1話 死んで始まるお約束?
冒頭の7ちゃんの場面は、筆者がちゃん民ではないのと、再現が面倒なので、いろいろと省略しすぎていますが、個人で補完してください。
※亜美の身長体重を調整しました。
1 :VIPにかわりまして ID:G2kgJ8iD4
魔王がワイの町に来たんですがどうすればいいでしょう?
2 :VIPにかわりまして ID:37eR8U45S
知wらwねwーwよw
3 :VIPにかわりまして ID:YU9r8aI4o
面白そうな新スレキター私怨
4 :VIPにかわりまして ID:J98hKAgr
まずは特産品とか紹介してみれwww
5 :VIPにかわりまして ID:eBRnOI67
魔王ってどんな感じなん?
可愛いか可愛くないか、まずはそこからだ。
6 :VIPにかわりまして ID:G2kgJ8iD4
そんな呑気なネタスレじゃねーんだよ!!
ヤベ―んだよワイの町が!!!Щ(`Д´#)Щ
7 :VIPにかわりまして ID:9JGwr4f
おいお前らこれ見てみろ
『魔王襲来のネット記事』
8 :VIPにかわりまして ID:rW35d4TU
( ゜д゜)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
9 :VIPにかわりまして ID:0y3yBwLg
( ゜д゜)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
10 :VIPにかわりまして ID:8h04ne61
( ゜д゜)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
11 :VIPにかわりまして ID:J98hKAgr
( ゜д゜ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
12 :VIPにかわりまして ID:eBRnOI67
こっち見んなwwww
13 :VIPにかわりまして ID:37eR8U45S
てかヤバくね?イッチの町壊したらこっちにも来るんじゃね?
14 :VIPにかわりまして ID:8h04ne61
……
15 :VIPにかわりまして ID:YU9r8aI4o
…………
16 :VIPにかわりまして ID:rW35d4TU
………………
17 :VIPにかわりまして ID:8R5d756f
……………………
18 :VIPにかわりまして ID:J98hKAgr
…………………………
19 :VIPにかわりまして ID:37eR8U45S
だれか答えてやれよww
答えてやれよ…(´Д`|||)
20 :VIPにかわりまして ID:G2kgJ8iD4
とりあえず、どうしたらいいと思う?
21 :VIPにかわりまして ID:0ng93nck
1は犠牲になったのだ
22 :VIPにかわりまして ID:7yrfV3Qg
人(--;ナムー…
23 :VIPにかわりまして ID:3A9r9Ncm
( ゜∀゜) アハハハハノヽノヽノ \ / \ / \
24 :VIPにかわりまして ID:37eR8U45S
/(^o^)\
25 :VIPにかわりまして ID:G2kgJ8iD4
てめぇぇぇぇぇぇらぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
……………………
…………
……
――――――――――
うーん、収穫なし…っと。
下手に対応しようとしないほうがいいっていうのが確認できただけね。
一応で言っておくけど、ホントのホントに魔王が来ているらしい。ニュースでちょっと見た感じは高身長ですらりと伸びた体躯を持つ、言ってしまえば某ファンタジーのセフィゲフンゲフン何とかさんみたいな感じだった。まあ流石にあっちよりかは若干イケメン度が下がっているけど。
魔王の姿を映した後すぐに映像が切れたけど、大丈夫なのだろうか。
そんな奴が建物を次々と破壊しながらこっちに歩いてくるもんだから、大統領やスター来日どころじゃないえらい騒ぎだ。生命の危機的な意味だけでなく、オタク的な意味とかも私としてはなくもないけど。特に横の建物に人差し指を向けるモーションは痺れた。某コーラの某ドラゴンコラボの冷凍庫を思い出してしまい、ちょっと腹筋を崩壊されかけたのだ。
魔王は破壊活動をしているようだけど、幸い、というべきか私の部屋は13階建てマンションの3階部分だ。狙われでもしなければ壊されたり大きく被害を受けるような階層じゃないはずだろうと思う。でもさっき倒れた高層ビル、結構根元から倒れてたような…?うん、やっぱり安全じゃないよね…。けど上の階の住人よりはマシなはず、部屋に籠って魔王が過ぎ去るのを待てばいい。って魔王って台風かなんかなのかな?
