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無理ゲークリアしたらゾンビ世界になってしまったのですが*  作者: 夢乃
第4章【ステージ1.5/サチ&リョウ】
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第92話【生徒会長様はアーノ〇ド・シュ〇ルツェネッガーですか?】

 そしてバリケードによって遠回りを重ねた八柳は、ひときわ目立つ校長室の扉をノックする。中から「入って来なさい」と声をかけられ、遠慮すること無くその扉を開けた。


「こんにちは、校長先生」


「待っていたよ、八柳君。この状況の対処は君がしているんだろう?」


 高価な椅子にふんぞり返っているスキンヘッドの校長先生にその場で一礼をしてゆっくりと目を合わせた。この部屋で、純粋に生徒のためか、もしくはその高価な椅子に座るためなのかは知らないが、教育に人生を捧げてきた人間にしては随分と呑気なものだと思う。


 そういった地位や名誉を、このパンデミックで全て失ったと言うのに。


 この場に立っているのは八柳と校長先生だけで、他の教職員は八柳の率いる生徒会の指示で校内の一般生徒達をまとめていた。今後の行動についての指示が出せるのは、校長先生では無く……八柳後生だ。


 どうやらそういった事を、この馬鹿は理解していないらしい。


「そうです。それにしてもずいぶん冷静ですね。こんな状況で混乱しないのですか?」


「混乱? しているとも。君の校内放送の指示でテレビをつけた時、既に世界中が大混乱におちいっていたのだから。それにしても八柳君……君の迅速な対応には感謝する」


 岡部を生徒会室に引きずり込んだあと、そのまま放送室へと足を運んだ八柳は、全ての教室に設置されているテレビを付けるよう指示を出し、この世界で起きているパンデミックについて全校生徒に知らせた。そのまま校内にゾンビが侵入しないよう机や椅子でバリケードを作るように指示を出し、校内で混乱する一部の生徒を暴力と話術で黙らせる。


 そして全ての教室を視察しながら細かい指示を生徒会のメンバーやクラスの中心人物に任せていき、短い時間で混乱を最小限に抑えた。考える時間を教職員に与えなかったが故に、校長との会話もこれが初となる。


「いえ、独断で行動したことにつきまして謝罪いたします」


「気にしなくていい。それより今後についての相談だが、校内に残っている生徒達を君がどうしていくつもりなのか聞きたい」


「そうですね。まず、ある程度の安全が保障されるまでは教師や生徒にはこの学校にいてもらいたいですね。体育教師の岡部先生と一部の生徒が暴れ出しましたので、学校外は危険だと判断します」


「そうだろうな。しかし、食料などの問題もある」


「それにつきましては、食料を搬送する学食用のトラックを確保しました。他の学校に運送する予定の食料も確保できましたので、5日は持ちます。しかし、帰宅を希望する生徒には、不本意ではありますが帰宅を許可しましょう」


 校長の目つきが鋭さを増していく。


「ほう。見捨てると?」


「言い方が正しくありません。家族の元へ帰りたがっている生徒の希望を叶えるだけです……それと、少々危険ではありますが一部の教職員や生徒には町に出て食料の確保をお願いする予定です。いずれやらなくてはならないことですから、もちろん……私も参加しますよ」


「――君がいなくなった後の学校をどうする? 私がまとめればよいのか?」


「いいえ、その必要はありません。私の予定では優れた力を持った生徒が確保できる予定ですので。校長先生には教職員をまとめていただければと思います。」


「分かった。それで、その生徒とは?」


「予定ですので、確定してからご報告させていただきたい」


「そうか、分かった。……この学校も長くは持たないだろうな」


「そうかもしれませんね。しかし、出来る限りのことはしたいと思います。国も動いているので、いずれは沈静化するでしょう。それまで安全が確保できれば良いのです。食料確保と同時に、学校外で安全な場所も確保できればと思います」


