沼レベル3・コメダのグッズを買う
コメダに通うだけなら、まだオタクとは言えない。毎日モーニングを利用する人だってたくさんいるはずだ。でも、グッズを買っているとなれば、だいぶオタクとしての印象が滲み出てくるのではないだろうか。
初めて買ったグッズは、ケンエレファントという会社のミニチュア。コメダのロゴ入りカップやシロノワールなど、定番メニューとその食器を忠実に再現したミニチュアだ。百均で収納ボックスを買い、並べて撮影会を楽しんでいた。
しばらく経つと、ミニチュアを彩る背景や小物が欲しくなった。じゃあ、作ろう。そう思った私は、再び百均へ。赤いソファはスポンジにフェルトを巻いて。テーブルや内装は木やレンガの画像をコピーして、切り抜いて貼り付ける。
そうこうしていたら今度はリーメントという会社からミニチュアが出た。なんとソファやテーブルのミニチュア付きで。もちろん私の手作りとは比べ物にならないハイクオリティである。この会社は親切なもので、「オトナ買い」という名の、全種類を一気に揃えられるセットを販売してくれている。もちろんオトナ買い即決だった。
ミニチュア以外には、2023年の一番くじにも参戦。コメダのグッズが当たるくじである。喫茶店のグッズって何だろうと思われるかもしれないが、コメダのグッズ自体はさほど珍しいものではない。コメダ珈琲の公式オンラインショップでは、様々な商品を展開しているからだ。赤いソファ生地をモチーフにしたティッシュケースやスリッパなどの雑貨、定番メニューのイラストを使用したキーホルダーや文房具など。店舗で実際に使用されているコーヒーカップやグラスさえも購入できる。コメダオタクとしての自覚が芽生えてきたところなので、私とて公式グッズを買いたい気持ちはある。しかし、普段使いできるコメダグッズを買った場合、それを身につけてコメダへ行くのか?それは恥ずかしくてできない。店員さんには自己顕示欲が強い奴だと思われそう。それに、家に置いても邪魔になるか、タンスの肥やしになるだけでは?さらに、手を出したが最後、散財の一途を辿り、後戻りできない気がする……!
色々な思いに抑えられていた中での、一番くじの出現。オタクはガチャに弱い。ランダム要素の付与により、何とか抑えていたグッズへの欲求が一気に爆発。ものの見事に購買欲をそそられたというわけだ。
オンライン販売は店頭販売の1か月後なので、実際の店舗でいち早く入手したいところ。対象は全国の一部のファミリーマートだという。私は田舎住まいだが、それでもファミリーマートは多く存在する。あそこなら仕事帰りに寄れるし、向こうでも自転車で行けるな、などと考えていた。ところが、状況は大きく変わる。やがて告知された、コメダ一番くじの取り扱い店舗。なんと、町内で対象のファミリーマートはたったの2か所。しかも、どちらも車で20分以上ではないか!ゴールデンペーパードライバーの私、これには激しく憤慨。何とかバスで行けないか調べていたら、両親が買い物のついでに寄ろうかと申し出てくれた。これはお言葉に甘えるしかない。かくして、コメダオタクの仁義なき戦いが幕を開けるのだった。
仕事が終わり、昼過ぎからの参戦。父の運転で到着したのは、ド田舎のファミリーマート。町の中心地から車を走らせ、山をひとつ、丘をふたつ越えたところに存在する。くじが販売されてから4時間以上。ド田舎とはいえ、販売している店が少ないのだから、既に完売している可能性もある。まずはくじが残っていることを祈りながら入店。
入ってすぐ、景品たちが目に飛び込んだ。良かった、いっぱいある!田舎最高!まだどの賞も残っているではないか。棚の上段には、シロノワールを模した大きなぬいぐるみが2つ鎮座していた。これが最高のA賞である。A賞なんてどうせ当たらないのだから、見る必要もないのだが。
店頭でくじを買うのは初めて。実物を目の前に決して安くない金額を支払うのは、ソーシャルゲームの課金にはない重みと緊張を感じた。予算はくじ10回分と決めていたが、一気に10回買う勇気は出なかった。店員さんに購入券を渡し、5回でお願いしてみる。登場した箱には20枚以上のくじが。一番くじにはラストワン賞といって、くじの最後を引いたら貰える賞がある。今回のラストワン賞は、クリームソーダを模した、机に置ける照明である。ブーツ型のグラスに、メロンソーダの緑色の光が灯るらしい。残りが10枚ちょっとなら、予算オーバーでもラストワン賞を狙おうかと思っていたが、20枚以上はさすがに買えない。ラストワン賞は諦め、5回購入で終わらせることにした。
隣で母が見守る中、運命のくじ開封。1枚目、D賞のジッパーバッグ。定番メニューのイラストがプリントされてある。あまり気にしていなかった賞だが、悪くないスタートだ。2枚目、E賞のハンドタオル。3枚目、F賞のラバー雑貨。これらは目当てのデザインが存在するので、まずは確実に1回ずつ当たって良かった。4枚目、またD賞。ジッパーバッグ2個かぁ…。
そんなことを思いながら、ラスト5枚目……A賞。ん?A賞って、あのA賞!?
