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第6話 スードリーガ散策

初めての街って、なんであんなにわくわくするんでしょうか。

「こっちですよ、このお店のパンが美味しくてですね」

「おーいセエラついてきてるか?」

「まって……筋肉痛が……あいたたた」


翌日、セエラとギウスが港の方に行くと告げると、フィナが

「それでは私に案内させてくださいませんか?美味しいお店も知ってるんですよ。このところ誰かと街歩きなんてご無沙汰だったもの、楽しみだわ」

と、返事も聞かずに目を輝かせて、あっという間に準備を整えてしまった。


来たばかりだがすぐ帰りの船を手配するつもりの二人としては、のんびり散策する予定はなかったのだが、花が咲くようにはにかみながら申し出て来られては断る理由を探す気にもなれないものだ。


10数年前の悲劇の舞台とは思えないほど穏やかな空気。

今も軍事力を増強している地域という名目にそぐわないほど人懐こくて可憐な少女。


「来てみないとわかんないなあ……」

冷たい風で乱れた前髪を直しながらセエラは呟いた。


「そうでしょう!昔あんなことがあったから今でも外から来る人は多くないけれど……でも、とっても綺麗でしょう?ほら、あの市庁舎なんか、煉瓦の色から100年以上前のものを再現して建てられたものなんですよ。横にあるのは音楽ホールと学校ですね。ここから港への道は入り組んでいるけれど、実は裏道がですね」

「おっフィナお嬢ちゃん、今日はお友達と一緒かい?」

「ええ、おじさん!今日は私が先生なの!」

「ちょうどいい、これお友達と一緒に食べな!形が悪くて売り物にはならねえけど、味は一級品だぜ!」

「うふふ、ありがとう!」


フィナは街の人からも好かれているようで、度々街中で声をかけられる。

その上、現地の人間だということを差し引いてもフィナ自身が街角の店、昔からある名所、近年の復興状況にかなり詳しい。


「ねえフィナ、広場の方に人がいっぱいいるけど何かあるの?」

「この曜日のこの時間帯はいつも行商の方が南の方から来られているんですよ。この近くでは採れない糸や生地が中心なので、季節の変わり目は特にお客さんが多く集まるんです」

「へえ、ちょっと見てみたいかも……」

「こらセエラ、お前まで脱線しようとするな。港に行ってからだろ」

「わかってるってー!腕引っ張る必要ないじゃん!」


二人のやり取りを見て、フィナはくすくす笑っている。

「お二人は本当に仲が良いんですね」

「いや、腐れ縁みたいなもんだよ。こいつ昔からほんと危なっかしいんで一人にするわけにもいかなくて」

「なんでそんな保護者面するわけ!?可愛い女の子の前だからって!このかっこつけ!見栄っ張り!」

「幼馴染なんですか?本当に、いいなあ……」

目を細め、誰に伝えるでもないほどの小さな声で呟く彼女の様子を見てセエラが声をかけようとしたーー


「ねえ、フィナ」

「フィナ」


瞬間。


背後から金髪の軍人が現れた。


「ここで何をしているんだ」



本当に何をしているんだ。

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