とりあえず帰ってきたときに背負ってたスポーツバッグに貴重品とか服とか缶詰とかスポ-ツ飲料とかパソコンも突っ込む。え?パソコンはいらないって?でも他に詰めるようなものがないからしょうがないじゃない。
ガラガラとかパリーンとか壊れたり割れたりする音が遠くで聞こえる。心なしか照明に下がってるスイッチの紐も揺れてる気がする。もう近くに来てるのかな。
電気を消して部屋の隅で小さくなる。近くにはさっきのスポーツバッグと運動靴。
この状況、魔王という名の嵐に私がおびえてるみたいな感じがするけど、そんなことはない。どちらかというと魔王には超興味津々なのだ。
興味を持とうとするな…、身体よ疼いてくれるな…。見たいという衝動に駆られるな…!これは私の生命に関わるのだぞ!
けどまあ、やっぱり『いのちだいじに』が基本なわけで、逃げられない!とか絶対に大丈夫!なんて機会がない限り基本逃げることにしている。私はちょっとばかりオタクなだけの普通にか弱い女子高生なのだ。
それでも気になってしまうのは性というものなのか、ちらちらと窓の外を見てしまう。こうなるともはや無限ループに陥りそうなので、魔王が過ぎ去るまで別のことを考えてみる。
とりあえず学校とかは休みになるかな?魔王がどれだけ東京を蹂躙するかによるけど、私としては休みになってほしい。特に休みになって何をするかなんて決めてないけど、というより決められないけど。
それとも実家に…も無理かな。理由は言うまでもなく魔王のせいだ。既に最寄りの駅は壊されてるはずだし免許も持ってない。そもそも学校の休み云々よりも東京、いや日本は早く魔王討伐をしなければ、甚大な被害を受けるのは必至どころか現在絶賛受けてしまっている。魔王が最終的にどこに行くかは分からないけど、魔王にとって想定外のことでも起きない限り魔王が過ぎ去ったんですぐ実家に帰りまーすなんてできないだろう。早めに避難したほうがよかったかな?
そういえば、他の人たちは非難したのだろうか?私の部屋は階段とエレベーターとは離れた位置の一番端の部屋であり、このマンションは構造がかなりきっちりしていて意図してワーギャー騒ぐぐらいじゃないと音も振動も伝わってこないせいで、私と同じように部屋でじっとしてるのかマンションから早々に出て逃げ出してるのかわからない。
ちなみに私が部屋に籠ってる理由は、さっきのニュースで、俯瞰で被害状況の映像が流れていたのだけど、かなり広範囲で破壊されてるから倒れた建物の瓦礫とかに潰されるんじゃないかと危惧したからだ。
断じて、現実逃避気味に7ちゃんに走って、逃げるタイミングを失ってしまったからじゃない。断じて。
幾ばくかの緊張の瞬間が過ぎて、右から聞こえてきた破壊音は今度は左から聞こえてくるようになった。つまりは、そういうことなのだろう。乗り切ったのだ、魔王の攻撃を、あくまで一時的にだけど。
これで今しばらくは即死はないということを感じたのか真後ろの壁に凭れかかる。ゴツッと小さい音をたてて後頭部にちょっとした痛みが走り、視界がその時よりクリアになる。
私はその時に『即死』はないと断定した。してしまったが故に気づかなかったのだと思う。上で密かになっていたいやな音に。
上手く立ち上がれず、壁に背中をつけてゆっくりと立ち上がる。興味はあっても死の恐怖は本能的には拭えないらしい。恐る恐るベランダに出て様子を窺う。ベランダの塀の下から見る限りは大丈夫みたいだ。続いて、塀から少し顔を出して魔王を探す。これもあっさりと見つかった。悠々と歩いてらっしゃった。後ろには見向きもしない。なんかその態度には少しイラっとしたけど、今は命があるだけ儲けものということで怒りを抑える。
なんか一気に老けた気がする。ま、とりあえずこれで一時は安全ってことで、これからどうしようか決めようか。電化製品は落ちてるから使えないし、まずはお父さんたちに電話かなぁ。……ん?そうだ、あれがあったよね。ゴソゴソと収納の奥を探す。基本使わないし、もう使わないと思ってたからどこにあるか…。
ほんの少しの後、私はゴソゴソという音の中にガラガラとなる音を聞いた。耳の良さには自信があるのだ。ってそんな場合ではない。ガラガラという音は上から聞こえる、ということは....。
それに気づいて靴とバッグを持ってベランダに逃げようとした時、屋根が崩れた。
魔王の時は死の原因が遠くにあったからいくらか気を保ってられたけど、今回は回避できない死が目の前にある。瓦礫が落ちてくるのがゆっくりと見える。これが走馬燈ってやつなのかな?落ちてくるのがわかっているのに、私の身体はピクリとも動かない。ゆっくりと落ちてくる瓦礫は逆に私の恐怖を誘う。
瓦礫が目測20センチくらいまで近づいてきたところで私は耐えられず意識を失っていくが、死ぬことは確定だろうな、なんて他人行儀な考えが頭に浮かんでいた。
――――――――――――――――――――
........あれ....生きてる......?
