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5話 汚食事ショック

投稿した後に確認すると誤字脱字が多くてへこみます(じゃあ何のためのプレビューだよ)。

「ちょっと、シルトちゃん待って!」


そんな私の制止も聞かずシルトちゃんはドラゴンに突っ込んでいく。その姿は忍者のごとく、いや、前屈姿勢が過ぎてチーターのようにも見える。逆にそんなに前傾姿勢が取れるってことはそのぐらい速いってことで、結構あった距離はあっという間に詰まっていき、目前まで迫っていた(私の目測でだけど)。


「ギュアアアアア!!」


身体の芯にまで咆哮が響いてくる。たぶんシルトちゃんに気付いたんだと思う、しかしシルトちゃんはもう十分に近づいている。逃げたり迎撃したりする余裕はないだろう。シルトちゃんは飛び上がってドラゴンに噛みついた(・・・・・)、っていきなりすぎるって!それでもシルトちゃんの歯は通らなかったみたいだった。ガキィンとかいう硬い金属を打ち合ったような音が鳴り響いたからだ。っていやいや、鱗からはともかく、歯からなっていい音じゃないと思う…。コメディとかじゃないんだから。だからシルトちゃん、こっちにまで聞こえるような大声で「硬ーい!」って言わないで…。

だけど状況は依然シルトちゃん有利に違いない。ゲームだと強制的に振り落とされるものだけど、現実なら律義に振り落とされる必要はない。つまり相手の死角から一方的に攻撃ができるってことだ。


「シルトちゃーん!そのまま攻撃して!そこに居ればドラゴンから攻撃されないから!」


そう言い終えた直後、ドラゴンがこっちを向いた。ってしまった、ヘイトこっちに向いちゃうじゃん!そう思っていたらドラゴンの口当たりに赤みが帯びているような感じがした。

赤み?ってまさか、私の想像が当たってるなら、ここまで届くっていうの!?いや、そんなこと考えてる場合じゃない!緊急離脱!

大通りに走り出した直後、私が想像した通りドラゴンが火を吐いてきた。距離は結構あったはずだけど、発射速度が速すぎて先端が1秒くらいで私のいる距離まで届いてきた。マズイマズイ建物の陰に逃げないと!シルトちゃんを見失うと何しでかすか心配って思って大通りの方に走っちゃったけどここまでなのは考えてなかった!グラビーム並みにヤバい!回避装備なんて装備してないし、そもそも飛び込みに無敵なんてないし!熱っ!もう現実の感覚があるファンタジーなんてイヤー!


「お姉ちゃんをいじめないで!」


私に火炎放射が届く前にシルトちゃんがドラゴンの頭を殴って射線をずらしてくれた。とはいえ最後に吐き出された火はまだこっちに向かってるから余裕はないんだけどね!持ってるペットボトルの水程度では火は消せないだろうから前の方に全力で転がしておく。そして私はダイビング!気分は伝説の傭兵!

飛び込むときに改造外套をお腹の前に引っ張り寄せて衝撃を緩和させる。なるべく低い軌道を意識したために着地した時に前に引っ張られるような感覚が残ったのでその慣性に任せて、一回前転のようになった後横になって転がっていった。左腕が前、右腕が外套を引っ張ってお腹らへんにあったからか柔道の転がり受け身のような体勢になってたみたいだ。それでも素人には変わりないから結構痛かったんだけども。


痛みが残る全身を地面にほっぽり出したままシルトちゃんとドラゴンの方を見やる。案外ドラゴンも機敏なようで巨躯を揺らしながら頭や尻尾をぶん回してシルトちゃんに当てようとしてるみたい。一方でシルトちゃんは軽やかな身のこなしで避けていく。戦闘経験がない小学生低学年くらいができるような動きでもないような気もするけど、今はいいか。

攻撃が当たらないことにしびれを切らしたのか、ドラゴンは火を吐く準備を始める。しかし準備をしながら素早く動くことはできないのかドラゴンの動きが止まった。とはいえ、有効な手段が手元にない以上、今のうちに撤退するくらいしかやることがないのだけど。


「もう火なんて吹かせないんだから!」


私が撤退を指示する前にシルトちゃんが動き出した。その両腕はピンと伸ばされそのままグルグルと高速回転している。あれはまさか、ロリ属性やドジっ子属性を持つキャラが使う奥義――『駄々っ子パンチ(・・・・・・・)』!!

ここには私以外いないので『知っているのか?』という反応はない。だがあえて説明させてもらおう、『駄々っ子パンチ』とは両手をグーにしてそのまま両肩で腕を振り回しそのまま突撃する技だ。遠心力も相まって威力は高いのだけど、マンガとかでは使用者より腕の長い相手に頭を押さえられえて無効化させられるのがオチだったりするのだけど。今回は遮るものが無い故に…


ドガガガガガガガガガッ!


