第83話【森根サチとクリムゾニック①】
踏み出される足が地面に接触した瞬間、激しい衝撃と共に瓦礫や柱が浮かび上がる。そして膝を伸ばすと同時に、サチが残像となってその場から姿を消した。
現れるのは一瞬。
それは『雷』を彷彿とさせる速度だ。
鋭い目つきと頬を赤らめた表情をしており、コンクリート地面を切り裂きながらクリムゾニックの正面に姿を現した。そのまま握りしめていた雷切を振り上げる。
しかし、クリムゾニックはその斬撃を指先で受け止めた。
――バキ!
「「!?」」
――カラン! カラカラカラ。
斬撃を指先で止められたことにサチは驚愕しており、同族が自分に対して攻撃的な行動を取ったことにクリムゾニックは混乱する。その一瞬の攻防でサチの両手は折れてしまい、雷切が地面に落ちた。
そして互いに動きを止めて一貫性のない会話を始める。
「ドゥイウ、ツモォリデス?」
「分からない。あなたを殺さないといけない気がする」
「リカイデキィナイ、イレギュラガハッセェイ」
「あなたを殺しちゃいけない?」
「ドウゾクワァ、コロシテワァイケマセェンデスヨ?」
「そうなの? でも殺さないといけないルールがある気がする」
「アイリスサマ、ツレテイク」
「アイリス様。人名? それとも名所?」
「コロシヌスカ?」
「それを言うなら、殺すか死ぬ? でしょ」
「オボエマス」
「よかった。それじゃぁ、殺すよ?」
「ワカリマスタ」
その言葉を最後に、サチの鋭い蹴りがクリムゾニックの頭を吹き飛ばす。
空気を切り裂くような音と共に、吹き飛ぶのはサチの左足だ。
蹴りでクリムゾニックの頭を吹き飛ばすのはいいが、その衝撃で自らの左足が引き千切れては意味がない。頭から噴水のように血が噴き出し、左足から滝のように血が流れ出る。そして互いの血液と皮膚が沸騰を始めて、数秒後には再生が完了していた。
それは言ってしまえば化け物同士の挨拶だ。
ミヌティックドックウイルスに感染しているため、肉体の損傷はすでに軽傷以下の扱いとなっている。本来であれば『脳の処理』が『肉体の書き換え』に追い付かず、ゾンビのようになってしまうのだが、サチは記憶を失っていても脳の処理は正常に行われていた。
天使の羽を使用していないのに。
そして天使の羽とは、簡単に説明してしまえば『ミヌティックドックウイルスを分解しながら脳の処理速度を促進』する物であり、効力にはそれぞれ個人差が出てしまう。それを天能リアは『適合率』と総称していた。
クリムゾニックの周囲を飛び回っている無数の目が見開かれ、あらゆる角度からサチの姿を観察している。そしてサチがイレギュラーな存在であることを理解した上で、アイリス・時雨の元へ連れていく事を決めた。
硬く握りしめられた左腕をサチへ伸ばす。
その左腕が振り上げられた瞬間に顎から鼻の骨までが粉々に砕け散り、顔の原型を留めないほどの衝撃がサチを襲った。両目がその勢いで吹き飛び、体中を持ち上げられる感覚と首の骨が折れる音。そして体と頭が切り離された冷たさが脳に伝わる。
サチは自らの顎が砕かれている間に地面に落ちている雷切を足の指先で掴み取っていた。そのまま視覚を失い、浮遊感がサチの体中を包み込む。
顎を強く殴られたサチは、その勢いで空中へと飛び上がった。
高さはビルの二十階に相当するだろうか。
そのあとクリムゾニックはオーケストラの指揮者がごとく両手を素早く動かしながら、空中を飛び回っている無数の目を自由自在に操る。そして視線と視線が重なる直線状に『プラズマレーザー』が生成された。
「コレデ、アナァタヲスクエマス」
そして両手を振り上げると同時に、プラズマレーザーを射出している無数の目がサチの元へと向かった。サチの肉体はすでに再生しており、瞳を激しく動かしながら飛び上がってくるプラズマレーザーを見て不敵な笑みを浮かべる。
「あぁ、何だろう? この感覚が好き」
(気持ちいい、気持ちいい)
足の指先で持っていた雷切を空中で手に持ち替えて、そのままサチはプラズマレーザーを雷切で切り裂いた。不規則に動き回るレーザーは雷切の刀身が接触すると同時に霧散して消える。
そのままサチは落下しながら全てのプラズマレーザーを切り裂き、地面に激しい音をたてながら着地した。
