私のお母さんは小説家です
新連載です。
付き合ってあげてください。
私のお母さんは、小説家だ。それも、かなり有名な。テレビにもよく出演している。
けど、私はお母さんのことを自慢したことがない。
なぜかって?
理由その一。自慢できる所はあっても、言動が残念過ぎる。
お母さんはそれはもうすばらしい小説を書くし、語彙力もすごいんだけど、何しろ言動が残念だ。
ひと言で表すなら…「中二病」。弱冠30歳にして、今でも魔法使いがいると信じているし、時々…いや、よく痛い言動を繰り返している。
しかも名前が「一絢 愛目璃」なのだから、もうげんなりしてしまう。
そして、だからといって娘の私にまで中二チックな名前を付けないでほしい。
あ、ちなみに私の名前は「光勇者」です。これはツッコミどころがありまくっていると思う。
なぜ「光勇者」で「ソラ」という読みになるの?!このせいで学校でも痛い子だと思われて、ずっとぼっちなんだよ!話しかけても、みんな目を逸らしながらそそくさと離れていくんだよ!!
…ぜーぜー。息が切れた。よし、お母さんへの怒りは一旦置いといて落ち着こう。
理由そのニ。幼い私に嘘をついていたこと。
嘘をついていたことについてはもういい。多分、小説家だとバレたくなかったんだろうなー、ってなんとなくわかるし。
どっちかというと、その嘘による副次的な出来事だ。
幼稚園ぐらいのときの私は、お母さんが小説家なんて欠片も思っていなかった。そもそもお母さんが自分の映ったテレビを見せないようにしていたし、うっかり見てしまったとしても「この人はお母さんのそっくりさんなんだよー」って言ってた。
そして幼く純粋な私は、何の疑いもなくそれを信じていた。こんなに似てる人がいるんだなー、なんて、のんきに思っていたのだ。
今なら言える。そんなわけあるか、と。
結局、小学校高学年までそのことを信じ続けて、クラスメイトに教えられてやっとお母さんが小説家だということを知ったのだった。ちなみに、そのあとはなぜか『嘘つき』呼ばわりされましたけどね…あはは…
とにかく、その他諸々の理由で私はお母さんが苦手なのだ。
なのになぜか、いつも騒動が起きるんだけどね…。
「ソラ~!ちょっとこっち来て~!!」
ああほら、今日も。
私は「はーい」と返事をして、重い腰を上げてお母さんのもとに向かうのだった。
ソラは苦労人なのです。