沼レベル5・コメダの株を買う
消費でコメダを支える次元は超えた。今度は株主としてコメダを支えるレベルだ。とは言え、このレベルに到達するまでにはかなりの時間を要した。私はコメダの株を買うかどうか、何年も迷っていたのだ。
株を買いたい理由は至ってシンプル。株主優待が欲しいからである。コメダブランドで使えるプリペイドカード、KOMECA。株を買うと、株主優待専用デザインのKOMECAカードが貰えるのだ。しかも、そのKOMECAに年2回の1000円チャージをしてくれる。さらに、長期に渡って株を保有していると、チャージの額も増える。私には「特別なデザインのKOMECAでないと持ちたくない!」という変な意地があった。正月や記念日など、特別なKOMECAの抽選キャンペーンには必ず応募しているが、当たるはずもなく……。しかし、2023年、KOMECAの特大キャンペーンが開催された。チャージすればKOMECAのポイントがいっぱい貰える、大変お得な内容だった。さすがにこのキャンペーンは逃せなかったので、ノーマルKOMECAカードの作成を余儀なくされたのであった。KOMECAのカードが複数枚ある場合、ひとつのカードに残高を合算することができる。それなら特別なKOMECAをメインカードに据えたいものだ。その思いから、ノーマルKOMECAカードを作った後も、株主優待専用デザインへの憧れは消えなかった。
こんなに株主優待を欲しがっているのに、なぜ株の購入を踏み止まるのか?理由は2つ。
ひとつ、証券会社の口座を持っていなかったから。株を買うには証券取引のできる口座が必要だ。しかし私が持つのは、給料が振り込まれる地方銀行の普通口座のみ。その口座は銀行に行って作ったのだが、膨大な手続きと時間がかかった。やれハンコだの、やれ住民票だの、そういった銀行への持参物の準備も面倒だった記憶がある。新たに口座を作るなんて絶対面倒に決まっている。
ふたつ、株は怖いという認識。私にとって、株はギャンブルと同じ。競馬や競艇、パチンコの仲間だと思っていたのだ。株や投資信託を運用する人からすれば、特大のため息が出るような言葉かもしれない。だが「分からないから怖い」という思考に陥ることは誰にでもあるはずだ。
面倒。分からない。怖い。そこで止まっていた私を変えたのは「カズレーザーと学ぶ。」という、専門家を招いて最新の学説を教えてもらうというテレビ番組だった。その日のテーマは、お金の新常識。その中で、投資の専門家であるテスタさんが話していた。
「投資に抵抗があるので貯金するという人もいるが、貯金だって“円”に投資しているのと同じ」
なんと、私は知らぬ間に投資していたのか。そう言われると、地方銀行ひとつに財産を集中させているのは、それはそれでリスクがあるのかもしれない。テスタさんの言葉によって、私の株に対する見方は、ギャンブルから資産へと変わっていったのである。
そう思い始めた2023年、世間が新NISAを喧伝しはじめた。どうやら2023年内にNISAを始めたら、非課税で運用できる枠が増えるのだそうだ。つみたてNISAを始めるには、証券会社で口座を開設する必要があるという。じゃあ、その口座でコメダの株を買うのはどうだろうか。一石二鳥とはこのことだ。このような経緯で、私は口座の開設からスタートしたのであった。
まず、どの証券会社を選ぶか。ここから既に面倒だ。
どういう観点から選ぶといいか、ネットで調べてみる。
付与されるポイントで決めよう!……却下。楽天ポイントもPontaポイントも使っていない。選ぶ理由にならない。なら、携帯会社で決めよう!……却下。auでも楽天モバイルでもドコモでもない。これも基準にならない。なら、安い投資信託を取り扱う所で決めよう!……確かに地方銀行の投資信託は高いが、ネット銀行同士ではどこも同じくらい安い。ひとつの証券会社に絞る理由にはなり得ない。さんざん迷った果てに、SBI証券とSBIネット銀行の口座を作ることにした。SBIの利用者は多いため、初心者向けに口座開設をガイドする記事もたくさんあった。多くの人が選ぶものと同じものを選択するというのは、付和雷同のようでいて、実は賢明なのかもしれない。様々な初心者向け記事を教科書代わりにして、スマホと睨めっこだ。ハンコや住民票は要らないので、マイナンバーカードの有用性は実感した。それでも手順があまりに多すぎる。最短◯分で完了!と宣っているのは嘘だ。おそらく口座開設RTA走者の記録だろう。ぼちぼちNISAの口座開設しようかなぁと思ってる人は早く始めた方がいい。始めようと思って色々調べだすと、そこからまた時間がかかるぞ。