 しばらく沈黙した時間が続く。そして考える素振りを取った後に、ため息とともに緊張感が緩む気配を感じた。


「ふぅ、どうやら今後は八柳君に任せた方がいいようだ。君のような生徒がこの学校にいたことを、私は誇らしく思う。色々と苦労をかけると思うがよろしく頼む」


「いいえ、生徒会長として当然の責務です」


「謙遜しなくてもいい。まだ計画としては荒い部分もあるが、このイレギュラーな事件にここまでの対応をしたんだ。八柳君なら上手くやってのけるだろう」


「ありがとうございます。――それでは今後の予定もございますので、ここら辺で失礼いたします。しばらくは校長先生もゆっくりお過ごしください。なにかありましたら、生徒会室まで来ていただければ対応いたします」


「そうしよう」


 一礼して背を向けると、八柳は校長室を後にした。


 街中を覆いつくすほどの警報はその会話から数時間後にプツンっと消えてしまい、静まり返った街中からはゾンビの呻き声が聞こえる。しかし、静まり返った学校にゾンビ達が集まることはなかった。


 ゾンビは音に反応すると生徒や教師に伝えていたからだ。学校では私語厳禁が義務付けられており、命がかかった状況ではそれらが徹底されていた。


 そしてその日の夜――全校生徒の四分の一が帰宅を希望した。学校へ戻らないことを条件に東西南北のそれぞれから分断するように校外へと出していき、その数十分後には叫び声と悲鳴が街中を覆いつくすように聞こえる。


 ゾンビは群れを成すように帰宅を希望した生徒達へ集まり、不思議と学校からゾンビ全体が離れていく。そんな光景を夜空が見える学校の屋上から眺めていた。


 不思議だ。


 一部の生徒に安全だと思い込ませたルートを用意したからだろうか?


 計算通りに進んでいるなら学校へ戻るルートはゾンビに塞がれ、走りながら学校から離れている頃だろう。帰宅を希望した生徒は、アニメや映画や小説に出てくるパンデミックを見過ぎていたのだろうか?


 安全な場所から離れて少数で生きていくなんて、そんなことが出来る人間は化け物か天才だけだ。家族に会いたいとか、恋人が待ってるとか、ここにいてもいずれジリ貧になるだけだとか、そんな胆略的な思考で生きるための糸を自ら切るなんて馬鹿だよ。


「同じ学校の生徒が次々に死んでいく……でも私は生きてる。あぁ、人間はなんて平等じゃないんだろう。多分、最初に手を上げた『だけ』の人間が歴史を刻むと同時に誰の手にも届かない存在になるに違いない。私はただ、今日だけを頑張った。今日、あの瞬間に前へ出ただけ。でもたった一日で私はこの学校の頂点に立ってしまった……本当にくだらない」


「「――……」」


 そんなことを言いながら、二人の少年を見つめる。


「そう思わない? サボりが大好きなヤンチャ君。トイレを破壊したお馬鹿さんがどっちなのか教えてもらっていい?」


「「――……こいつです」」


 リョウとトオルは互いのことを指で指し合った。そしてどちらの表情も今まで以上に緊張が走っている。何故なら、目の前にいるのはこの学校の生徒会長であり、思考や行動が武勇伝の塊のようなお方だからだ。


「「八柳先輩」」


「随分と私から逃げ回ってたみたいだね? リョウ君とトオル君……君達の目撃情報が他の生徒からいくつも届いてきたよ。可笑しいよね? だって……今日君達は欠席扱いになってるのに」


 リョウの視線とトオルの視線が重なり、アイコンタクトで会話を進める。


≪おい、トオル! 学校から抜け出してお前の家に行く予定だったのに何でこんなことになってんだよ!?≫


≪仕方ねぇーだろ!? 学校中がバリケードだらけで、外に出るための通路は教師や先輩に守らせてて、交渉しても全然外に出してくれねーんだもん。クラスでなんか固まってるし、俺らのクラスは壊滅してたじゃねーか!≫


