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協議

「...成程、そういうことですか...」


 ディルガ将軍は納得したらしく、なんども頷いている。

 一方、その場に居合わせた何名かの貴族は分かっていないような表情をしている。


「我らが帝国で王位争いをしている誰かと協力し、まずはアルディア砦に向かう兵士達を殲滅、そしてそれを協力者の功績にする。ここまではいいか?」


 国王の丁寧な説明に、殆どの貴族が理解を示した。


「協力者の功績にすれば、その後その者が皇帝になる確率が上がる...仮にその者が失敗して別の者が皇帝になったとしても、全てをその者の責任にして俺達はしらばっくれてれば良いって事ですよね?」


 俺の追加の説明に、国王は同意の念を示す。


「出来れば王位争いで非常に有利な者か、全く勝ち目がない者かに協力を要請したいが...」

「陛下、有利な者に協力するのは分かりますが、勝ち目が無い者に協力したいとは...?」

「勝ち目が無い者ならこちらの条件を飲む事でしか生き残る術が無いのだから、どんな要求でも通せるだろう。流石に帝国領土を全て渡せ、とは言えないだろうが、かつてどの国も結べなかった不可侵攻条約を結ぶことが出来るかもしれん。軍の到着まで数週間はかかりそうだし、協力を取り付ける時間はあるだろう」


 貴族からの質問に、国王はそう答えた。


「...まあこんな所だろう。すぐさま協議を始める。貴族の者達に召集を掛けよ!」


 国王はそう配下の者に指示を出した。



 アルカディア王国の政治は、一見多数決で決めているように見えるが、本質は全く違う。

 政治の投票がかなり異常なのだ。

 国王以外の貴族や大臣は一票だけだが、国王だけは投票権を持つ人間の数-1の票を持っている。

 この国は半分くらい勇者に依存しているのだが、そんな勇者でさえも投票権は1。

 つまり、国王以外全ての人間が国王に反対しないと国王側の意見が通ってしまう、と言う、投票が全く意味を成していない政治方法だ。

 これにより、国王が政治の実権を握っているが、仮に国王以外全員が反対するほどの悪政ならば実行はされない、と言う申し訳程度の処置はあるようだ。



 協議では国王以外の王族も、票は一つだが投票に参加が出来る。

 協議が始まった。まずは帝国からの軍を追い払う為にそのまま戦をするか、帝国の王位継承者候補に協力をするか、が協議に掛けられた。これは勿論と言うべきか、ほぼ全ての票が協力の方に集まった。

 ここからが問題だ。

 王位争いに有利な者か、不利な者に着くかで議論が巻き起こったのだ。


 有利派曰く、「有利な者に着き、多少扱いが悪くとも、安定した帝国での立場を固めるべき」

 不利派曰く、「長い目で見ればリスクを犯してでも劣勢な者に着くべき、有利な者と手を組むと切り捨てられる危険がある。またこちらが切り捨てる事も出来るので高リターン低リスクを狙うべき」


 だそうだ。

 エルの父親も協議に参加しているが、どうやら不利派のようだ。

 ちなみに俺も不利派だな。だって俺らの国に勇者ことエルがいるじゃん?

 エルが何とかしてくれるだろ。

 それにブーストのおかげで俺もエルと同じくらいの力はある筈だし...。

 まあ結局国王が選んだ方に傾く筈だから、国王次第だろう。


 

 そして、投票の結果、俺達は王位争いで不利な立場の候補者と協力する方針に決まった。

 しかし、協力を誰が取り付け、また何をするのか。と言う議論になった。

 すると、今まで黙っていた国王がいきなり話し始めた。


「儂はノアルトに協力に関する全ての事を任せたいと思う」


  それを聞くなり、会場が一気にざわつき始めた。


「恐れながら陛下、ノアルト様に全てを任せるとは...」

「そのままの意味だ。ノアルトが帝国に行き、協力の取り付けからその者の護衛や功績の献上など、全てを任せる」

「しかし! ノアルト様はアルカディア王国王子! その身に何かあったらこの国は存続の危機に立たされます!」

「ノアルトはSランク冒険者だ。これが何を意味するか分からない者は居ないな? まだ心配だと言うのならイラエス勇者家のエル・イラエスを護衛に付けても良い」


 Sランク冒険者。それは、大陸に一桁しか居ない異常なまでの強さを持った冒険者の事。

 それは、エル等勇者に匹敵する程の力がある。

 そんな称号を俺は持っている。

 流石に単騎でドラゴンを倒しただけでSランク認定は甘いんじゃないかな...とは思うが。

 そんな称号を持ってるから安心して! それでも納得できないなら勇者護衛にするわ! ということだろう。


「な...勇者家の者までこの国から離れてしまうと困ります!」

「ならばノアルトが行くべきであろう。逆に聞くが、ノアルト以上の適役が居るのか?」


 国王がそう問うと、一気に沈黙が訪れる。

 そりゃそうだ。別国の王子が来たとなれば邪険には扱えないし、他の候補者から手出しされる可能性も減るのだからな。


 結果、俺が帝国に出向き、誰かと手を組み戻って来る、ということに決まったのだった。

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