第六話 建築士
町の人々に道を尋ねながら、俺は建築技術で腕の良いと評判にあるアルバ・スコットと言う人物を探した。その人物を見つけるまではそう長くは掛からなかった。なぜなら、名前を聞けば皆が知っており、とても有名な人物であるとのことだった。これは期待が持てる!
アルバ・スコットは自分で店を開いているとの事で、家族で経営しているらしい。早速そのお店を訪ねてみた。
カランカラン~
俺は店の扉を開ける。そこには、一人の女性が立っていた。彼女は物腰が柔らかい印象で身なりも整っているように見える。
「すみません……。 ここにアルバ・スコットさんはいらっしゃいますか? 」
「どちら様でしょうか? 主人は奥にいますが…… 」
この女性はアルバ・スコットの奥さんのようだった。
「名のるのが遅れてしまいました! アラタレイジです」
「今噂になっている方かしら? 主人を呼びますので、こちらでお待ちになってて」
「分かりました」
5分程すると、奥からアルバ・スコットらしき男が現れた。
「待たせてすまない。 妻から話は聞いたよ。 それで要件は? 」
「腕の良い建築士がここにいると聞いて、俺の家を建てて欲しいんだ」
「それはまた、急だな。 資金はあるのか? 」
「いや、資金は今ある分で、一千万ダンデルは用意できるが…… 足りなければなん
とかするよ」
この間のエルフの件で、五百万ダンデルがギルドカードに送金されていた。
「なるほど…… 」
アルバは険しい表情で考えているようだ。一千万ダンデルでも足りなかったのだろうか。どれくらいあれば、この世界では家を建ててくれるのか俺は知らなかった。とりあえず、今ある有り金を伝えてみたのだ。計画性がないとは言われていたが、考えたって分からないものは出てこないのだ。俺はなんとかなるだろう精神で生きてきたんだ。
「足りなかった…… のか? 」
「いいや。 資金は十分だ! むしろ余るくらいだよ」
「なら、なんでそんなに考えてるんだ? 」
「もらい過ぎるんだよ…… 」
「え!? 」
もらい過ぎるとはどういう意味だろう。お金が貰えて何がいけないのだろうか。俺には疑問ばかりが頭に浮かんでいた。
「レイジ君と言ったね、一つ君に頼みがあるんだが…… 聞いてくれるかい? 」
「なんでしょう? 」
「この国では確かにお金が無くては生きていくことは難しいだろう。働いてお金を稼いでいかなくてはならない。大金を手にするのは嬉しいことだ。誰もがそれを望んでいるに違いないだろう。しかし、オレイン王子が、これ以上貴族や裕福な者を増やさない為に、大金が入った者は国税(毎年国に治めるお金)を増やし、自分たちだけに入ってくるようにしたのさ」
「その、オレイン王子とは何者なんだ? 」
「王子を知らないのか!? 現国王の息子で、国税は王子が取り締まってるのさ」
「国王は何もしないのか? 」
「国王は他の国と交流を深めるとかで、国を留守にすることも多く、実質は息子のオレイン王子に任せている事がほとんどだ! それで、本題なんだが、大金をもらえることは有り難いことだが、もらいすぎて王子に目を付けられちゃ困るからな。半分程で資金は十分だ」
「いいんですか!? 」
「ああ。 構わない! 俺がこの店潰しちまったら、息子に跡を継がせてやれないからな。 その代わり、息子の代になってもここに来てやってはくれないだろうか? 」
「もちろんです」
俺は、アルバさんの申し出を快く受けた。なんでも、近いうちに息子さんに店を譲るつもりでいたらしい。店の改装資金も必要だったらしく、王子に目を付けられない程度にお客から代金をもらい、仕事をしていたのだと言う。
「では、これから宜しくお願いします」
「腕には自信あるからよ! 期待しててくれ」
これで、やっと家を建てる事ができるな。一歩前進した。それにしても、この国の王子は癖がありそうだな。俺も目を付けられてないか不安になってきた。
(今の所何も言われてないから、大丈夫だよね…… )
男は王宮にて、険しい表情を浮かべながら話す。
「これは、早急に対応しなければ…… 」
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