「ナ!? ――アリエナイ」
「あ、あぁ!? 思い出した。記憶が戻ってる!」
クリムゾニックは理解していなかったが『雷切は電気を吸収して操る武器』であり、その刀身に再び電気を帯びていく。それと同時にサチの体中に電流が流れていき、フラッシュバックしたように失った記憶が戻り始めた。
そしてサチは気付いていない。
脳の処理を行う電気信号を雷切の電力を使って制御していたことに。
故に現在のサチはゾンビや化け物と同種あり、雷切に電気を帯びている間だけ脳を完璧に制御できる。記憶の継続的な制御を行うためには、雷切を常に充電していなければならない。
つまり、雷切の刀身から電気が消えた瞬間――再び記憶が消える。
そして森根サチが持っている雷切は、元々『六本の刀』だった。
それを熱意リョウが桜井ナナとの関係者と言うことで『神月家』から受け取り、天能リアの研究によって生み出された物だ。受け取るまでの経緯については川村家の娘である【川村サキ】と言う少女の話をしなければならないので、ここでは割愛する。
武器が様々な物語と繋がり、一つの断片的なピースを生み出す。
サチは着地と同時に直進すると、雷切でクリムゾニックに切りかかった。そしてその斬撃は左腕で受け止められるが、「そんなのぉ~知るかぁぁぁああ!」という一言と共にクリムゾニックの左腕ごと両断する。
周囲に火花が舞い散り、雷光と共に見せる光景は芸術に匹敵した。
読んでいただきありがとうございます。
もしかすると、読んでいるほとんどの人が『天使の羽』は飲むとスーパーマンになれる魔法の薬的な存在だと思っているかもしれませんが、そういった理化学的では無いオカルトパワーは控えるように心掛けます。※どの口が言ってんだって感じですね
という事で今回は、穴だらけな設定をまとめるためにここら辺で天使の羽についてしっかりと決めてしまおうじゃないかと思います。最近はシナリオの流れを修正するのに勤しんで、細々とした設定を考えていない。
読者がパッと読んで『3割』理解させられれば、設定として可にしています。
深堀すれば8割理解できるのが理想。
判定は、普段なら周りに頼んでいるのですが今回はここに載せてみようかなと思いました。
あとがきの戯言ですので適度な遊びだと思って、暖かい目で読んでいただければ光栄です。
※今のところ、本編とは関係ありません。
しかし、これを読んでも矛盾が無いようにストーリーが進められるのが理想。
~天使の羽の設定~
天使の羽――ミヌティックドックウイルスの分解作用がある。そのほか、液体の中に乳酸菌サイズの『Artificial Superintelligence(人工超知能)』が含まれており、体内に摂取されると同時に神経細胞の間で行われている電気信号を常時『SEEDデータベース』へと格納している。それを演算処理にかけて、正常な働きを強制的に行うと同時に『肉体と脳の差分データ』を割り出し、天能リアが開発したプログラム言語『旧ケイシー言語』を通すことによって、一部の機械情報を脳へと送信する事が出来る。
その結果、シンヤの未来を見る目が完成。
機械情報――シンヤは『人工衛星カメラ』のデータを算出している。それなら未来予知がリアルタイムで出来ていても可笑しくない。
いや、会話や思考まで未来予知してるんだよなぁ、矛盾が起きてる。
※ここら辺はいずれ暇な時に考えよう。
~矛盾点の洗い出し作業~
・世界線がずれているからSEEDデータベース何て存在しない。
これは問題なし、存在する場所はすでに登場している。
・脳の情報をコンピューターに通す事は可能か。
これは問題なし、そういった実験がすでに海外で行われている。
・天能リアは科学者という設定だが、医療とプログラムに精通している事になってしまう。
これは問題なし、天才だから。
以上、記載終了。
こんな感じで普段から設定資料を保存もせずに書き込んでは消えたりしています。熱意リョウや森根サチにも名前の由来があったはずなのに思い出せない。まぁ、忘れてしまったものは仕方が無いですね。この設定も忘れて矛盾が起きないように気負つけます。




