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柔らかな肉には、甘い匂いがする

白いブラウスに包まれた豊かな胸元。

ぴたりと張り付くような黒いスカート。

隠しきれない肉感が浮かび上がっている。


経理課長の桐原美琴だ。


「ねぇ、代わりにやってくれない?」


彼女は書類の山を俺のデスクに積み上げた。


課長になったのは、会社の方針だった。

最近流行りの女性の積極登用ってやつだ。


だが、俺より明らかに能力が劣っていた。

数字に弱く、段取りも悪い。

最悪なのは、責任感が皆無ということ。


「ほんと、助かるわ〜。じゃ、よろしくね!」


美琴は身体を揺らして、俺の横を通り過ぎる。

すれ違いざまに甘い匂いが鼻をかすめた。


俺には、家庭を守る責任があるが、

あの肉感と、あの匂いに、

抗いがたい欲望を刺激される。


とはいえ、課内の混乱は目に余るものだった。

遂に、取引先との信用問題に発展してしまった。

何人も辞表を叩きつけて去っていった。


俺は残った。

彼女を支え、不手際をカバーし続けた。

自分がやらなければ、誰がやる?


だが——。


「明日から資料室に異動......?」


経理部長が説明した。


「役員会議で出された決算報告書がメチャメチャだったんだよ」


「えっ? 入念に確認したはずですが......」


「桐原さんに聞いたら、君のせいだって言うんだよ」


後頭部を殴られたような衝撃だった。


「会社にスキャンダルがあったら世間が許さない」

「今のご時世、女が絡んでいると方々が騒がしくなるんでな」


取り付く島もなく辞令を受け取った。


——ああ、殺したい。

美琴の姿を見る度に、欲情と憎悪が渦巻く。


金曜の夜8時過ぎ、会社の空気が緩む。

従業員はほとんど帰宅していた。


給湯室には、美琴ひとり。


コーヒーを淹れながら、艶のある唇から溜息をつく。

その後ろ姿。黒いスカート越しにわかる、豊満な臀部。

白いブラウスの背に浮かぶ、微かなブラジャーのライン。


俺は唾をごくりと飲み込んだ。

震える右手でナイフの柄を握り締める。


足音を消して近づく。

歩を進める度に、甘い匂いが近づいてくる。

彼女は気づかない。


「……桐原さん」


俺の声に、彼女はくるりと振り返る。

驚いたように目を見開く。


「え? なに?」


鋭利なナイフが、美琴の腹部に食い込む。


ブスリ


「……っっぐ……ぁ……」


右手に柔らかい肉を切り裂いた感触が伝わる。


官能的な吐息が俺の顔を撫でる。

俺は少し身を傾け、美琴と唇を重ねる。

柔らかく暖かい。甘い香りが鼻腔に流れ込む。


「んっ……んっ……」


彼女は束縛から逃れようと、俺の肩を必死に押す。

美琴の口から放たれる苦鳴に快楽を覚える。


俺はナイフを抜く。


彼女は腹を両手で抑え、背中を丸める。

左右によろめきながら給湯室から出ようとする。

よろめく度に乳房が揺れる。


「たす……けて……」


小柄な身体は力を失ったように、うつ伏せに倒れる。

それでも、諦めず腹ばいで進もうとする。


俺は彼女の臀部に腰かける。

脂肪の柔らかさが下半身を刺激する。


逆さにしたナイフを両手でしっかり握り締める。

美琴の背中に、ナイフを振り下ろす。


ドスッ


「ぐはっ!」


ナイフは肋骨の隙間を通り、心臓を貫いた。

美琴の背中がしなり、全身が震えた。

四肢はゆっくりと床に落下した。


彼女の周囲に血の池が広がった。

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