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第二話 はじめての仲間

 眩しい光が嘘のように消えていく。

 目を開けると、そこには今まで見たことのない世界が広がっていた。どこまでも続く草原に、色鮮やかで綺麗な花々が咲いている。建物や人は見当たらない。

 

 「ここはどこなんだ? それにしても空気が澄んでいて気持ちがいいな」


 これが異世界転生というやつなのだろう。漫画やアニメの中の世界だけだと思っていたが、現実にありえるとは驚きだ。しかも良く見ると手が若返っているように見える。鏡がないから分からないが、顔の触った感じも肌に艶があるようだ。体も軽い。20代か10代後半くらいに戻っているようだ。


 「そういえば、あのサタンが言ってた魔法のプレゼントってなんなんだ? 」

 

 やはり、この世界は魔法が使えるのだろうか? 


 「魔法か…… 」


 「そう思ったら、ワクワクしてきたな。でも、使い方も分からないし、魔法については今後調べること にして、先に進むことにしよう」



 俺はとりあえず、人がいそうな村なんかを探す為に歩き出した。人がいたらこの世界について、魔法について分からないことを聞くことにした。


 あれからどのくらい歩いただろうか。時計がないから分からないが、2~3時間は歩いている気分だ。これほど歩いても、人や動物にすら会っていない。俺以外は生きているものはいないのだろうか。思えば、元いた世界では接客業(旅館フロント係)で人と話してばかりだった。ふと、そんなことを懐かしく思えた。そんな事を考えながら歩いていると、ようやく目の前に森が近づいていることに気がつく。


 森に入ると、今までとは違う空気を感じた。体が拒否しているように、冷たい空気が背中にまとわり付いている感じだ。得体のしれない怖さを感じた。

しかし、前に進まなければ道がない。俺は意を決して進むことを決めた。


 森の中枢辺りだろうか、怖さを感じながらも歩いていると、


 ガサッ


 ガサガサッ


 奥の方で音がする。近づいてみると、スライムがいた。俺は驚きすぎて、


 「うわあ!! 」


 気づくと、今まで自分でも聞いたことのないような声が出ていた。

 漫画でしか見たことない生物が今、俺の目の前にいる。しかし、漫画で見慣れてきたスライムとは色が違うような気がするが、気のせいだろうか。イメージでは青だが、こいつは緑だ。俺が知らないだけでこんなスライムもいるのだろう。敵意を向けてくる様子はない為、近づくとスライムも俺に近づいてきた。俺の足にくっついてくる。どうやら俺を気に入ってくれたようだ。俺は生きている生物に会えたのが嬉しくなり、思わずスライムを抱きかかえた。

 

 「お前も俺と一緒に行くか? 」


 俺はスライムに話しかけたが、当然返事はない。しかし、俺には喜んでいるように見えた。俺に初めての仲間ができたのだ。


 「そういえば、お前に名前をつけなくちゃな」


 「ん~」


 「スライムの頭文字をとって、お前はスーにしよう」


 「よろしくなスー」


 スライムのスーと共に森を歩いていると、今度はゴブリンの群れに出会った。ゴブリンは全部で5体。スーに慣れた俺はゴブリンには驚かなくなっていた。だが、スーと違うのは、ゴブリンが敵意を向けてきているという事だ。

 

 「一旦、落ち着こう。俺はお前たちに危害を加えるつもりはないんだ」


 ゴブリン達に伝えてみるが、敵意は向けられたままだ。


 「話ができるとは思ってないけど、戦うって言っても俺になにができるんだ」


 そういえば、魔法の事を忘れていたが、使い方を知らない。こんな時、魔法が使えたらいいなと思ってしまう。


 「手から炎を出すなんて…… そんな簡単に魔法が使えるわけ無いよな」


 「え!? 」


 小さいが手から炎が出ている。イメージだけで魔法は使えるのだろうか。訳が分からないが、今はこれを利用するしかないようだ。炎を飛ばすイメージで、ゴブリンに向けて炎が出ている手を向けた。すると、炎の威力が増し、ゴブリン5体に命中した。


 「やった…… 」


 ゴブリンはその場に倒れる。しかし、1体のゴブリンは体が傷つきながらも倒れることはなく、ふらつきながらも立っている。他のゴブリンも息はあるようだ。


 「コロセ…… 」


 「話せるのか!! 」


 俺は魔法が使えたことよりもゴブリンが話せることのほうが驚いた。会話ができるのであれば、戦いたくはなかった。友好的にその場を収めたかったのだ。


 「殺してくれ…… 負けているも同然だ!留めを刺してくれ」


 負けたら留めを刺さなければいけないのだろうか。俺は折角出会えたゴブリンを殺したくはない。この世界に来て初めて会話ができる存在と会えたのだから。


 「お前たちを殺したくはない!おれの仲間にならないか? 」


 「いいのか…… 」


 「もちろんさ! おれの名前はアラタレイジだ」

  

 「ところでお前たちに名前はあるのか? 」


 「そんなものはない」


 「それは呼ぶのに困るからなー 」


 「名前をつけよう、その前にお前たちの体をなんとかしないとな」


 回復魔法もあるのだろうか。俺は回復するイメージでやってみることにした。すると、ゴブリンの体が緑に光り、みるみるうちに回復していくのが分かった。ゴブリン全員を回復させ、名前をつけることにした。だが、名前が浮かばない。「イチ」 「ニー」 「サン」 「ヨン」 「ゴー」にした。なんて適当な名前の付け方だろう。もし、俺がそんな名前を付けられていたら、自分を嫌いになっていたかもしれないな。だが、彼らは元々名前すらなかったようで、名前を付けられて喜んでいる。


 「子分にまでしていただいて、名前もくださったアラタ様に感謝しか

 ありません」


 「どこまでもついていきます」


 イチ、サンが答える。

 

 「そんな子分だなんて、仲間になったんだから、おれのことはレイジでいいよ」


 「では、レイジ様」


 「お供いたします」


 「…… 」


 ニー、ヨン、ゴーが会話に加わった。

 

 「ゴーは話さないのですが、お供すると言っています」


 「そうなのか? まあ、よろしく頼むよ」


 俺は新たな仲間と共に先に進むことにするのだった。魔法の仕組みについては俺も分からないことが多いが、ゴブリン達によると、魔法は本来、魔力を持った適正があるものしか使えないのだという。使い方はあまり知られてはいないが、魔法を使える者の弟子になったり、親から子へ代々受け継がれていくものなのだという。魔法を使うには基本的に詠唱するみたいだが、俺はなぜだか、イメージや思い浮かべるだけで使用できている。詠唱もしていない。これは異世界から来たからなのだろうか。謎は深まるばかりだった。





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