第九話 "舎弟さん、主人公に惚れる"
「_______姉さん、いえ、姉様、弟様を下さい。」
平坦な顔でそう口走るマコト。
(おいおい、そんな事を口にすれば........)
姉の顔を覗き込むと狂気に満ちた表情をしていた。
(うわぁ......)
何だあの狂気に満ちたオーラ。触れてただけでも死人が出そうだぞ。
「貴方.........自分が今何を口にしたのか、理解しているのかしら?」
目の中のハイライトは何処に行った。戻ってこい、迅速に。
「分かっております、姉様。麗しい弟様を下さいな、と申し上げているのです。」
ウチのサイコパスに向かってこの子もこの子でよく言えるな。度胸が据わっている。
「____よろしい、戦争をしましょう。」
姉がマコトのネクタイを掴み上げ壁へと押し付ける。
「おいおいおい!」
即座に止めに入ろうとするが、
「弟様、底でまっていて下さい。」
舎弟により止められた。そしてマコトは決してヴァレリから視線を外さない。
「ふふ、姉さんもそんな表情をするんですね。」
「生意気な言葉、お仕置きが必要なようね。」
ドスッ!
マコトは煽るように言うとヴァレリがマコトの鳩尾へと一撃叩き込んだ。
「ぶふっ!!」
口から胃液を吐き出すマコト。流石に止めなければ不味いと思いヴァレリの腕を掴む。
「おい、何してんだ、アンタ!」
「調教よ。」
「調教って、やり過ぎた!マコトさんだっけか、大丈夫か?」
うずくまるマコトへと寄り、肩を貸す。
「あ、ありがとうございます//」
赤面した表情で自分を見てくるマコト。そしてマコトはヴァレリに対し静かに笑った。
「っ」
ヴァレリのこめかみに血管が浮かぶ。
「貴方......」
先程、自分に陶酔しているとか何とか言っていたのだが、本当なのだろうか。
「アンタもウチの姉をあまり挑発してやるな。」
「............わ、分かりました//」
小さい声で返事を返すマコト。長らく忘れていたが本当にこの世界は貞操の逆転した世界なんだな。反応がマジで貞操逆転世界っぽい。なんだろう、ちょっとした感動すら感じる。
「」
姉のイラつきが有頂天なのか、怖い目で此方を睨んでいる。流石にこれ以上密着するのは先ずいので離れる事にする。
「ふふ_____これからは”より”仲良くやりましょう、姉“様”。」
マコトはヴァレリに手を差し出した。
「貴方、私のジョンに一歩でも手を出して見なさい........コロスワヨ?」
ヴァレリがマコトの手を握り、耳打ちする。
「ふふ、それは弟様“次第”ですよぉ?」
二人は手を離さずお互いを見つめ合う。今にも殺し合いが始まりそうな空気だ。
「..................はぁ、いい加減に学校に行こうぜ。」
☆
学校とは何かと問われれば学問を学ぶ場所だと答えるだろう。しかし貞操世界が逆転した世界では如何なのだろうか。男からすればヤり目的の方が強いのではないのか?そもそもこの物語は貞操逆転物なのだろうか?
読者は皆、貞操逆転ものを求めて読み始めたはずだろうけど......未だにその要素が見当たらない?
「いやいや、おれだって困惑してるっつーの。」
ヴァレリとか言う自分の姉(メンヘラとヤンデレをサイコパスで割った様な奴)の所為で逆転ものとしての要素が少ないのではないだろうか。そもそも姉ものなんて今時流行らないのではないのだろうか。
考えてもみろ、日本男児はどうやらロリコンにご執心の様だぞ。それに時代は異世界最強チーレム転生。VRMMO系統も似たようなもんばかりだし......テンプレをご所望なんだ、読者層は。
なのに.....だ。何故俺は10話を前にしてこうもくすぶっている。名前のある登場人物が未だに4人をきってないし........セッ○ス王?
“なれねぇーよ!”
この姉がいる限りは。
(貞操逆転世界だ!やっほいー!セッ○ス残見だぁい!)
と期待していた自分が馬鹿らしくなる。
(そう.........)
だから全てを変えるんだ。新しく始まる、この学校生活で!
「弟様、女どもとは視線を合わせてはダメです。」
「えぇ、マコトさんの言う通り、合わせれば呪われるわよ。」
呪われってこの世界の女子高生は魔眼でも保持しているのだろうか。
「学校だ......」
着いたんだ。約9話と言う長い道を乗り越え、此処に辿りついたのんだ。校門へとたどり着いた俺は学校への敷地へと足を踏み入れる。
「は、入った.........」
なんだろう。この感動、快感。今までに感じた事がない達成感だ。
ガシ
「先ずは職員室へ行きましょう、ジョン。」
「へ?ちょ、まっ、感動って....痛い!痛いわ!!」
しかし、すぐ様姉の手により引き摺られる事になる。て言うか反対側の側面が地面に接触して痛いわ!これ、本当に貞操世界の男への仕打ちか?
「そうですね。此処にいては注目ばかり浴びてしまいますし、姉様の言うとおりにした方がよろしいですよ。」
そして反対側の手にはマコトが優しく触れ、一緒に引きずるのだった。ってお前も引きずるのかーい!