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ダンジョン買います

僕は職場での将来を悲観していた。

一般の企業の制度では収入を増やすことは難しいと思い独立を考えていたところ、不動産屋である物件に目を奪われた。

「売ダンジョン」

ここが運命の岐路となり、ダンジョン運営を行うことになる。

ダンジョンマスターとして成功するのか、それとも探索者に討ち取られてしまうのか…

はじまり


高卒で就職して、出世とは無縁のスタートラインに立った時には流されるまま生きていけば良いと思ってた。

楽しく遊びつつも、少しだけ貯金もでき、大きな不満も持たずに生きてきた。

働き始めた時から成長していないけど気にもしない。

が、4年が経過した時にモヤモヤが爆発した。

え?大卒の新入社員より給料が少ないってどいうことですか!?

私の4年の経験は、Fラン大学卒のこいつより価値が無いって事なんですか〜!


こんな価値観の中であと40年も生きてけないぞ。

こうなったら独立して金稼いじゃうもんね〜。とはいえ、金も少し、資格なし、学歴なし、何もできねぇ。


まずは資金を貯めるために、しばらく大人しく働く事を誓い、いくら貯めれば良いのかを調べる事にした。

その日の帰り道に不動産屋に張り出された賃貸物件を見てみた。webだとオススメが読み取れないから店舗だと何となく安心よね〜。と眺めるが店舗・事務所の保証金ってアパートとかと違うのね…数年レベルで遊びを我慢して貯金マシーンにならないと無理だぞ。これは。

早くも挫折しそうになった時に、目に入ってきた物件があった。


「売ダンジョン:1,000,000円 仲介手数料1%即日引き渡し可能。条件として、最低4年間はダンジョンマスターとして管理をしなければならない。」


ダンジョンって買えるんだ。100なら今でも払えるし、ちょっと確認だけしてみるか…


「ごめんくださーい。表の物件見て気になるものがあったので話聞きたいんですけど〜。」

「いらっしゃいませ。こちらへお掛けください。どちらの物件でしょうか?資料を用意しますので。」

窓口の女性がにこやかにマニュアル通りに対応してくれる。

「100万円の売ダンジョンってのが気になったので詳細を聞かせてください。」

表情はにこやかなままだが、落胆した空気を感じる。

「格安物件でございますので、専門の担当と代わりますので少々お待ちください。」

ノルマの対象にならないってことか。納得。


間髪入れずに男性が応対してくれる。

「店長の長谷川です。ダンジョンが目に留まったとか。ありがとうございます。早速なのですが、過去にダンジョンをお持ちになっていたということは…無いですよね。お若いですもんね。」

「はい。というよりも売り買いされている事も知りませんでした。」

「なるほどですね。では、ダンジョンマスターという職業については如何ですか?」

「アニメや小説の中で聞き齧ったことはありますが職業という概念がないですね。」

「なるほどですね。では、少し詳しくお話しさせていただきますのであちらの部屋へどうぞ。一応、表には交渉中の張り紙だけつけておきますのでご安心ください。」


応接室のような場所に通された。


「それではお客様、ダンジョン及びダンジョンマスターについて簡単にお話しさせていただきます。その前に何か存じ上げておりますでしょうか?」

「イメージとして魔物が出てきたり、アイテムが落ちてたりって感じのゲームの世界しか思い浮かばないです。」

あれ?何で売り物件を受け入れられたんだろう?現実にはありえないだろ…

「なるほどですね。まったくもって一般的な知識だと思われます。それではまずダンジョンですが、これはお客様のイメージで90%は理解されております。若干補足させていただくと。メンテナンス次第で広くもできるし難度も上げられます。また、普通の方にはダンジョンを認識することは難しくなっていますね。ダンジョンの入り口付近は現実の世界にありますが、ダンジョンそのものは異世界というか異空間に存在しています。ですので拡張するのは結構好きにできますね。続いてダンジョンマスターですが、ダンジョンの管理人みたいな感じですね。魔物を雇ったり、拡張したり、アイテムを用意したり、罠を張ったりと結構大変な仕事ですよ。探索者や侵入者を倒すことによって収入を得る感じですかね。難易度とアイテムのバランスで稼ぎが結構変わるそうですよ。ダンジョンマスターのレベルとセンスが現れるみたいですね。ざっとこんな感じですがご理解いただけましたか?」