シロノワールのもっちりぬいぐるみ!
「えぇーっ!要らんって言っとったのにぃ!」と嬉しい悲鳴を上げ、母と一緒に喜んだ。やはりこの世界に物欲センサーは実在する。たとえ目当てではないとしても、一等賞が当たるのはとても嬉しいものだ。良かった、母がいてくれて。1人で小躍りする不審者になるところだった。バイトらしき女の子が、ニコニコで景品の棚へ案内してくれた。ここで各賞の種類を選ぶのだ。E賞のハンドタオルは、赤色のソファ風デザイン。F賞のラバー雑貨も、コースターを迷わず取った。この2つが、絶対欲しかったお目当てのグッズだ。2回当たったD賞のジッパーバッグは、オシャレなもの1つ、実用的なもの1つで選んだ。
そして最後。上段に待つ、2つの大きなぬいぐるみシロノワール。その片方を手に取り、意気揚々と店舗を後にしたのだった。
いやぁ、5回でA賞当たることある?これがビギナーズラックってやつ?ホクホクしていると、運転手の父から「どうする?次行く?」という悪魔の問いかけが。もう満足だけどなぁ、でもなぁ……。人間とは罪な生き物だ。思いがけず良い賞が当たると、他の賞も当てたいという欲が湧いてくる。こういうのは、欲をかいてしまったが運の尽き。だが、せっかくなので町内のもうひとつの店舗も行ってみることに。そっちでは欲しい景品がなくなっている可能性だってある。何が残っているか確かめ、その上でくじを引くか決めればいいだろう。
田園風景を横目に進んで着いたのは、もっとド田舎のファミリーマート。周辺に住宅地など存在しない。山々に囲まれた、実に自然豊かな店舗だ。入店すると、こちらもすぐに景品の棚が見えた。しかも未入手のB賞とC賞が2つずつ残っているではないか。残りの5回分をここで買い、予定していた10回分の予算を使い切ることにした。箱を見ると、前の店舗よりくじが多い。ここでもラストワン賞は無理だ。でもB賞かC賞が引けたらそれで良し。
母が見守る中、運命の開封・パート2。1枚目、F賞のラバー雑貨。既に欲しかったラバーコースターはゲットしているが、次に気になっていたのがラバータイ。かわいいグッズをさらに獲得できるので、良しとしよう。2枚目、E賞のハンドタオル。タオルは何枚あっても困らないので、こちらもOK。3枚目、再びF賞のラバー雑貨。F賞はこれで3つ目。まあ一番多い賞なんだから、順当な結果なのだが。4枚目、ここでB賞のタオルケット!最後の5枚目でC賞が来たら、ラストワン賞以外は当たったことになる。
いや、そんな都合よく来るわけないよなぁ〜。じわじわと期待しながら、最後の5枚目を開く。飛び込んだ文字は、なんとC賞!これでC賞の冷感マットも獲得だ。「凄い!揃ったじゃん!」と、母と共に喜んだ。重ね重ね、隣に母がいて良かった。1人でニヤつく危険人物になるところだった。こうして10個の景品を車に載せ、ご機嫌で帰ったのだった。コメダ一番くじ10連。1回680円、総額6800円である。大きな出費だが、効率よく色々な景品を手に入れられたので、大勝利と言っていいだろう。これがビギナーズラックというものか。実は翌年に一番くじの第2弾が登場したのだが、私は参加しなかった。ビギナーズラックが切れて、ギャンブルの沼にハマるのが恐ろしかったからだ。私は意地っ張りなので、A賞が当たるまで辞められないとか、そういう縛りを自分で設けて自分で苦しむタチなのだ。働き始めて収入があるとはいえ、極めて薄給。破産は御免である。
今でも私の部屋で、シロノワールの大きなぬいぐるみが棚の上を占拠している。仕事が苦しくても「帰ったらシロノワールのぬいぐるみちゃんが癒やしてくれる……!」と思って耐えている。そう、これはきっと、コメダが我に与えたもうた褒美なのだ。仕事で毎日上司の八つ当たりを受けている姿を、コメダの神はご覧になっていたに違いない。お仕事頑張ってて良かった!
