第十三話 “虚しい”
「「ただいまー」」
「お邪魔します。「貴方は帰りなさい」嫌です。」
可笑しいな。貞操逆転の世界ってこっちがアグレッシブの筈だよね。何故に二人はナチュラルにに自分の両腕へと引っ付いているのだろうか。
「お前らセクハラなんですけど!」
そう、この世界ではセクハラなのだ。にも関わらずこのアホ二人は堂々と変態行為をしてくる。
「あら、私達は姉弟よ。肉体の接触ごときで騒がれていたのでは此方が迷惑よ。」
いやいやこっちの方が迷惑だわ。
「弟様.....私は良いですよね?」
言い訳ねぇーだろ!その自身はそもそも何処から来ているんだ。お前はこの世界の住人だろう?ノータッチマン!ステイ!
「駄目だ.....ていうか二人とも俺の部屋から出て行ってくれ!」
「はあ....心が休まるわね。」
「はい、姉さん。何だか良い匂いがします。」
ナチュラルに俺のタンスを開けるな!それとお前は何を嗅いでんねん!!
「あら、ハンカチかと思ったらブリーフだったわね。テヘペロ。」
「わー姉さん!わたしにも嗅がせて下さい!」
もう嫌だ。ハーレム主人公の方がいい。異世界で冒険者やら勇者やってた方が絶対に楽だ。
「______ジョン、学校楽しかったかしら?」
「突然だなぁ.......まぁ、楽しかったけどさ。」
「そう、それなら良かったわ。」ニコ
そう言う笑顔は反則なんだよなぁ。
「あら、私に見惚れてくれている。今日はもしかしたら私は抱かれるのかも知れないわね。」
「私もお供します。」
そう言うところが無ければこの姉はいい女なんだけどな。それとお供しますって何やねん。
男A「いや、おれ今日もしかしたら彼の娘とヤれるかも知れないわー」
男B「え!?まじっすか!オレも混ぜて下さいよ!」
と言っているようなもんだぞ。こんな友人がいたらオレはドン引きだ。いや実際にマコトに対してドン引きしているのだが。
「アンタもアンタで勿体無いよなぁ。可愛い顔立ちしてそんな性格だもんな。姉と似た者同士だよ。」
「「誰が(よ)(ですか)!!」」
此奴ら本当に舎弟と姉貴の関係か?なんか喧嘩ばかりしてるんですけど。
「まぁいいや。取り敢えずオレは明日の宿題をするから部屋から出て行ってくれ。休んでた分の宿題が溜まってるから忙しいんだ。」
「あら、そんな事。ほら、やって置いたわよ。」
鞄から何やら取り出すとノートらしきものを手渡して来た。
「いやいや、今日渡されたばかりなんだから終わってるわけ........ん、可笑しいな。なんで範囲の全ての回答が書いてあるんだ?」
「授業中に済ませたからに決まっているでしょう?」
何を当然なみたいな表情されても困る。
(この女、盗聴器と小型カメラを仕込んでいるな........分かる、オレには分かるぞ。)
ジト目でヴァレリを見ると顔を逸らしやがった。なんなんだ、このサイコ女は!すぐさま鞄の中身を探す。
「うぅ、わたしにも勉強教えて下さい、姉さん。」
「いやよ。私は忙しいの。」
「そうですか。なら弟様に教えて頂きます。」
うう、鞄の中には其れらしきものは入ってなかった。ていうかヴァレリは安堵した表情を見せるな。あーイラつく。
「すまん、パスだ。」
「なっ!?」がーん
その場へと膝をつけ項垂れるマコト。姉は小さな声でざまぁと呟く。
「うぅ、いいですもん!私は弟様と将来結婚しますから!」
「いいえ、結婚は私がするわ!」
「アンタらとはしないから!!」
「「は?」」
いやいやこっちがは?だわ。なんで結婚するのは約束されているみたいに言い方してんだ。こちとら将来のハーレム王やぞ。
(てめえーらみたいなちんちくりんと結ばれてたまるかよぉ!)
「マコトさん、大丈夫よ。書面上は簡単に結婚出来るから。」
「おー!」
ていうかそれ俺の印鑑!やめて!本当に其れだけはやめてー!!
「俺は.......生涯独身でいたい。」
(そうだよ、結婚なんてせずプレイボーイとして死ぬんだ!!)
二人は其れを聞き嬉しそうに笑う。
「良かった。其れなら私と結ばれても貴方は気にしないわよね。大丈夫よ、貴方は一生独身として過ごせばいいわ。私も一生独身なのだし。」
い、いや........其れだけは嫌だ。この女は最期の時までついてくるつもりだ。
「お供します!」
うるさいわ!
(あぁ、もう神さまぁ!俺を異世界に転生させてくれぇ!)