沼レベル6・コメダの株主総会へ行く
コメダの沼レベルも、いよいよ極まってきた。沼レベル5においては、人生で初めて株を購入。権利確定日を迎え、晴れて株主となったのであった。
株主としてやりたいことは主に3つ。第一に、称号の獲得。株を3年保有し、3年目の時点で300株に達している場合、長期保有株主という称号が得られるのだ。1年目から300株を買う必要はない。2年間は100株を保有し、3年目に200株を買い足しても条件はクリアできる。でも、いてもたってもいられなくて、もう300株まで買い増ししてしまった。この状態で3年が経過すれば、私は晴れて長期保有株主だ。人生をゲームに例えるなら、これはアチーブメント、あるいはトロフィーである。株式というクエストに挑戦したからには獲得したいものだ。それに「長期」保有株主という響きが古参っぽくてカッコいいじゃないか。
第二のやりたいことは、株主優待の享受。株主優待とは、もちろん株主にならないと受けられない恩恵である。コメダには、KOMECAという名のコメダブランド店舗で使えるチャージ式プリペイドカードが存在する。店頭で申し込めるのだが、その場合には通常デザインのカードがもらえる。そして株主優待として、年に2回、1000円がチャージされるのだ。コメダに通い詰める私にとっては焼け石に水なのだが、それでも何もないよりは助かるというもの。ちなみに長期保有株主の場合、チャージ金額が1000円から2000円にアップする。もっとも、先に述べた通り、私が長期保有株主を目指すのは金銭的なメリットが動機ではないのだが。
そして、第三のやりたいこと。それは、株主総会に行くことに他ならない。株といえばやっぱり株主総会だろう。株を推し活と認識してから、株主総会は私の憧れと化していた。私はコメダオタクで、コメダが大好きなわけだ。株主総会とは、愛するコメダが自ら開催する、年に一度の一大イベント。しかもそこに私を招待してくれるのだ。私のようなコメダ愛好家だけではなく、コメダを投資対象と見なすだけで、贔屓にはしていない株主もいるだろう。しかし、コメダの将来性を信じ、自分の財産を託しているのは皆同じ。そんな人々が集い、コメダに思いを馳せる。それは最早、一種のファンミーティングではなかろうか。これは仕事を休んで行くしかない。
2023年の11月に株を買った日から、ずっと株主総会を心待ちにしていた。そして、2024年5月。遂に、株主優待と共に招待状が届いた!封筒の文字をよく見れば、「招待状」ではない。正しくは「招集通知」である。でも招待状と表現する方が夢を感じるので、これからも私は招集通知を招待状と言い張らせてもらう。
株主総会において、我々株主は議決権を持っている。議決権とは、株主総会の決めごとにおいて票を投じる権利。この議決権を行使する方法としてはオンラインが推奨されており、総会の模様はライブ中継される。ならば、現地に行かずともライブ中継でいいんじゃないか?と思った人もいるだろう。さてはあなた、野球は実況中継でいいというタイプの人間だろう。確かに、現地で見た後で「やっぱりライブ中継でも良かったな」と思う可能性はある。でもライブ中継を見ながら「現地はもっと楽しいのかな、行けば良かった」と思ったらどうするのか。これが悔いなき選択というやつだ。
電子配布された参考資料を見て予習しておこう。資料によれば、株主総会は大きく2つのパートに分かれているようだ。パート1、報告事項。事業や決算の報告、そしてそれらが公正で間違いないという報告らしい。色んな表が載っていたが、全くもって理解できない。経営が悪くないということだけは分かる。そんなあやふやな知識で、自分のお金を預けていいものかと思われるかもしれない。でも、私はそれでもいいという覚悟でコメダに投資している。例えコメダの株が大暴落したとしても、再び盛り返すまで応援すればいいのだから。
