そのきゅう アタシ雪女 ウィルの…なに?
アタシ雪女。最近、アタシの故郷、万年雪山にきたアークレッドのくりくりお目目の可愛い少年、ウィル・フィル。
アークレッドからイェティーって雪男のお見合い相手探しにきたと、
雪ババアにカチンカチンに凍らせられたのに、雪がとかれたら言うお馬鹿。
アタシたちの雪花術もヤーガバーバのお守りだかなんだかで、あっという間にといてしまう。
そのわりに、攻撃術なんて持ってない。
持っていたのはひとつだけ。大柄けむくじゃらのむさくるしい大男の絵姿。
たったひとりで大山脈アルバで木こりしてる、ハンター兼業の山の管理人。
なんだそりゃ。
身体にいい薬膳鍋たべながら、あまりに必死に口説くから、
むらにたったひとりの若い娘、きちゃいましたよ、アークレッド。
顔合わせで、一目惚れ、優しいその性格に、二度ぼれ、逞しい背中に、三度ぼれ。
ーコホン。
とにかくアタシは毎日バッピー、最近つわりがちょっとだけきついけど、
優しいあの人困らないようにっこり笑って送り出す。
だけど悪阻は悪阻。
くるしいわ。
吐くからなんにもたべたくない。
でも、たべないときついしー、なんてことを思っていたら。
そとからブンブン音がする。
そう言えば、マリア先生が作るって言ってたヘリコプターってヤツ、もうできたのかしら?と窓をあけた。
くりくりおめめの金色鱗。
ブンブンと幼い羽をはばたかせ、両手でもつ鍋、アタシにどーぞとくれるの?
「えっと…、これは?」
「リーナから雪さんに差し入れだって。冷たいままでもってこれたよ、羽虫のおかげで」
ニコニコ笑顔のウィル・フィル。
ブンブン、ブンブン空飛ぶ羽虫。
ペッとばかりに氷吐き出す、羽虫?
とりあえず鍋からはいい匂い。あけたらなおさらいい匂い。
羽虫が興味津々覗き込み。
「あっ、ダメだよ、タマ,それは雪さんのなんだからタマは食べちゃダメ」
なんでタマ?えっ、?リオンの海竜王の息子がポチだから?ーやめなさい」
とりあえず、タマと呼ぶなはやめさせた。
あとでマリアに苦情をいわねば。
あいつの教育やっぱおかしい。
卵料理はないけれど、養蜂をやってる旦那様。蜂蜜飴ならたくさんあるの。
ヤーガバーバにも持って行ってね。
あらら、一気にひとびん羽虫が食べて、容赦なくウィルはあたまをはり飛ばしたわ。
そうね、しつけは大事よ。
私もうまれたら肝に銘じるわ。
ブンブン、ブンブン、空飛ぶ羽虫。
またひとまわり大きくなってる。
「なんだ、あれ?」
ようやく帰宅の旦那様、ウィルを見つけてあんぐり口が開く。
結構大きな旦那様。
それより、大きな羽虫。
ブンブンブンブン飛んでいる。
、
ご機嫌に炎と吹雪をはきながら。
あんだけ大きくなったなら、乗ればいいのにとおもうアタシと、旦那。
「まあ、ウィルだし、な?」
「ええ、そうよね。今日はリーナが差し入れしてくれたのよ」
アタシら羽虫より夕飯。里には滅多に降りれないから、今夜はご馳走。
リーナの料理は世界一。
正直、ウィルはどうでもいいけど、
「相変わらず、へんなものに囲まれてるなあ、アイツ」
あきれた旦那さんに激しく同意。
キンキンに冷えたスープは絶品だ。
ウィルが羽虫をてなづけたなら、定期配達たのもうかな。
ブンブンブンブン羽虫。
次見るときは生体かな。
アタシとマリアでタマは阻止してやるよ。
空の王様、ゴールデンドラゴンの、
名前がタマじゃ、なんか、やだ。