マシンガンでもブッ放したかのような音が響き渡る、もしくはドリルかな?だけどドラゴンの頭も防御力は高いらしく、こんな音を響かせながらも頭が陥没したりはしなかった。代わりに十数秒にわたる駄々っ子パンチを喰らって脳震盪(のうしんとう)でも起こしたのか、ようやくドラゴンが地に伏した。


とりあえず安全になったっぽいので水の入ったペットボトルを拾ってからドラゴンに近づいてみる。遠くで見た時の想像よりも大きく、ちょっとした丘みたいだった。こんなのがモブおじのいる方で暴れたら大惨事どころじゃ済まなそうね。ここで仕留めたいのもやまやまなんだけど、シルトちゃんの歯が通らない以上、ってそうだお腹側から食べてもらえばいいじゃん。そう思ってさらに近づいて見たところで私は絶望する。倒れててお腹の端っこぐらいしか見えてないけどびっしりと鱗が生えていた(・・・・・・・)のだ。そこは弱点くらい作っときなさいよ!と心の中で怒るもゲームに習って弱点を律義に作る必要もないんだったね……。

それなら目や口の中から……想像しただけでギブだった。狼男の食事風景をちょっとだけとはいえ見てしまったせいでマンガみたいなコミカルな感じでなくリアルな感じで想像してしまったのだ。


「でぇい!」


私があれやこれやと考えてる間にシルトちゃんがウエストポーチから何かを取り出してドラゴンの背中に投げつけた。流動物っぽくは見えたけど、掴んで投げてたからスライム(・・・・)みたいな感じなのかも……スライム!?

よく見てみればあのネチョッとした感じ、あの光沢、間違いない。モブおじの家に行く前に見せられたあのスライムだ!準備ってそれだったの!?スライムの浸食は素早く、既に背中の3分の1くらいがスライムに薄く覆われてしまっている。そしてその覆われた部分を見てみるとゆっくりとだけど鱗が溶けてきていた。


「ちょっと、シルトちゃんあれって」

「スライムだよ!食べにくいところはスライムに食べてもらってるの!」

「え、じゃあさっきの狼男も…?」

「あんまりおいしくないところは食べさせたよ?骨はおいしかった(・・・・・・・・)!」


犬か!というか骨も噛み砕けるの……?いやそうじゃなくて


「食べさせてどうするの」

「後でアタシが食べるの!スライムに食べさせるとスライムがおいしくなるんだよ」


スライムは家畜か!というかそんな理由なの?いやいやいやいや……


そんなこんなで鱗がだいぶ溶けてきた。その間にスライムに襲われることはなかったけどなんでだったんだろ?シルトちゃんがいたからなのかな。鱗を溶かされる痛みはあるのかドラゴンが弱々しくギュウウウウと鳴いているのが私に哀愁を誘う。シルトちゃんは目を輝かせていた。何というか、ごめんねこんな子で……。私はドラゴンに心の中で詫びを入れたのだった。


「いただきま~す!」


不意にシルトちゃんがドラゴンの背中にダイブする。その動作は何とも軽やかで、ドラゴンに(・・・・・)突き刺さった(・・・・・・)

流石にズッコケそうになったわ。そして突き刺さってドラゴンの背中から生えているシルトちゃんの下半身は段々と沈んでいった。モグラか!と思ったら急にシルトちゃんの頭が生え出してきてはまあ沈んでを繰り返していた。うわあ、(むご)い食べ方だなぁ……、ドラゴンの目ももう虚ろだし……。だけど血はほとんど吹き出してこなかった。その代わりにスライムが赤くなってきてるからスライムがドラゴンの血を吸ってるっぽい。まあ、赤いドロッとしたのが傷口近くにあるのはグロいけど、シルトちゃんの食事で血があちこちに飛び散るよりかはマシなのかな…。


そういやドラゴンはおいしいとか珍味だって書かれることが多いけど、今回のコレってどうなんだろう?