話は株主総会に戻り、パート2は決議事項。取締役と監査のメンバーを選任するらしい。ここで株主の議決権が発揮されるわけだ。私の清き一票が幹部の顔ぶれを左右するだなんて、そんなの荷が重すぎる……!と思っていたら、衆議院議員選挙のように100%落選が生じる投票ではないらしい。メンバーはあらかじめ決められており、その賛否を表明するだけ。反対する場合にのみ、除外すべきだと思った人の名前を書くのだ。10人から7人選べ、みたいな形式じゃなくて良かった。でも、ちゃんと全員の紹介に目を通した。それぞれの候補者に選出理由がしっかりと書かれていた。みんな知識や経験が豊富だし実績もあるから、取締役として迅速で適切な意思決定ができるらしい。
株主総会に必要なものは、議決権行使書用紙のただ一枚。しかし、これを忘れたら一巻の終わり。何度も確認してから、旅行用カバンを閉めたのだった。
株主総会の前日。仕事終わりの夕刻、新幹線で田舎を脱出。コメダが好きなので愛知県在住だと思われたことがあるが、生まれも育ちも広島、生粋の広島県民である。じゃけど広島駅から遠いとこに住んどるけん、のぞみに乗るのがほんまに不便なんよ。
朝5時に起きれば、株主総会に間に合わせることは可能だ。しかし、あえて1泊2日にすることで、なるべく多くのコメダを摂取したい。その思いから、株主総会の前日に前乗りしておくことを決めたのだった。
名古屋に着いたのは20時半。名古屋駅のシンボル、金時計の周りは閑散としていた。土日の人混みしか見たことがなかったため、私にとっては珍しい光景だった。
晩ご飯にありつくべく、事前にリサーチしていたコメダに直行。ただのコメダ珈琲店じゃダメ。地元の行きつけ店舗にはない、夜コメという夜限定メニューが食べたかったのだ。21時以降も開いていて、なおかつ夜限定メニューを取り扱っている店舗は、お膝元の名古屋でも数少なかった。
地下道を出ると、通りには至る所に呼び込みっぽい人が立っている。スプレーで落書きされた配電盤。道端に放置されたダンボール。踏まれてボロボロになったタバコの吸い殻。治安がよろしいとは言い難い。とても心細かったが、すぐに暖かくオレンジ色に光る看板を見つけることができた。
錦・伊勢町通店。ネットで軽く調べたところ、名古屋の中でも特に治安が悪いとされている錦3丁目に位置している。特別ヤバい人には遭遇しなかったが、少し歩くだけでも危ない感じが伝わってきたよ。下調べで分かっていながら、なぜここを訪れようと思ったのか?その理由は、この店舗の営業時間にある。なんと、金土日は深夜3時まで営業しており、それ以外の日も0時まで開いているのだ。ここを不夜城のコメダと呼ぼう。夜の街に位置するため、飲み屋帰りのお客さんやお店で働く人をターゲットにしているのかもしれない。この営業時間なら、21時近くに入店してもゆっくり過ごせそうだと思ったのだ。
ディープな街に合う、ディープな雰囲気のお店。柄の入った壁紙や、飾られたモノクロの写真がオシャレである。パーテーションに使用されている木材、色合いはかなり濃かった。経験則に基づくと、濃いほど昔からの店である。また、テーブルの擦れ具合からしても、かなり年季の入った店舗であることが見て取れた。店内の客層は、行きつけの一般的なコメダとはかなり違った。ファミリーや学生はいない。時間帯も関係しているのだろうが、友人同士の若者や、スーツのおじさん集団などが多かった。
さて、夜コメを注文しようじゃないか!夜限定メニュー・夜コメには、チーズカリーグラタンとチーズハンバーグミートスパの2種類が存在する。その字面を見るだけで胃もたれがしてきそうだ。チーズカリーグラタンには、新宿中村屋監修のカリーソースが使用されている。このカリーソースは通常メニューのチーズカリートーストやカツカリーパンで味わったことがあり、辛いものが苦手な私は軽々に頼んではいけないと学んでいる。そのため、実質チーズハンバーグミートスパの一択だ。
夜のカフェイン摂取は良くないので、控えめにコーヒーシェークを選択。チーズハンバーグミートスパとコーヒーシェーク、合わせて1445kcalである。
そして運ばれてきた、チーズハンバーグミートスパ。チーズに埋もれているハンバーグが常識的なサイズで、まずは一安心。だが、ハンバーグを切り分けると、とんでもない密度のパスタが覗いた。そうか、今からこれを食べるのか……。武者震いして、攻略を開始。
