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7話 戦闘モノってやられ役が必ず1人はいるよね

タイトル回収はまだまだ先になりそうです。

さてと、今日はどうしよう?昨日は結局ドラゴンの肉を食べるだけで1日終わっちゃったしなぁ。今日は狩り……じゃない戦闘訓練ってことになるかな?

あら?こんなところにリュックサックっておいてあったかしら?

テーブルの下には雪山登山とかで見るような巨大なリュックサックが置いてあった。近づくと裏に紙が張り付けてあった。

えーと、『昨日持ってきた食料と、万が一の時に必要そうなやつはあるだけ詰めておいた。持っていくなら容量の多いコレを使ってけ。 モーガンより』か。準備良すぎない?そう日本語で書かれていない手紙をポイッと投げてリュックの中を漁ろうと――日本語じゃない(・・・・・・・)

改めて手紙を拾って見てみると、確かに日本語じゃない。英語っぽいような気がするけど字が達筆すぎて今までの私じゃ読めたものじゃないはずなのに、さっきの私はスラスラと読んでみせた。ってことは……翻訳機能って文字にも働くの!?改めてこの能力のチートさに驚く私だった。


今日はシルトちゃんにはシンプルな服を着せてる。私は失敗からちゃんと学んでいるのだ。戦闘するにあたっての服のデザインなんてどうでもいい。書いてある単語の意味が物騒なやつであってもだ、モブおじは娘に何着せてるの?今回の戦闘訓練も一昨日と同じく実験みたいなのを含んでる。空いた時間に無理のない筋トレをしてたおかげか、普通に歩けるようにはなった。しかし歩けるとは言っても気を抜いたらコケるような状態だし、そんなんで荷物を持てるわけなんてない。そういうことだから、旅をするときは荷物をシルトちゃんに持ってもらうことになるんだけど。あれ?私ってホントにいる意味あるのかな?って思ったけど今は気にしないでおく。それで、いつ戦闘になるかわからないからその切り替えがスムーズにできるかどうかを実験するのだ。できなかったら代替案を考えなきゃいけない。

まずはシルトちゃんにリュックを持ってもらって……ってシルトちゃん抱っこじゃなくて背負うんだってば。でも可愛い。

こんな一幕がありつつも私たちはモブおじの家を出た。シルトちゃんと登山用リュックのアンバランス感がすごい。


ひとまず敵とエンカウントしなければ始まらないのでドラゴンを発見したところまで移動する。シルトちゃんがリュックを背負ってると背中にしがみつけないから楽できないし移動が遅くなるなーと考えてしまうのは罪なのでしょうか?

そういえばドラゴンと言えば、何でドラゴンに他のモンスターが集まってたのか、だよね。あの時はシルトちゃんがドラゴンに突っ込んでいっちゃってそれどころじゃなかったけど、改めて考えてみるとやっぱりおかしい。ドラゴンに食われないようにモンスターは逃げてたからエサ用に集められたわけじゃないはず。だとしたら何のために集まっていたのか?誰かに集まるように命令されてたっていうのが一番しっくりくるような気がする。とすると誰に?ドラゴンは……そんな知能がありそうにないか。黒幕でも居るんだろうか?くろまく~でもぶっ飛ばすけど。そもそもでドラゴンや他のモンスターでここまで荒廃するものなのかな?もっと巨大な力を持った何か(・・)がいてもおかしくないような気がする。だとしてもこんな中途半端なのも……考えても分かんないや、私天才でもないし。

とにかく今回は切り替えがスムーズにできるかどうかだしね。そういや切り替えるにしたって荷物はその場においておくべきかどっかに放り投げとくか……食料とかあるし放り投げる選択肢はないか。かと言ってその場に置くと戦闘に巻き込まれる可能性も……どうすれば?先に考えとくべきだったなぁ。この荷物以外に何も持ってきてないから他の手段も取れないし。放り投げてもいいようにクッション素材で巻いてみるとか?……案外ありかも。世紀末もいいとこだし持ち物をすぐ出さなきゃいけない状況ってそんなないでしょ。よーし、帰ったらクッション素材のやつを探そう。モブおじもいれば探すの楽かもしれないけど果たして十分な性能のやつがあるかどうかかな。


「お姉ちゃん?」


おっと、思考に深く入り込みすぎたかな?どうにもシルトちゃんにこんな感じで呼びかけられることが多い気がする。シルトちゃんがいるとはいえ、絶対安全ってわけじゃないし、もうちょっと気を張んないとだね。

頬を両手でペチペチと叩いて辺りを見渡す。

あれ?床が焦げてる?建物も周辺が焦げて無残な感じになってる。なーんか見たことがあるような……って、もしかしてここドラゴンがいたとこ?もう着いちゃったの?正確には私たちがドラゴンを発見したところだけど。まあそれは置いといてやっぱり何にもいないなぁ……それとももうちょっと進めば敵がいるのだろうか?