……。

いや生はないな生は。……ってそうじゃない、調理すればいいって話でもないでしょ。でもおいしそ……じゃない!!なーんかシルトちゃんがおいしそうに食べるから(食べ方はともかく)、それに引っ張られてるのかもしれない、気を付けよう。私は気分を落ち着けるために持ってた水入りペットボトルのキャップを開けて、腰に左手を当てて(あお)る。めっちゃおいしく感じた。ドラゴンの肉ってRPGだとドーピング材としてたまに見るけど、シルトちゃんの筋力とか攻撃力とかあがったりしないかな?しないか、RPGでもなければどこぞの美味いものを食えば食う程強くなる細胞でもあるまいし。


さてと、――あとどのくらい時間かかるのかな…。

私の視線は今だムシャムシャと聞こえるドラゴンのお腹のあたりに向いていた…。



――――――――――



「シルトちゃーん、そろそろ戻らなーい?」


体感で30分くらいはたったところで待ったをかける。ドラゴン実食中もモンスターがちょくちょく集まってきて襲われたせいで精神的な疲労がマッハなのだ。ドラゴンの方も無残な状態になってるので、残りをモブおじの家に持ち帰ったほうがSAN値が削られずに済む。


「むー……うん、わかったー」


少々不服そうなのは食事を止められたせいでしょうね……。けど、私にも譲れないことはあるのだ、たとえティエ様似のシルトちゃんであってもね。顔面も服も血がついてないとこのほうが圧倒的に少ない状態っていうのはもうお腹いっぱいです。


「ドラゴンの残りは持って帰っていいから、ね?」

「んー、そうする―!」


いきなり生き生きと……、まあいっか。それにやっぱりドラゴンのマンガ肉はオタクにとっては食べてみたいものだしね。……ちょっとだけ、ちょっとだけだから!

雑念みたいなものを晴らそうと頭をブンブン振ってたらドラゴンの尻尾が吹っ飛んでビックリした。慌てて見るとシルトちゃんが内側から尻尾を蹴ったみたいだった。今後旅するのにサバイバルナイフは必要そうね、これ。しかも切れ味がいいなんてレベルじゃないくらいの。そしてシルトちゃんは切り取った(?)尻尾を除いた残りの部分をスライムに突っ込ませていた。(帰るのに)まーだ時間かかりそうですかねー?と思ったら分裂した。ドラゴンが無くなるころには3匹に増えてた。そのうちの1匹をシルトちゃんはこっちに差し出して


「食べる―?」

「食べないよ!」


言うかと思ったので結構食い気味に拒否した。シルトちゃんは私を何だと思ってるんだ……、悲しいなぁ。もちろん、2匹はシルトちゃんがおいしくいただいてました。1匹はウエストポーチに戻してた。まだ持ってくつもりなのね……。


帰るにあたって。道のりが長いので血の感触を我慢してシルトちゃんの背中に乗る。そしてシルトちゃんはドラゴンの尻尾の先端を片手で持って引きずる形で発進し始めた。運び方雑っ!尻尾もまんべんなく鱗が生えてるから地面で削れたりとかしないだろうけどさぁ。っていうかシルトちゃん、こんな力持ちだったんだ。じゃあ荷物は全部持ってもらうことにしよう。絵面は最低だけど『いのちだいじに』、である。


発進して7分くらいだったかな?そのくらいでモブおじの家に戻ってきた。なんか行きの時より速かった気がする。あれか、警戒とかしなくていい分飛ばせてたことか。その分だったのかより強く締め付けられてた気もする。ちょっと吐きそう、吐くようなモノも食べてないんだけど。そう考えてたらお腹が減ってきた気がする。……ドラゴン肉。うん焼いて食べよう、栄養食品じゃ物足りない。もはやモンスターの肉って危ないんじゃという考えがどこかのかなたに吹っ飛んでいた私であった。

といったところで、どうやって焼こうか。そもそもででっかすぎるのが問題なのだ。長さがモブおじの家の横幅と大体一緒なのだ。これを焼こうっていうのなら家火事レベルの火が必要になる。そして火を調達する必要がある、燃料も必要かな。モブおじの家の中を探してみるとマッチがあった。燃料は……家火事レベルの火ってなるとかなりの量ほしいよね。ん?家火事レベル?家火事起こせば済む話なんじゃ?使われてない家ならここにたくさんあるわけだし。でもそのためには家火事を起こせるほどの火が必要なわけで、その燃料は別の家から持ってくればいいか。考え方が野蛮かな?あ、尻尾の肉を切り離さないといけないか。といっても尻尾の中間あたりの太さが私の身長くらいあるのだ。おまけに鱗程じゃないけど外皮も硬くて切れるようなものじゃない。


なーもう、面倒くさいなぁ。シルトちゃんが食べていいか催促してくるので、明日焼いて食べようとだけ伝えて…、ついでにモブおじの家以外から燃えそうなものを集めておいてと伝えて(食べれそうなものは食べていいよとも言っておいた)今日は家で過ごすことにした。長期的な冒険の準備もしなくちゃいけないからね。ちなみに今日の夕食は黄色い箱の栄養食品でした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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