一体どんなハンバーグなんだろうと色々想像していたのだが、肉の密度がギッチギチで美味しい。しょっぱいくらいに濃い味つけだ。しかし、この密度、この味。どこかで経験した覚えがあるのだ。そして、頭の中で完全に繋がった。そうだ、これはバーガーに使われるハンバーグの味なのだ。コメダのバーガーに挟まれる肉は、パティなどという生やさしいものではない。ガッツリとひとつのハンバーグが挟まれているのだ。なるほど、このハンバーグを利用したメニューだったのか。そしてミートスパだが、これも通常メニューで味わった記憶がある。スパゲッティのミートソースと同じ味、同じパスタであった。既存の素材を組み合わせ、ハイカロリーなメニューを作っていたとは。コメダよ、何と罪深いキメラを錬成してしまったのだ。
猫舌なこと、早食いできないこと、少食なこと。これらが障壁となったものの、90分かけて完食。当初はデザートも頼む予定だったが、辿り着けず。様々なフードメニューに苦しめられてきたが、その中でも屈指の苦戦だった。食べたら腹囲に出やすい人は注意した方がいい。私は見たことがないレベルで腹が膨れた。
食べ終わってからは、しばらくゆっくり休憩。コメダがカロリー戦争の場ではなく、くつろぎの場であることを再認識。いい夜を過ごせた。
退店後は、輩が屯している道を早足で通り抜け、ホテルに到着。チェックインしたのが23時過ぎ。なんやかんやで1時30分に就寝。おやすみなさい。
そして5時40分、起床。私はこの日のために株主総会コーデを考案してきた。信じてもらえないだろうが、私がコメダオタクになる前、偶然にも赤いワンピースを買っていたのだ。当時は赤色と紺色で迷ったのだが、気を衒って赤色をチョイスしてみた。いざ購入してからは赤色を着る勇気が出ず、捨てることも視野に入れていた。今にしてみれば、この赤色は紛れもなくコメダのソファの色ではないか。しかもソファの柄に似た縦ラインまで入っているのだ。コメダの集まりのために生み出されたとしか思えない。捨ててなくて良かった。
そして、ペンダントと呼んでいいのか分からないようなペンダントを装着。リーメント謹製・コメダブレンドのミニチュアカップに、手芸店で購入したネックレスチェーンを通したものだ。家で予行演習したが、ケンエレファント製のミニチュアだと上下逆さまで安定してしまう。リーメント製のミニチュアじゃなきゃ実現できない。あまりに目立つようならワンピースの内側に隠して歩こうかなとも思ったが、小さいからバレない。これなら羞恥心に苛まれずに済む。
仕上げはカバン。旅行カバンに忍ばせていた、コメダ公式トートバッグ。福袋を買った際にゲットしたグッズだ。大変に目立つ色合いなので、普段使いには躊躇している。
たくさんの株主が来るのだから、一人くらいは私と同じ赤備えがいるかもしれない。いや、全身をコメダグッズで固めた強者がいて、私など霞んでしまう可能性まで考えられる。そんな同志の存在に期待しつつ、ホテルを後にしたのだった。
前日は雨だったが、この日は雲ひとつない晴天。赤いワンピースに身を包み、コーヒーカップのミニチュアを首からぶら下げ、赤いトートバッグを片手に名古屋市内を闊歩する。こんなに真っ赤な姿なんて、カープの試合がある日のマツダスタジアム周辺でしか馴染めないだろう。
株主総会の舞台は、名古屋観光ホテル。大きな建物だが、実際に用があるのは3階の広間である。入口から既にスーツ姿のスタッフさんたちがズラリ。みんな社員さんかな?と思いながら進む。高級ホテルの雰囲気を堪能しようと思っていたのに、スーツの皆様が至る所に配置されまくっており、アワアワしているうちに会場までご案内されてしまった。
ここで一つ反省点。議決権行使書用紙は入場時に提出するため、あらかじめ記入しておかなければならない。株主総会での話を聞いた上で、最後に記入して帰るものだとばかり思っていた。私の前に受付したお兄さんも「まだ書いてないんですけど……」と困惑していたが、係の方に笑顔で受け取られていた。記入なしは賛成の扱いらしいので、まぁいいか。