≪何でそれで屋上で一夜を過ごすなんて馬鹿な発想に至ったんだよ!? よりによって学校最強の生徒会長様に睨まれちまったぞ。学校中をうろちょろしてる時に聞いたんだが、生徒を何人かプールに沈めて殺したらしいぞ?≫


≪それな……てか、全校生徒が見てる前で体育教師の岡部をすでに車で引き殺してんぞ!? 俺ら、マジで殺されんじゃね?≫


≪トオル、トイレ破壊したのお前ってことにしといてくれない? 今度、何でも買ってやるから……頼むよ≫


≪リョウ、お前ちゃっかり俺のせいにしただろ!? 今すぐてめぇを殺して俺も死ぬぞ≫


≪それ、本当になりそうだからやめてくれ。生徒会長様に殺されたら一生呪ってやる……ゾンビがいるんだから幽霊や宇宙人がいても可笑しくない。今の俺はそれを信じるぞ≫


≪なんか覚醒しそうだな≫


≪このメリケンサックですでに覚醒済みだっての。最悪、今の俺なら生徒会長様に勝てる可能性がある≫


≪その手があったか!?≫


「二人とも声に出てるよ? それってアイコンタクトじゃなくて、小声で喋るって言うんだけど……それにお姉さん、ちょっと悲しいな。みんなのために頑張ったのに人殺し扱いは無いと思うけど?」


「「ぁ……」」

((今日、俺はこの人に殺されるかもしれません))


「それにそのかっこいい手袋? ――私も興味あるなぁ。なんでそれがあると私に勝てる可能性があるのかな……鉄が付いてるみたいだけど、メリケンサックを付けただけのヤンチャ君に負けるほど、私――弱くないよ?」


「「ぁ、すいません。調子乗りました……」」

((今日、俺はこの人に殺されます))


「とりあえず、トイレの壁に風穴を空けたのが本当に君達か――腕試ししてみたくなっちゃたよ。少しだけお姉さんのわがままに付き合って」


 八柳はブレザーを脱ぎ、ワイシャツの裾をまくり上げる。リョウとトオルは視線を八柳の胸の辺りに集中させ、ギリギリ透けて見えるブラジャーの色について考えていた。可愛らしいピンク色の下着は、性格から考えるとギャップ萌えだ。


「なぁリョウ。俺さ、生徒会長になら殺されてもいいかも」

「ごめん、俺もちょっと思った。普通に可愛いもん」


「あれれ、二人ともどこ見てるの?」


「「おっぱいです!」」


 頬を赤らめながら両腕で胸の辺りを隠す仕草がまた可愛らしい。ポニーテールでしっかりとした風格があるからだろうか? ギャップの破壊力も武勇伝級だ。


「ん~。死にたい?」


 しかし、その表情は一瞬で凍り付く。


 何故なら、まくられた裾から見える腕が――「「アーノ〇ド・シュ〇ルツェネッガーかよ」」――力を入れると同時に太さを増したからだ。『八柳家』という財閥の娘であるが故に、凡人では決してたどり着けない圧倒的な才を有する。


 それは『神月家』・『川村家』に並ぶ、【四大天道】に名を連ねた崇高な血筋を受け継ぐ家柄の一つ。しかし、この話はするだけ無駄である。所詮は過去の栄光であり、それは元をたどれば二つの家名を受け継いだ伝承者に過ぎない。


 天道――『天能家』と『道徳家』という今は存在しない過去の恋物語だ。この時代に、その家名は既に存在しない。それはどの世界線でも変わらない、確定した事実なのだから。


「それじゃ、少しだけ手合わせお願いね」


「「本当に、勘弁してください!」」


読んでいただきありがとうございます!

ちょっと、資格勉強をしておりましてなかなか投稿出来ず申し訳ございません。

Novelismとかいうサイトにもこの小説を試しに投稿したんですが、何か今……ブックマークだと日間ランキング1位叩き出してて笑っちゃってます。

まぁ、一応リンクだけhttps://novelism.jp/novel/cODrpgZGSDuxdaohGFSXlA/

内容変わらないですが……

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