やっとのことで開設の申請が完了し、税務署の審査も無事に通過。その後の初期設定とも延々格闘した。SBI証券とSBIネット銀行、それぞれのユーザー名やら初期パスワードやらログインパスワードやら取引パスワードやらがゴチャゴチャになったせいで、マイページにログインするまでに1時間かかった。我ながら段取りの悪さに辟易してしまう。これを読んでいて証券取引の口座を開設しようかという人がいれば、全てのパスワードは一度きちんとメモして、どこのページで使う何のパスワードかを整理しながら手続きを進めて頂きたい。
さあ、気を取り直して、お次は軍資金の投入だ。給料が入っている普通口座から、ガボッと現金を引き出す。分厚い札束を財布にしまい、ドキドキしながら近くのセブン銀行に駆け込み、ネット銀行の口座にお金を移し替える。わざわざ現金に換える必要があるのか?と疑問に思った人もいるだろう。無いよ。普通口座でネットバンキングが使えたらの話だがな!手続きに疲弊しきっていた私は、地方銀行のネットバンキングを申請するよりも、物理的にお金を移動させる手段を取ったのだった。何にせよ、これで証券口座にお金を入れることができた。
そして、SBI証券のつみたてNISA用アプリを導入。ここで投資信託を選び、取引をするのだ。事前にネットでどの投資信託が良いか調べるも、情報が多すぎて行き詰まっていた。迷いながらアプリを開くと、なんと、人気順・手数料が安い順などでソートができるではないか。ひとつひとつの投資信託をちまちま調べなくとも、ここで投資信託同士の比較が容易にできたのだ。早くアプリで探せば良かったなぁと後悔。結局、人気かつ手数料が安いものでいくつか選んだ。給料の口座から毎月定額をネット銀行に自動振替し、その振替分が個々の投資信託に振り分けられるように設定。これでつみたてNISAが自動で運用されるようになった。めでたしめでたし。
……待て待て、終わるんじゃない。つみたてNISAにかまけて目標を見失っていた。最初の目的は、コメダの株を買うこと。そして株主優待の恩恵を享受するのだ。
今までの手続きにより、既に軍資金は口座に投入済み。後は株を買うだけだ。購入数は100株から始まるが、株主優待も100株から。つまり100株買えたらそれで良し。もはや買い時とか知らなくていい。安く買えなくたって、私の力で株価を爆上げさせてやるさ!気前よく聞こえるが、私にそんな力は無い。これ以上お金知識の迷宮に閉じ込められたくないだけである。ところが株取引も、ただ購入するだけでは済まない世界だった。注文画面に進んだ瞬間、知らない単語が一気に襲い来る。指値?成行?逆指値?東証?SOR?全然分からない。でも、自分のお金だ。分かった上で運用しないと。疲労困憊のオタク。札束を手に、うろうろと取引所を彷徨っている気分だった。ここに100株買えるだけのお金があるのに、どうして簡単に買えないのだろう。そんな風に嘆いても仕方ない。こちらに関しても、初心者向けの記事を読み込んだ。株取引は、現時点の株価でいつでも直ちに取引ができるわけではない。15時半から翌朝9時の間は取引所が閉まっている。夜はその場での取引ができないのだ。しかし、注文を申し込んでおくことはできる。「この期間中に◯円より安くなったら買います」というのが指値。今よりどのくらい安い値で攻めるか、どのくらいの期間待つかが肝のようだ。対して「もう何円でもいいから買います!」というのが成行。私が見ていた時、コメダの株価は1株2805円。成行の詳しい仕組みまでは理解できなかったが、2805円より高いところで決まってしまう可能性もあるのだろうか。それはさすがに嫌だ。というわけで、2805円以下の指値で設定しておいた。そして翌朝9時に取引所が開く。開始時点で2805円なのだから、秒で取引成立だ。翌日、報告書なるものが交付された。ご精算金額、28万500円。2805円を100株で、28万500円。確かに100株買えていることを確認した。祝!100株購入完了!コメダオタク、ようやく株主になれた!
だが、いざ30万円弱の出金をしたのだという事実を突きつけられると、自分はとんでもない取引をしたのだと震撼する。赤裸々に言うと、私の手取りは月20万に満たないのだ。でも、これはコメダのために出したお金だ。株を買うことは、その会社を支えることに繋がるはず。商品を食べたり買ったりする以上にダイレクトな推し活では?もはや推し活の極みとも言えるかもしれない。ならば誇らしく思おうじゃないか。必死に己を正当化する薄給コメダオタクなのであった。
後日、株主優待デザインのKOMECAカードが届いた。KOMECAはアプリでモバイル決済ができるので、カード自体を普段から持ち歩く必要はない。しかし私はお守りとしてスマホケースにしまっている。
口座の開設も、入金も、諸手続も、非常に面倒だった。しかし、この煩わしさを乗り越えて手にした株とつみたてNISAは、いつか自分の大事な資産に育つに違いない。そして、その利益をコメダの飲食や株の買い増しに利用するのだ。これが推し活の永久機関というものか。
読んで頂きありがとうございます!
完結まで頑張ります!