「お姉ちゃん?あそこに誰かいるんだけど」

「誰か?」


こんなところに?ご生憎と私じゃ見えないから、ドラゴンの時と同じようにシルトちゃんにどういう感じなのか教えて貰おう。


「どういった感じの人?」

「肌が赤い人!そして何か叫んでるみたい」

「肌が赤い?」


日焼けしてるのかな?なんて冗談は置いといて、テンプレとは違うみたいだけど私の予想が合っていれば……。

そう思って近づいて見る。シルトちゃんが言った通り肌が赤い、詳しく言えばペンキで塗ったかのようにあからさまな赤い肌の人物が立っていた。予想してた通り、角が生えている。やっぱり魔族の方ですよねー……。怒ってるみたいだけど動きが激しい。子供が癇癪(かんしゃく)を起してるみたいだ。ああいう直情的な大人には関わりたくないんだけどなぁ。

でもこういうときっていつも……。


振り向いてみるとシルトちゃんがその場にいた。あ、絡まないのね……?あっちも気づいてないみたいだし、このままスルーしようか。シルトちゃんを上から覗き見てると頷いてきた。思いは同じ、なのかな?


「おい貴様ぁ!」


ダメでした☆まあそう上手くはいきませんよねってわかってましたけど。


「ドラゴンを知らんか?」

「……ドラゴン?」


知ってるけど大体がシルトちゃんのお腹の中です、なんて言えるはずもないし、怒り狂って襲ってくるだろうことは予想できるので、ここはとぼける選択肢しかない。目の前の魔族がなんかぶつぶつ呟いてる。このまま通り過ぎてもいいけど


「シルトちゃん、あの人が私たちに攻撃してきたらグーしてやりなさい、グー」

「グー?」

「そう、グーよグー」


そう言ってシルトちゃんに握りこぶしを見せる。首をかしげてたシルトちゃんだけどちょっと突くような仕草をしたらコクリと頷いた。わかってくれたっぽい?


「知らないのなら仕方ない、次を作るしかあるまいな。だがその前に……」


そう言葉を切って魔族の人はこっちを見据えてきた。赤い肌に真っ赤なスーツ、肌とは若干色合いが違う赤い髪とある中で真っ黒な瞳が妙に目立つ。そこは統一できなかったのかとは思ったけどそれどころじゃない気がする。


「貴様らを殺して次回作の材料にでもさせてもらおうか!」


やっぱり殺しにキター!もうこうなったら私にできることはシルトちゃんを信じて逃げるぐらいしかない。ボクシングのセコンドみたいなこととかできるわけないじゃないですかーヤダー。ていうか結構速い。あの時逃げとけばよかったよ!


「グーッ!」


シルトちゃんはびっくりした様子もなくお腹に拳を深々とめり込ませた。うわぁ、思いっきりくの字に曲がっている。吹っ飛びはしなかったけど、効いてはいるようで数歩後ずさった。


「くくく、くっふふふふ……いいぞ、ドラゴンは俺の最高傑作だったが、貴様らを元にすればもっといい作品が作れそうだなぁ……!」

「!……オジサンがドラゴン作ったの?」

「オジっ……ああ、そうだ。だが忽然と姿を消した。3日もかけたというのに」

「じゃあもう1匹作ってよオジサン!とっても(・・・・)美味しかったから(・・・・・・・・)!」

「あ」

「……美味しかった、だと?」


完全に地雷です、何となくやりそうな予感はしてたけど。プルプルと震えてる眼が黒から青に変わっていっている。こりゃ完全に怒ってますわー、現実逃避するしかないわー……もうヤダ。


「きぃぃさぁぁあまかぁぁあああ!!」


さっきよりも速っ……


「グーーーッ!」


リプレイでした。いや、さっきよりも速かった分威力が上がってるみたいで今度は盛大に吹っ飛んだ。1メートルくらい宙を飛んでから2~3メートルほど転がってうつ伏せになった状態で止まった。

……死んだのかな?確認しようと前に乗り出したところで腕に遮られる。出所を見るとシルトちゃんが真剣な表情で魔族っぽい人を睨みつけていた。

ヤッベカッケェ……ティエ様もこんな表情のCGがあったためにそれとシンクロして過呼吸になりそうになる。頭には瞬間記憶はしたけど、何か物理的なものに保存しておきたい!くっ、私に絵を描く才能があったら帰ってすぐにでも完璧に再現してみせるのに!


「俺は……魔人だぞ……。モンスターどもを率いて、この世界に君臨する存在なのだぞ……。その中で、俺こそは……このルオガン様こそは……、魔王を殺し新たなる魔王となるのだぞ……!貴様らに……貴様ら人間風情にぃぃぃいい!」


ゆっくりとルオガンと名乗った魔人が立ち上がる。なんともすごい執念だなぁ。周囲には群青色っぽいオーラが出てる。だから統一しろってッてツッコミはないね。さて、ここまで引っ張ってなんだけど、ルオガンのここまでの行動は、私の中での主人公にやられる役の行動ほぼまんまなのである。もちろんこれは現実なのでこのあとの展開が確定してるわけではないけれど……


