そのじゅういち ヤーガバーバと羽虫
ヤーガバーバは世界の魔女が集う村である。
世界をたった一人で破滅に追い込む魔女もいれば、
逆にたった一人で救う魔女もいる。
白い魔女も黒い魔女も、混在する村。
大山脈アルバにある稀有な村。
そんなヤーガバーバに滅多に来ない来客がやってきた。
やたらでっかい羽虫に乗って。
金色に輝くからだに口から変わりばんこに炎と吹雪を吐き出す。
金色トカゲに羽が生えたヤツ。
世界屈指の魔女たちが、そいつを知らないはずがない。
千年前の大魔女が、とある大陸から子供の番をぬすんできてた。
どうにか飼いならせないかと
山脈アルバには連れてきたものの、そこから野放。
所詮、結局、野生とは意志が通らぬと思っていたら、
そうか。この手があったのか!
魔女たち以上に常識がないアークレッド。
その王子ウィル・フィル。
こいつなら、きっとやってくれるはず。
ーなにを?
「えっ?羽虫の繁殖?嫌だよ、卵すぐうまれるし、うまれた羽虫は不味そうだし、えっ?そら?とんだらなんか得なの?戦争で勝つ?いらないよ。アークレッド戦争しないし。あっ、ヤーガバーバ戦争する気?」
黒曜石のくりくりおめめが魔女たちを珍しく厳しく見る。
慌ててブンブン魔女たちは首を振った。
ーわるいことはしない。
アークレッドのたったひとつの法律は、魔女たちにだってあてはまる。
お仕置き人は魔術師たちヤーがジージー。あいつら鬼畜。
嬉々としていろんな人体魔女実験されてしまう。
反対ならいいけど、魔女は自分から痛い思いしたくない。
絶対、いやだ
それならば、
とりあえず、ウィルにいまは、羽虫の持ち主お前だとつたえた。
「そっかあ、迷子なんだねー。じゃあ、ティアと一緒に名前考えようね、すんごく可愛い子だからすぐ気ないるよ。僕の婚約者だから」
羽虫に笑うウィル・フィル。
まあ、いっか、とヤーガバーバの魔女たち。
全員、腹黒お姫様は知っている。
アイツに任せとけば世界は平和。
世界が平和なら魔女も、平和。
大山脈アルバの頂上のヤーガバーバ村で、今日も今日とて、魔女たは、自分の趣味に没頭する。
けっか。いくつもの大過かわしてきたけれど、アークレッドのほんわか民が、笑っていればそれでいい。
今日も今日とて臭い鍋。引っ掻き回して健康祈願。




