幕間3
ふう、第三章もこれで終わりだよ。
お疲れ様、今夜もゆっくりおやすみ。
ん?心配してくれているのかい?はは、君達は優しいね。なあに、少し話し疲れただけさ。言葉を紡ぐことは私にとって生きることに等しい。それでも、いや、だからこそ消耗しちゃうんだよ。こんな風にね。
少し水をくれると嬉しいな。ありがとう。
でもね、信じてもらえないかもしれないけど、もうこの世にいない人達の話をすること、私は結構好きなんだ。
その孤独も悲愴も、物語の一つになることができたなら、ずっと繋がっていられるから。物語が閉じたとしても、誰かの心の中とか、書き取った紙の切れ端とか、どこかに残されているのなら、再び誰かが語り出すかもしれない。一度言葉になった想いが消え失せることはないのさ。
今は誰にも届かない、砂に埋もれちゃいそうな言葉も、廻り巡っていつかどこかで、それを求める人のもとに必ず届く。そういうものなのさ。
何度も言うけれどもこれは、お姫様でも勇者でもない、ただのなんでもない、何もできなかった女の人が一生懸命だったり一生懸命じゃなかったりを繰り返して、数奇な生き方をしながら、幸せになれるのかなれないのか、その軌跡を辿る物語さ。
だから、どんな感想を抱いても良いんだよ。何も思わなかったら、それもそれで悪いことではないんだよ。だって、君は彼女じゃないだろう?君が今求めているものは別の場所にあるってわかるのなら、それも立派な意見じゃないか。
どちらにせよ私はこの物語しか語れないのだけれど、それは私にとってこれがとても大切で、儚くて、そして本当のことだからなんだ。
私からは決して見えなかったであろうものが描かれているならば、私は君に、それを私に伝えた人のことをまた伝えているということになるね。そう、私は一人で旅をしていたとしても、一人ではないんだよ。
時に陽気に、時に険しく、時にぼんやりと。山を越え、谷を渡り、海に沿って。お日様が照っている時もあるけれど、嵐の日だって珍しくないね。晴れて嬉しい時もあれば、雨雲に命を救われることだってあったさ。
そんな旅路の、気が遠くなるほどの時間と距離の中でさえも、私と彼等が繋がっていられるのは、言の葉の翼があるからに他ならないんだ。
願わくばこの翼が、私と君達を繋いでくれますように。
そんなことを話しているうちに、またこんなに遅くなってしまったね。
そろそろ佳境だから楽しみに待っていてね。良い夢を。




