表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/68

第15話 デッドヒート・オン・ザ・シー

まだまだいくぜ!!

-数時間前-



「はあ……本当に止まり方教えてもらえなかった……。大丈夫なのかなこれ」

セエラは不安げに操縦席からまっ平らな海を眺めては、ぐるぐると止まらない考え事をしていた。


逃げているときは考えないようにしていたが、今になってギウスの言葉をひとつひとつ思い出しては気が滅入っている。

「あんな言い方しなくても……ギウスのバカ。いやギウスの言い分はごもっともだわ、バカは私だってば、でもやっぱりひどいよ……」

周りに人がいなさすぎてつい、一人で喋っては一人でつっこんでいる。


傍目から見たら面白いかもしれないが、残念ながら彼女はこの広い海の上で一人きりである。

「というかそもそもギウスはスードリーガに永住する気なの?アイルマセリアに来るつもりなの?どっちにしろ無理でしょ!」


しばらくは会いたくないが、無事ではあって欲しいような、少しは痛い目を見て欲しいような、でもあんまりひどい目にも遭って欲しくないような、後悔して欲しいような、でも謝られても困るような……。

セエラの思考は完全にループに陥っていた。


「一番の友達だと思ってたのに……」

一番どころか唯一と言ってもいいが、今そう考えるのはなんとなく癪だった。


昔シアンが先生の靴にグミを忍ばせてしこたま怒られていた時、一緒にいたのにあわあわして止められなかったセエラもまとめて叱られていたが、ギウスも近くにいたからと言って自ら罰掃除を手伝ってくれたり。

仲良し同士で固まってしまい一人になりがちだった食事の時にいつも近くの席に座って話しかけてくれたり。


そんな彼だからセエラは、一緒に抜け出す話を持ちかけたのだった。その時に呆れながらもすぐに準備に取りかかってくれた彼の本心を思うと心穏やかでいられようか。


そもそもセエラはギウスの本当の故郷も血筋も知らないのだが、そんなことはどうでも良いと思っていた。施設にいる子供に対して、常に不在とはいえ両親のいる自分は、そういうことは尋ねてはいけないと思っていた。

「自分のことばっかりじゃん、私……」

誰もいない場所での思考のループは自己嫌悪を増幅させていく。



そして、冷静になると怖すぎて思い出したくないが。

「私のことリークしたくらいでフィナが満足するとも思えないし……」


幼馴染への歪んだ執着をありありと見せつけてきた少女が、復讐に際してまだ利用価値があるかもしれない人間をそう簡単には解放しないだろうことは予想できる。


「あー……逃げ切れて本当によかった……もう追いかけっこは当分慎んでご遠慮申し上げます」


今となってはクロスタとの追いかけっこなんか大した問題ではないように思えるが、それはそうとして逃げ続けるのは本当に骨が折れる。


「……クロスタ、バレずにやっていけてるのかなあ」

恐らくフィナの様子を見る限り、クロスタはキエルや地下の人々との繋がりを隠しながら任務にあたっているのだろう。

普段は細心の注意を払っていたとしても、昨日の立ち回りはイレギュラーが多かっただろう。自分に加担したことが明るみに出たら、彼等も無事では済まないかもしれない。

そう思うと落ち着けず、セエラは何度ももう見えないスードリーガの方向を振り返った。



ふと前を見ると、何か黒いものが前方に見える。

岩山かと思って方向転換を試みたがなかなか上手くいかず、かなり近付いてやっと回避できたが、その黒いものが動いているのである。


そしてその形を、セエラは先生から聞き及んでいた。

しかも「それ」は彼女の乗る船の立てる波に刺激されて興奮しているようで、離れたはずなのにだんだん近付いてくる。



--これが彼女がサメとの追いかけっこをしている理由である。




ここ最近、身内、軍人、幼馴染、変な女、街の人達に追われてきたが、人間以外を相手にするのは初めて、というか想定すらしていなかった。


「ヒエエエエもうだめだーー!!!」


とにかく全速前進!

ずんずん近付く黒光り!

土壇場の急旋回!

なおも追ってくる海の狩人!

火事場の馬鹿力、岩場のドリフト!

制すのは海だけと誰が言った!飛ぶ鳥さえ落としかねない水しぶき!

せめてこの大海の王者を仕留める刃さえあれば、いや、たられば論はいい!望みは薄くとも生存の可能性に懸ける!!


漁船の限界を越えろ!!!!!






……なんやかんやで、スタミナが切れたのか、サメはもう見えなくなった。


しかし、ほっとしたのも束の間、目の前には大型船が悠々と走行していた。

何度も言うが、セエラはクロスタに止まり方を教わっていない。


「あっ終わった……」

と思うと同時に漁船は転覆した。





素早く浮きが投げ込まれ、じたばたしながらもどうにか掴まって、大型船の甲板まで上がることができた。

のだが。



「ネーチャンどう落とし前つけてくれんのじゃ?」

「なかなかの上玉じゃねえか」


怖い顔の屈強な人達に取り囲まれていた。

船籍を示すマークもどこにもなく、代わりに変な生き物の描いてある旗が風にたなびいている。

見渡すと、あちらこちらに酒瓶や見るからに怪しい袋が散らばっている。


間違いない。海賊船だ!!!




踏んだり蹴ったり!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