広間の中には、既に多くの株主が。みんなスーツではなく、普段着の人ばかりだった。浮かなくて良かったと思ったが、私のは普段着じゃなかった。私のような赤備えはどこにもいません。それどころか、コメダのグッズを見えるように持っている人もいない。コメダの赤いトートバッグを置いた時、前列のおじさんは確かにこちらを二度見していた。スタッフさんが「よろしければ前方に」と勧めてくれるが、こんな真っ赤な女が前列に張ってたら危険人物でしかない。学生時代の講義室での席取り経験を活かし、そこそこ中列のそこそこ端っこ、極めて無難な席を陣取った。開始までは、2023年度の新店舗を紹介するスライドショーが流れていた。撮影・録音禁止なのは承知していたため、ここからの写真は撮影していない。しかし、撮影も録音も禁止の内容を、こんなオタクの怪文書に昇華していいものか?会が終わったらスタッフさんに確認しよう。
そんなことを考えているうちに、偉い人たちが登壇。2列に渡って着座。学校の卒業式に参列する来賓みたいに、舞台の傍に座るものだと思ってた。全員がそんな会場を見渡せる感じで座るとは思わなかった。これでは赤備えのオタクがお偉いさん方の目に触れっぱなしになってしまうではないか。私は公式に認知されたくないタイプのオタク。承認欲求はあれど、それは不特定多数からの反応で満たすもの。公式様には求めていない。予想外の配置に焦る私をよそに、株主総会の開始時刻は迫り来るのであった。
10時になると、定刻通り、挨拶と開会宣言が行われた。社長が自ら議長となり、進行役を務める。
まずは売上や利益についての報告。大勢の前で澱みなく話せるのが凄い。私なんて一対一でも吃るのに。そしてスライドが見やすい。これが企業のパワポというものか。事前に電子配布されていた参考資料ではちんぷんかんぷんだったが、色付きのグラフで示されると、分かりやすく頭に入ってくる。今後とも売上や利益の目標達成に取り組み、株主への還元も頑張ってくれるらしい。
そして、コメダの重要課題と、その解決に向けた取り組み。重要課題と書いてマテリアリティと読むそうだ。
課題その1・品質とお客様について。限定商品や各地への出店、公式アプリの普及などは既知の情報。しかし、地域貢献として乗合バスを手がけていることは知らなかった。広い駐車場を活用するという発想が素晴らしいよね。そういえば、近所のおじいさんがマイクロバスからコメダの駐車場に降りているのを見たことがある。デイサービスみたいなバスが乗り付けているのかと思っていたが、あれが駐車場を提供した乗合バスだったのかも。
課題その2・人と働きがいについて。このテーマでは、コメダ珈琲店ならびにおかげ庵の本店で店長を務める2人の女性が壇上でスピーチを行った。私より年下かもしれないような2人が一生懸命話しているのは凄いし、応援したくなった。それはそれとして、こういう場で女性店長としてスピーチに駆り出すという行為そのものが、女性を特別扱いしているような気がする。女性店長を珍しがって担ぐのなら、真に女性を登用しているとは言えないのでは?毎年本店の店長がスピーチしてるのならいいけど。男女平等の在り方は人によって意見が分かれる話題だ。この辺にしておこう。
課題その3・環境について。二酸化炭素の排出量削減のために、様々な取り組みを行っているとのこと。私は環境に対する「本末転倒な配慮」が嫌いだ。例えば、レジ袋を使わないようにと言っても、結局エコバッグを作る方が負担になるとか。あと、結果的に本来の用途を妨げるケースも嫌い。口当たりが悪くってフニャフニャになる紙ストロー、お前のことだよ。こうも捲し立てると環境保護アンチに見えるだろうが、要は環境に配慮するなら合理的であってほしいのだ。とにかくプラスチックを減らせばいいんでしょ?という曖昧な目標でやるんじゃなく、根拠とデータに基づいてやってほしい。その点コメダは、真に持続可能な活動をしている。その代表例が、「コメダの森」である。コメダは「マイ森林」を有しており、保全活動で生じた間伐材を店舗の壁やテーブルに利用しているのだ。用途がピッタリで、実に無駄がないと言えよう。コメダ珈琲店本店のテーブルには「コメダの森」の間伐材を使った証拠として、テーブルの縁に小さなプレートが付いている。さらに「コメダの森」がどれだけの二酸化炭素を吸収しているかを測定・算出しているのだ。