屋根が崩れたということは本来10階層分の瓦礫が落ちてくるということだ。潰されれば生きているなんてまずありえない。もしかして今瓦礫の中に埋もれてる状態なのかな?
試しに鼻で息をしてみたけど粉塵が入った感覚もにおいも感じなかった。
確かめる意味も含めて私はゆっくり立ち上がる訳だけれど、何にも阻まれることなく普通に立てた。どうやら瓦礫の中に埋もれてるわけではないっぽい。うつ伏せだったことも考えると病院でもなさそうだということも分かった。
意を決してゆっくりと目を開けるとそこには――何もなかった。
それは全てが破壊しつくされてたとかそんなんじゃなく、全くもって私以外何もなかったのだ
見渡す限りの白。自分の身体が見えることから目がおかしくなったわけではないとは思う。
私はあのときの服に少しばかり煤がついてる程度、身体は五体満足でちゃんと動かせる。
確認する限り服に目立つような損傷はなかったけど、身体には痣ができてた。ちょっとじくじくして痛い。
そして傍らにはなぜか運動靴があったものの、スポーツバッグは周りを見渡してもどこにもなかった。加えてポケットに入れてたスマホも財布もなかった。なんで靴だけが手元にあるのだろうと思ったけど、たぶん身に着けるものだから、ということで納得しておく。
そもそも転生などをするにしても、他のものはまだしも死んだときに身に着けてなかったものも一緒にある必要はないはずというおかしさにその時の私は気づいてなかったのだった。
確認はこんなものでいいかな。
一応ジャンプしてみたり走ってみたりしたけど、ジャンプ力や走力とかが上がってたりはしてなかった。
ちょっとだけ、『これ、なろう系お得意の異世界転生や転移ものの展開なんじゃない!?』なんて思ったけど、あ、なろう系異世界転生・異世界転移っていうのは異世界に転生して(その時人間以外のものになるのも多い)、その異世界でいろいろやらかすっていうやつのことなんだけど、あれは創作物でしかないし、それが現実で起こるかもなんて考えるほど頭はわいてない。
だけど、ここは死後の世界だったりするんだろうか?そうだと辻褄が合う気がするんだけど。十分ほど一方向に歩いてみたんだけど全くもって景色が変わらなかったし。
だとしたらここで自分の情報を整理しておこう。
なろう系異世界転生は現実にはないと思ってはいるけど、転生して前世の記憶は引き継げるのかは興味があるのだ。
…って結局、なろう系に影響されてるみたいね、私。
苦笑しながらも、誰かに自己紹介するように自分のことを確認していく。
えーと、私の名前は神薙 亜美。
最後に測ったときは身長158の体重49。…たぶん、きっと、メイビー…。
胸は……忘れていいな、うん。
そして16歳の高校1年だ。どこの高校かってはいいか。
一人暮らしをしていて、よく7ちゃんを見てた。ゲームとかもいくらか嗜んでる。
彼氏は居なくて部活はテニス部所属。別にテニスについては平凡って感じ。
っと、こんな感じでいいかな?特に忘れてることはなさそうだ。
さてと、後は展開を待ちますか。
~~~~~20分後~~~~~
………遅い!!!!
どんだけ待たすつもりだコンチクショー!!
この怒りもぶつけるとこも何もないから暇で暇でしょうがなすぎる!
っていうかなんか時間が跳んだ気がする!!『ポッポー』みたいな効果音で『20分後……』みたいなテロップが出てた気がする!!
