーチ。
そこは二つ名の通り、どこを見ても人間ばかりの街だ。
そして、ペテルブルクの中でも発展してる国の一つでもある。
今日も、いつものように都民の笑い声が響いていた。
市場では魚の大将が婦人達と世間話、道端では幼い子供たちが無邪気に走り回り、鍛錬場では若き、才能あふれる見習い騎士が血を吐くほどの鍛錬。
しかし、この風景も一種の平和かもしれないと僕は思う。
現在の僕の様子と比べれば。
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どこもかしこも、賑やかしさで包まれているこの町で僕は、市場の裏にあるひっそりとした裏道にいた。表とは違い、人影は無いに等しく、ほのかに生臭さも感じられる。
息もとてもじゃないがしにくい。生理的にキツイ物質、湿気と何か腐食した食物が合わさった匂いが身体の中をじわじわと侵略するような感覚があるからだ。
本来なら、いつもなら、今日もあの平和な日常を観ながら歩いているはずだった。
神々しい太陽が照らしている暖かい道を。
だが、今は最悪な環境の中でそこで僕は死ぬ気で走っていた。胸が苦しく、息が乱れるほど。
初めて通るからか、あちらこちらに散乱している障害は避けきることはできなかった。
それは身体や服に付着している傷が物語っている。
しかし、気にしないようにし、僕は動作を続けた。できるだけ、素早く且つ、目立たずに。
幸い、道路がコンクリートでできていたから踏み込んでも音は響かない。
心臓の鼓動は響いているかもしれないが。
だけど、これなら`奴ら′に気づかず逃げ切ることができる。
僕はそれだけを信じ、足を動かし続けた。自分の目的地へ向かうために。
そして、また僕の逃走劇が始まった。
更新、遅くなってしまいすいませんでした。
最近、忙しいので更新時期はまだ定まっていません。
また、次回をお待ちしてください。