荒唐無稽な話なのにやたらとすんなり腹落ちしてる。

「何となくわかりました。マンションのオーナーが管理人なのと同じ感じですよね。」

「ご理解の通りです。ただ、先程の説明は概要になりますので、もしダンジョンを購入いただけるのであればマニュアルをお渡ししますので熟読ください。」

「ちなみに表にあったダンジョン以外には無いんですか?」

「えー、我々がダンジョンを扱うのが実に26年ぶりでしてあまり頻繁に取引されるものではないですね。ちなみに前回の売買価格は500,000,000円だったようです。今回のは正直訳ありダンジョンの可能性もあるので強く勧めにくいんですよね。」

激レアが激安って胡散臭いにも程がある。ただダンジョンマスターを4年、大学に通うのと同じ期間頑張れば売却益で生涯獲得収入を超える可能性があると考えれば悪い話でもなさそうだ。

「一つだけ確認させてください。ダンジョンマスターって命の危険はあるんですか?」

「なるほどですね。その点は心配になる部分ですよね。結論から言うとあります。ボスとなりうる魔物などを雇えれば保険になりますが、当社はダンジョンマスターがラスボスとなります。この辺は上手く運営していただいて。としか言いようがないですね。正直なところ。」

「ありがとうございます。」

うーん、リアルに倒されるのはやばいよな。でも、30年近く前で5億だろ。倍とは言わないまでも価格は上がるだろうしチャンスなんだよな。一方で、安すぎなのもリスクか…

「よし、決めた。このダンジョン買います!」

「!!よろしいのですか?」

「はい。ダンジョン購入してダンジョンマスターになります。会社を辞める手続きがあるので、1ヶ月後からマスターになるようなスケジュールで手続きください」

「本当によろしいのですね。売る立場として失格ですが、リスクとリターンを考えて問題なければ私が購入するとか考えませんでしたか?売値を提示された際に訳ありを確信しましたよ。正直なところ。」

「心配してくれてありがとうございます。私、ちょっと人生設計に失敗しているので何処かでリスクは取らないといけないと考え始めたところで、この張り紙が目についたので運命を感じました。この縁を信じようと思います。長谷川さんも親切だし。」

「…わかりました。それでは契約書作りますので少々お待ちください。」


契約書を持ち帰り、翌日署名捺印して不動産屋に向かう。


「長谷川さんをお願いします。昨日の件です。」

「少々お待ちください。…。奥へどうぞ〜。」


昨日と同じ部屋に入って長谷川さんを待つ。


「お待たせしました〜。早速確認させていただきますね。印紙、消印、署名、捺印、割印…と。オッケーですね。1ヶ月後をご希望でしたが、買取なので今日からも1ヶ月後からも変わらないので、今日からご利用いただく事も可能ですよ。ダンジョンの入り口に準備中の案内出しておけば攻略される事もありませんので。」

「細かい事ですが、固定資産税とかは?」

「説明してませんでしたね。ダンジョンに関しては全て免税になります。説明書にも書いてありますが確定申告も不要です。一つだけ、消費アイテムの購入を一般店で行うときは消費税だけ掛かってしまいますのでご理解ください。」

「わかりました。あと、気にしておく事は何かありますか?」

「ダンジョンですが見える方と見えない」方がいまして、普通の方は見えないです。お客様も今まで見たことありませんよね?きっかけがあれば認識できるようになるのですが世の中の99%以上が認識できていないので余り公言しない事をお勧めします。」

「確かに受け入れてたけど見た事ないもんな。わかりました、口外しないように心がけます。では、一回物件を見に行ってきます。」

「そうですね、まずは準備中の看板を早目に設置くださいね。と、あとは説明書の熟読は急ぎお願いします。

最初にダンジョンに入ったらチュートリアルが始まります。この後ご予定があるようでしたら、別の日をお勧めします。最後に、前オーナーからのプレゼントのお渡しと、私どもからの成約のお礼になります。

全オーナーからはこちら…」

金色のコイン(日本の硬貨ではないな)が3枚机に置かれる。

「と、私どもからはこちら…」

こっちは銀色のコインが10枚と、

「と、こちら。」

銀色の大きさが違うコインが10枚、机に置かれた。

「こちらでダンジョンに配置する魔物類やアイテムを入手するためのガチャをまわすことができます。」


ん?ガチャ??


「ガチャはダンジョンマスターだけがまわすことができ、ダンジョン内でイメージする事でいつでも回せます。回す時期によってイベントが行われている事もあります。チュートリアルで使うのでひとまずお待ちください。」

「わかりました。というかわからないことが多いのでチュートリアルで理解したいと思います。ありがとうございました!早速行ってみますね。」


手に入れたダンジョンへ向かった。

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