ゲームや7ちゃんなどの娯楽にどっぷりハマっていた亜美には何もすることがない、何もできない状況がとんでもなく苦痛であったために誰にともなく、いや、ここに召喚したであろう誰かに八つ当たりでもするように駄々っ子が如く仰向けになって手足をじたばたさせる。本来ならガツガツといった音が聞こえそうなほど肘やら踵やらを地面に打ち付けてるはずなのだが、地面に当たった瞬間全てのエネルギーを奪われたかのように、まるでそこに前からだらーんと四肢を投げ出していたかのように無音で地面に接地する手足の感覚は亜美にとって、いや誰にとっても不気味なものだったであろう。
その気味の悪さに今度はホントに四肢を投げ出して脱力する。上を見上げても際限のない白、ここに神殿風の建物やその建物に並ぶほど大きな砂時計があれば、スピリチュアルでタイムレスな部屋を想像してたろうなと思った。
しかし事実、此処には何もない。そういったこんな展開に対する期待外れ感とか無気力感とかが沸々と怒りを蘇らせる。
もしかしたらここは5億年ボタンの世界なのだろうか…。
不意にそう考えた、考えてしまった。もちろんなんの確実な証拠があるわけでもない。
しかし一度考えた疑惑は1秒ごとに膨らんでいく。何かの拍子に押してしまったのかもしれない、ボタンじゃなくてもこの世界に入るトリガーがあったのかもしれない。
ゾクッと背中に悪寒が走る。
辺りを見わたしても文字通り何もない。何もないからこそ、怖かった。自分から発生する音以外はただただ無音、それだけなのに頭がおかしくなりそうだった。
「ふーむ、起きておったか」
突然聞こえたそれは私にとって福音であり、待望の八つ当たり相手がついに来たのだと私は直感した。
目を吊り上げながら首をグリンとでも聞こえそうなほど捻って声がしたほうを見る。その時ちょっとピキッときたのは関係ない話。
そこには白い光のようなものがふよふよと浮いてた。すっごい見づらい。
ふよふよ浮いてるそれは転生モノとかゲームのオープニングを思い起こさせる。
……まさかとは思うんだけど、これって…。
「…誰あんた」
不機嫌を隠さず光に向かって問いかける。その問いかけに対し、光はため息でもしてるような、もしくは呆れてるような間を置いて答える。
「…ワシは神じゃ。随分と不躾な奴じゃのう」
予想してた答えが返ってきた。やっぱりテンプレは存在するらしい、って神?存在してるの?ホントに?
いまいち信用ならなかったから近づいてみたんだけど、やっぱりただ光っているようにしか見えない。芸術品を品定めするように光の周りをグルグルと歩いてじっくり観察してみたけど、なんの確証も得られなかった。神様と名乗るこいつがすごく小さいのかと思ったけど、私の視力とこの光じゃ見ることは叶わなかった。
「早速じゃが、お主は管理者(仮)に選ばれた。お主には魔王を倒してもらおう」
「(仮)ってなに…。そんでもっていきなり無理難題じゃないですか?」
一応敬語で話す。神様っぽさは微妙だったけど、突っかかってここで破滅…!なんてなりたくないからね。
「ム?いや、戦うのはお主ではない。お主が選んだ勇者に戦ってもらうのじゃが?」
ますます意味が分からなくなった。選ぶの?私が?そこに三人勇者がいるじゃろう!みたいな感じなの?
「どういうことなの……」
あまりに現実的でない会話に困惑をそのまま零してしまう。
「まぁ、ここでグダグダ説明するよりササッとやってもらったほうがらk…すぐに慣れるじゃろうしの」
そう言って(?)光は私の周りを飛び回る。
ってちょっ…!いきなり実践投入?!チュートリアルみたいなのは!?
すると私の瞼と身体全体が重くなる。こういうのに『鉛になったみたい』って表現はよくあるけど、実際に体験するとなかなか……キツ過ぎる…。
これがなかったら『あー、よく小説で見るやつだよねこれ…』なんて思ってたのかもしれない。
そのまま前のめりに倒れるととんでもなく痛いことは予想できたから何とか全力で段階を踏んで倒れようとしたけど、膝をついた後そのまま倒れてしまう。
しかし衝撃は襲ってこなかった。
あ、そういえばなんでかこの床(?)、衝撃全部吸収してたわね…。
そのことに気づいて、私のあの頑張りは何だったの、という思いを抱えながら、私の視界は白から黒に染まっていった。
コメディというかネタ要素5~6割くらいで書いてます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。