今まではコメダを愛する女と自称していたが、今度からコメダを愛し、コメダに愛された女と名乗っていいだろうか。いや、くじ運が一度良かった程度で推しに愛されるなんて傲慢だろう。調子に乗りすぎ。実際の私は、どこにでもいる一介のコメダオタクでしかない。でもそれで十分だ。ありがとう、コメダ。ありがとう、一番くじ。
ミニチュアに、一番くじ。これらはその時だけの企画だが、毎年コメダのグッズをゲットできる機会もある。それが、年末年始の福袋だ。
コメダの福袋は、毎年大まかな構成が決まっている。福袋の袋に当たる部分は、オリジナルデザインの手提げバッグ。そして福袋を買った店舗で使えるコーヒーチケット1冊と、指定のフードメニューに使えるスナックチケット1冊。それからドリップコーヒーやお菓子などのコメダ製品がいくつか。ここまでは固定だが、目玉商品は毎年変わる。ブランケットやポーチなどが多いが、他社コラボにより食器や美容品だったこともある。
最初にコメダの福袋を購入したのは2020年。お試しで母と割り勘して買った。その時の手提げとエコバッグが便利で、未だに重宝している。翌年以降は目ぼしいグッズが入っておらず、購入には至らなかった。
しかし2024年、ついに欲しい目玉商品が登場。赤いソファ生地を使ったポーチである。さらに福袋のトートバッグも赤いソファ生地。赤いポーチと赤いトートバッグが欲しくて、購入に踏み切った。だが、赤いトートバッグは持ち歩く勇気が出ず、結局引き出しにしまいっぱなしだ。ポーチの方は、化粧品を入れて持ち歩くのに重宝している。
2025年も福袋を購入。あまり目ぼしいグッズはなかったのだが、バッグが例年より大きく、実用的で助かっている。それから「サステナブルなココア」というコメダのオリジナル商品が意外にも刺さった。この商品は無調整ココアなので、自分で砂糖や牛乳を入れて温めなければならない。最初は面倒だと敬遠していたのだが、美味しい配合を発見してからは、休日にココア作りを楽しむようになった。
グッズ以外にも、手が届く範囲でのコラボ商品・監修飲料などは購入している。特に大規模だったのが、森永製菓とのコラボ。コメダは2023年と2024年の二度に渡り、森永製菓と大きなコラボをしている。シロノワール味のサンドクッキー、クロネージュ味の小枝など、メニューの再現にこだわった素晴らしいお菓子を味わうことができた。特に2回目のコラボ商品はどれも美味しくて、たくさん買ってしまった。最も好きだったのは、アイスココア味のチョコボール。香りが本当に上品なココアで、くちばし部分から内部の香りを嗅ぐくらいハマっていた。
たまに、スーパーやコンビニでコメダ監修の商品を目撃したという情報が私の元へ寄せられる。出会った際にはぜひ購入して、感想を聞かせてもらいたいものだ。
こういったグッズ・商品の購入に共通していること。それは、購入を通してコメダを応援したいという思いだ。その時、こう思った。私はコメダを応援したいと思っている。応援したいという気持ちで出費するのは、ある種の「投げ銭」に当たるのではないだろうか?
YouTubeの配信者に投げ銭をしても、見返りは貰えない。せいぜい自分の名前やメッセージを読んでくれるくらいだ。おまけに投じた金額の何割かはGoogleに取られてしまうので、全額が相手に届く仕組みではない。ところが、年末にコメダへ投げ銭をすると、なんと福袋が貰えるのだ。しかも食品売り場で投げ銭をすると、コメダの飲料が貰えることだってある。すごい!なんと割のいい投げ銭なんだ!
ただの金品の交換なのに、奇妙な持論を展開していると思われただろう。これはある種の自衛だ。こうやって出費を正当化しないと、自分の異常性に気づいてしまうから。己の行動が無駄遣いではなく応援だと信じて、私は今年も福袋を買うことだろう。
読んで頂きありがとうございます!
完結まで頑張ります!