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解放

 気が付いたら寝ていてしまったようだ。

 差し込んでいた日差しはオレンジ色に変化している。

 横ではラミュが静かに寝息を立てている。

 ...衝動買いしてしまったこの子の処遇を決めなくては。


 この子を買ったのは、この子が犯罪を犯した者ではなかったからだ。

 とは言え、奴隷を解放させるのは国家権力を持っても難しいものだ。

 だが、見殺しには出来なかった。それだけのことだ。後悔はしていない。

 ...そうだ。






 古代魔法。その中でも制約魔法(ギアスマジック)にブーストを掛ける。制約魔法(ギアスマジック)とは、その名の通り、制約を掛ける魔法だ。この魔法の魔法陣が奴隷の首輪には大量に入れられている。複雑に絡み合う魔法陣を、絡まった糸を解くように一つずつ解除していく。

 何が面倒くさいって、ちょっとでもミスをしたら即電撃を流す魔法陣が発動することだ。

 ブーストを使っても魔法の解除にそこそこ時間が掛かるとは...昔の人々はかなり暇だったのだろう。多分。

 


 なんとか全ての魔法の解除に成功し、後は首輪を外すだけ、と言う所でラミュがもぞもぞと動き始めた。


「ん、んん...」

「お、起きたか」

「あ...すみません...」

「謝る必要はない。それと...ラミュ、俺の所で働いてくれるか?」

「そ、それは? 私は奴隷で...」

「いや、お前はもう奴隷なんかじゃない。お前は奴隷なんかになる必要はないんだからな」


 そう言いながら、ラミュの首元にあった首輪を取り除く。


「あ...」

「何度でも言おう。お前はもう奴隷じゃない、自由なんだ」


 それを見ていたラミュの口から小さな声が漏れる。

 それに加えてラミュの目からも数滴涙が零れ落ちる。

 それもそうだろう。経緯は知らないが、生かすも殺すも主人次第で、命令に逆らえない、更には一生奴隷の首輪が外れることはない...と、その全てから解放されたのだから。


「でも...どうして私なんかを...」


 ラミュはまだ信じられない、と言った様子だ。


「決まっているじゃないか。君が犯罪を犯したような娘じゃないからさ」


 ラミュの震える肩に手を置き、ラミュが落ち着くまで頭を撫でた。


「私...怖かったんです。王族は慈悲もなく奴隷をいたぶって喜ぶような人種だって、周りのお姉さん達が話しているのを聞いたから...」


 そりゃあまた酷い偏見だな。


「でも...ご主人様は違いました! 不思議な力で私を解放してくれました!」


 落ち着きを取り戻したラミュは先ほどまでとは打って変わって、饒舌になったな。


「評価してくれるのは嬉しいんだが...ご主人様って言うのは止めてくれないか...」

「あ、すみません...。じゃあノア様って呼びますね!」


 お、おぉ。いきなり攻めた呼び方をしてくれるじゃないか。


「それと...ノア様の所で働くって言うのはどういう事なんですか?」

「ああ、それはだな...俺専属のメイドになって欲しいんだが...いかんせん俺は王宮に居た時間が短かったりまずそんなに好かれている訳じゃないからお付きの従者が居なくてなかなかに寂しいんだよな...。嫌なら断ってくれて――」

「勿論! ノア様の下で働きたいです! それにしてもこんな素晴らしい王子様を好む人が居ないって相当おかしいですよ?」


 即決からのベタ褒め。なんだこれ。奴隷の時と解放した後とで人格変わり過ぎだろ、俺何か魔法解除ガバったか?

 ...ハ! これを利用したら王宮中全ての人間が俺の事スゲー! カッケー! の軍団になるのでは?

 無理か。


「でもノア様はどうして私が奴隷だった時にその...シなかったのですか? 奴隷を買うってことはそう言う事だって聞いているんですが...」


 ちょっと。なんでこんな幼い少女がそんな含みのある言い方をするんですかねぇ?


「それはラミュがしっかりした奴隷じゃなかったし、まだ子供だからだな」


 まだ子供なので欲情しない&したらダメ、だからな。

 それに今まで自分でもびっくりするくらい何とかなってきたし、これからも大丈夫だろ。


「...そうですか」

「...えーっと、ラミュは俺が雇ってきたメイドって事にするぞ。明日から誰かにメイドって何すればいいのか教えて貰えるようにしておくから、明日から頑張ってくれ」


 そう言ってから、暫く無言の時間が流れた。

 たまに起きるこの時間は一体なんなんだ?


「...ノア様はどうやって私の首輪を――」

「失礼します! ノアルト様、入ってもよろしいでしょうか?」


 大きなノックと共に、兵士の声がする。

 ...幼女と一緒に自室に居るのはマズくないか?


「ラミュ、絶対に声を出したり動いたりするなよ?」


 とラミュに言う。

 ラミュもそれに無言で頷き答えた。

 それを確認してから幻術魔法にブーストを掛け、ラミュに不可視の魔法を掛ける。

 不可視の魔法は激しく動いたり大声を出さない限り姿を隠せるというかなり強力な魔法だ。


「入ってこい」

「失礼します!」


 大声と共に兵士が俺の部屋に入って来る。


「国王陛下様から謁見の間に顔をみせるようにとの命令が入っております! これより準備をお願いします!」


 招集...?

 もしかすると、もしかするかもしれない。


「ああ。すぐに行くと伝えてくれ」

「はっ!」


 兵士は俺の声を聴くなり、踵を返して去って行った。

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