「負けるはずなどないのだぁぁぁああああ!!」

「グーーーーッ!」


再三の腹パンが決まった。しかし今度は前の2回と違ってお腹を貫通していた。シルトちゃんが突撃する形だったらどっかのアニメみたいにシルトちゃんごとお腹を貫通してたのかな?いやまあそれはともかく


「……死んだ?」


お腹を貫かれたルオガンはピクリとも動かない。黒い液体がお腹とシルトちゃんの腕の間から漏れ出ている。殺さなければこちらが殺されていたわけだけれど、やっぱりちょっとスッキリはしなかった。

シルトちゃんも何か思うところがあるのか、自らの手で殺したルオガンの顔を見上げ――整った顔面にかじりついた(・・・・・・)


ちょっ!その流れでそうしちゃう!?これダメ!映せない!狼男の時以上にマズイって!ひとまず、私は逃げる!撤退!

後ろで聞こえるボリボリやブシュブシュって音なんて聞こえない、聞こえてないんだからぁーー!


……………………


…………


……


全力で走って逃げていたらいつの間にかモブおじの家の前にまで着いていた。無意識に全力疾走していたからか、そのことに気づいた瞬間、私は膝から崩れ落ちた。

ってかこれ、やばいっ……息がっ……!

満足に息を吸うこともできず、咳き込んだりしてなかなか息を整えられない。42キロも走るマラソンランナーってどんだけ……。

暫くして呼吸は何とか落ち着いたため、ひとまずモブおじの家には入らずにシルトちゃんを待つ音にする。いきなり置いていっちゃったから怒ってないかは心配だけど。

そういやあの魔人ルオガンってボスっぽい雰囲気もあったような気がするけど、どうなんだろ?『魔王を殺して新たなる魔王となる』っても言ってたしなぁ。あれが魔王にとって下っ端なのか幹部なのか判別がつかないけど、ゲームとかだと幹部のパターンが多いのよね。とすると敵側は今頃『あいつは魔人の中でも最弱……』とかでもやってるんだろうか?


「お姉ちゃーーん!」


遠くからシルトちゃんの声が聞こえる、どうやら食事は終わったみたいだ。って、今の私無防備だったじゃん、狼男の時もそうだったし、何か対策立てないとかな。

声が聞こえてから3~4秒で私の前に到着したシルトちゃんは案の定、おそらく魔人の血みたいなものと思われる真っ黒な液体にまみれていた。これもどうにかしたいなぁ。シルトちゃんが着てるTシャツに書いてある『戦場にてお前を喰らう』がマッチしすぎてヤバい。だからホントにモブおじはなんてものを娘に着せてるんだよ。


「いつの間にかお姉ちゃんが居なくなってたから、アタシ心配したんだよ?」

「あ~ごめんごめん、心配かけたね。でもね?いきなり食べ始めるのは、ちょっとやめてほしいかなって」


シルトちゃんの頭をわしゃわしゃとなでる。すっごい肌触りが良い。シルトちゃんも嬉しそうだし、このままずっとなでててもいいかな?


「あ!そうだった!」


んむ?何か忘れたことが?ちゃんとリュックも持って帰ってるみたいだし、それといって忘れ物はない気がするんだけど。

シルトちゃんはリュックに近づいておもむろに何かを引き抜いた。


「お姉ちゃんこれ食べる?」

「食べないよっ!」


引き抜かれたものは魔人の足だった。食べるかそんなもの!


「じゃあこれは?」

「部位の問題じゃないの!」


次に腕を見せてきた、そういうことじゃないのよシルトちゃん……。ってあぁ、ここで食べ始めないで……。

家に逃げ込むしかない私なのであった。









――――――――――


男が腰かける椅子の前に置かれているテーブルにポツンと紫色に輝く水晶が置かれていた。


「魔王様~?な~んかルオガンの反応が無くなっちゃったっぽいんだけど~?」

「気にすることでもないだろう、アイツは自分勝手だったからな。足でもすくわれたのだろう」

「ま~そかもね~。魔王様を殺して俺らで支配しようぜって持ち掛けられもしたしね~」

「私は初耳だぞ?だがそれを言うということは断ったのだろう?」


魔王と呼ばれる男が口を開くこともなく話が進んでいく。魔王の顔には怪訝な表情が浮かび、ひじ掛けに頬杖をつく。


「そりゃ~ね~。面白そうだったけど、弱っちかったからね~。ボクぐらいに強くなったら行ってあげるかもよ~って言っておいたよ~」

「ふん、最近生まれたくせに意気がるからだ。お前も、遊びすぎてアイツの二の舞にはなるなよ。魔王様に恥をかかせんようにな」

「わ~かってるって~。あ、魔王様は気にしなくていいからね~」

「私はそこが心配だと言っているのだ。ご安心ください、魔王様。私たちで邪魔者を消し去ってくれましょう」

「……」


結局魔王が言葉を1つも発することもなく話が終わり、水晶から輝きが失われた。魔王の顔には先ほどと変わって不安の表情が浮かんでいた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

気づいたら100PVを超えていました。本当にありがとうございます。

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