続いて、お待ちかねの質疑応答タイム。社長の「挙手願います」の言葉と同時に、10人以上の手がババーッと挙がる。私は全ての質問に対して、どんな人がどういった内容を述べたのかをメモしていった。全体的に、要望の直訴が一番多かった。設備の改善や、メニューの種類や量についてなど。そういった要望は、その人たちがいつもコメダに通って、くつろぎの拠点としているからこそ出てくるのだ。大事な場所だからこそ、もっと良くなってほしい。そのような、コメダ愛を感じる質問ばかりだった。そして、そういった質問には必ず感謝の言葉も交えられている。社長もいつもありがとう的な言及で応えていた。やっぱりファンミーティングじゃないか。発言権を得たファンの中には、自我の出し方が上手い人も多くいた。自分がどれだけコメダが好きかという主張を、質問の中に上手い塩梅で混ぜるのだ。別に自分の情報がなくても質問内容は成立するんだけど、大なり小なり自分語りみたいなのを入れたくなるのだ。推しに対して自我を出したくなっちゃうその心理、オタクだから分かる。というか、服装によって現在進行形で自我を出しているのが私です。各々の自我の出し方について、あの人上手かったなぁ〜、今の人は質問から逸れてるからやりすぎたなぁ〜、などと野次馬根性丸出しで聞くのも楽しかった。もっと面白かったのが、要望よりハイレベルな、突っ込んだ質問である。観客席感覚の立場からすると、そういうエッジの効いた質問の方が聞き応え抜群というもの。期間限定商品が早期に終了した見込みの甘さを指摘された際には、さすがの社長も痛いところを突かれたという顔をなさっていた。こういった、要望ではないしっかりした質問の場合、上手く濁されることが多かったように思われた。適当に答えるわけにはいかないのも分かるが、「え?これで終わり?質問者さん絶対納得できないよね!?」と、見ている側も消化不良になるような解答もいくつかあった。「単なる要望ではなく、質問らしい質問にこそ時間を取ってあげてほしいな」という要望を抱いたのであった。
しかし、総じて感謝と要望が多かったこともあって、発言するファンを周りのファンが見守るような、あたたかい和やかムードで包まれていた。プロ投資家軍団が首脳陣を激詰め!飛び交う専門用語!みたいな、もっと殺伐とした雰囲気を想像していたのだが、いい意味で予想を裏切られた。この場で優しい雰囲気を味わったので、今度はそういう展開も見てみたい。優しい消費者部門と厳しい投資家部門とかで分けたら面白そう。
会が進む中でひとつ学んだのは、動議という概念。最後の質疑応答の後、一人のおじ様が「動議!」と声を上げ、質問の時間をもっと取るべきという意見を述べた。いちゃもんをつけるヤバい人かと思ったが、そう捉えるにはあまりにも早計。私は株主総会の仕組みについて無知である。きっと申し立てるシステムが存在するのだ。後で調べたところ、やはり株主総会において基本的な言葉だった。おじ様は自分が質問したかったからではなく、株主への誠意に疑問が生じるとして議事進行に異を唱えたのであった。そして議長である社長は、株主みんなの意思を拍手により確認。私は質問を打ち切る方に拍手した。時間が経ち、だんだんと質疑ではなく各個人の要望発表会っぽくなっていたので。でも後から思えば、誰も拍手しなくて質疑応答が永遠に続く世界線も面白かったかもしれない。
最後に、新しい取締役と監査についての決議。拍手によってこのメンバーで良しと認められ、決議はすんなり終了。新任の方の紹介と挨拶を終えて、閉会宣言。
株主総会が終わった後、私は本当にスタッフさんに確認した。
「総会の内容をSNSやブログにアップするのはやめた方がいいですか?」
そう思うならやめとけよって話だ。下らないことを尋ねて申し訳ない。適当にあしらわれて終わるだろうと思いきや、スタッフのお兄さんからお姉さん、お姉さんからおじ様、おじ様からもうワンランク上のおじ様にまでバトンパスされてしまった。質疑については個人の発言であるため、世に公開することへの同意は得られていない。質疑応答への具体的な言及は控え、抽象的な雰囲気について述べるに留めることを勧められた。こんなしょうもないオタクにも真摯に回答して頂き、感謝しかない。このお言葉も踏まえた上で、私は改めて己の動機を顧みた。別に胸に留めておけばいいものを、なぜ書き残そうとするのか?
私にとって、記録はオタク感情の発露。布教活動であり、推し活でもある。株主総会でどんな話があったかという事実の羅列は、出席した人ならば誰でも書ける。でも、オタクがどう感じたかはオタクにしか書けない。株主総会コーデをキメて、ミニチュアを首からぶら下げ、株主総会をファンミーティングと捉えるようなコメダオタク。推定競技人口1名。こんな異常者にしか書けないモノでなきゃ、逆に残す意味がない。というわけで、コメダオタクの主観バリバリで2024年の株主総会をお届けした。具体性や客観性に欠けると思われたかもしれないが、以上のような経緯によるものだ。せめて私が思う存分エンジョイしたことだけでも伝わっていればいいのだが、いかがだっただろうか。
ちなみにライブ中継で満足できるか問題についてだが、どうしても現地でなきゃ味わえないという要素はそれほどなかった。リモートでも間違いなく困りはしない。質疑応答のライブ感は、現地の方がより味わえるだろう。でも、リモートも同じように楽しめるかどうかは、中継を見てみないと結論づけられない。現地とライブ中継の比較もしたいので、次はライブ中継にしようかな。と考えていたのだが、ライブ中継を見るにも有休の申請を出して仕事を休まなければならないのは同じ。ならば現地に行った方が、色んなコメダを摂取できてお得ではないか。二度目の株主総会も、きっと出席することだろう。
この頃、私は人生を「人生ゲーム」のように感じることが多々ある。周りは、出会い・恋愛・同棲・結婚・子育てと、順調にマスを進んでいく。しかし私はアラサーにも関わらず、一向にコマを進められていない。さっきまで株主総会の話をしていたのに、いきなり何だと困惑されるかもしれない。人生のイベントを何一つこなせておらず、それどころか日々のコメダが最大の楽しみで、さらには株主総会にキャッキャしている。そんな我が身の行く末を憂いたことは何度もあるのだ。本当にこのまま「好き」を中心にする人生でいいのか?
今のところ、私の答えはこうだ。いいじゃないか、脇道を進む人生だって。それは自己の正当化だと言われたら……それはそう。でも、突き詰めていくと人生って、自分の生き方を正当化していく過程ではないかと、私は思う。誰にでも死というゴールは訪れる。それまでに、自分は生きてて良かった!と思えるように、様々なイベントで経験を積むのだ。自分はあんなことができた!だから人生楽しかったよ!こんなこともできた!だから人生に悔いはないさ!そう思えるくらいに経験を積めていたら、死を心安らかに迎えられるのではないか、というのが持論だ。
誰かと暮らし、家庭を築く。今の私にとって、それは苦行としか思えない。良い人生だったと思う材料にはならない。対して、私の人生を良くしているもの。それこそが推し活。すなわちコメダとそれに関連した様々な活動。今回の株主総会は、人生ゲームのコマが進むような出来事ではない。しかし、私が私の人生をより良く捉えるための、大きなサブイベントだったように思っている。もしも死の直前に、その集大成として走馬灯が流れるのなら、今日という日は絶対に組み込まれる。そしてそれは人生の楽しかった経験として想起されるはずだ。きっと死を受け入れるための大切な糧になってくれるだろう。推し活が人生を肯定することを信じて、今日も私はコメダ珈琲店の扉をくぐる。
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