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閑話:元悪役令嬢のその後1

 日本に転生したシェフィーリアのお話です。またしばらくしたら次を載せます。

 ここはどこかしら? 目が覚めると知らない部屋にいた。寝転んでいた体を起こして辺りを見回す。

机の上にある液体の入った容れ物や所々に穴が開いている手のなかに収まるようななにかが目についた。


「とても小さな部屋ね……。ここは使用人部屋なのかしら? それにしても家の物置よりも小さいなんて」


 でもおかしいわね。私は薬を飲んでベッドに横たわったはずなのに。もしかしてここが死後の世界というものなのかしら。

 だとすれば知らない場所だということも知らない服を着ていることも全て納得がいく。


 ベッドから降りて取り敢えず外に出ようとドアに手をかけたら、ちょうど目線の高さの位置に紙が挟まっているのを見つけた。落とさないように慎重に抜き取って二つ折りのそれを開けば、書いてあったのは「後ろの本棚」という文字。


「……本棚なんて無いわよ?」


 だけど私の目には本棚なんて映らなかった。というより、


「こんな狭い部屋に本棚なんて入れたら部屋が使えなくなるわよ? いったいどういうことかしら?」


 そして私はそのままこの部屋を後にした。


 一通りこの家の中を歩き回ってみれば全ての部屋が小さかった。中には白い塊が置いてあるだけの部屋もあった。白い入れ物が置いてある部屋もあった。一階の真ん中の部屋がようやく玄関くらいの大きさ。やはりここは余り裕福ではない貴族、男爵家辺りの使用人の家なのではないかしら? 私はそう結論付けた。


「それにしても死後の世界まで貴族という身分に縛られるのね。全く、大変だわ」


 絵画の一つもなく食器も余り良いものとは言えない。そして最もおかしかったのが、鏡のようななにか。私の知っている鏡よりも歪みが少なく、幻影を見せているよう。だって目鼻立ちも違うし第一私の髪はこんなに短く無いもの。私の髪は腰まで届く――。


「あ、れ?」


 無い。髪が。真っ黒なのは一緒。なのに無い。どうして? これが私の自慢だったのに。


 自殺したから神様に切られてしまったのか。でもだからといってこんなに短くしなくても良いじゃない。これだと外にも出れないわ。


 そんなとき、「きゅうぅ……」と切なげな音が鳴った。そういえばお腹も空いているわ。でもどうやったらご飯が食べれるのかしら?


 ぐるぐると歩き回って考えてみるけれど何をすることもできない。


「どうしましょう……?」


 ピンポーン。


「ぴゃう!」


 底抜けに明るい音が鳴った。


『おーい! 美雨いないのー?』


 こ、これは出た方が良いわよね? というか出なくては駄目よね?


 音の発生源と声のした方が違うけれど、ここは声の方に行ったら良いのかしら? 声がしたのはこの扉の先からよね?


「あ、えっとごめんなさい。美雨さんはここにはいらっしゃいませんよ。ここにいるのは私一人です」


 扉を開けてそう言えば目の前の女の子は目をぱちくりとする。この子は髪が短くないのね。崖から落ちたとかそういう死に方なのかしら? それとも髪が伸びたのかしら?


 私がそんなことを考えていたらこの子は体を小さく丸めて震えだした。いや、笑いだした。


「もー! 何言ってるのさ美雨! 自分がいるのにごく真面目に言わないでよー!」


「いえ、ですから美雨さんはいらっしゃいませんよ? ここにいるのは私一人だけですよ」


 ごく真面目にと言われても事実なのだからしょうがないと思う。


「どこのどちら様かは分かりませんが、私はシェフィーリア・オルセー、オルセー伯爵家の長女です。なので美雨さんという方は存じ上げません」


「分かった分かった。今日はそういう設定なのね。んじゃお邪魔しまーす!」


 え、あのちょっと? 人の許可もなく勝手に上がるのは……。というか設定って?


「あの? 名前だけでも教えて頂けませんか?」


「え! そこから? なんか今日は本格的だな~。 八重山桜だよ、よろしくね! じゃあ美雨の部屋へ行こっか!」


 桜さん? という方も美雨さん? という方もどうにも名前が珍しい。私と混同することなんて無いと思うのだけれど。


 置いていかれないよう階段を上る桜さんについていく。桜さんは先程私が目覚めた部屋に入っていった。どうやらここが美雨さんの部屋だったようだ。


「そういえばさ! ヒロインの逆ハールートっていうのがあるらしいよ!」


「? 逆ハー……?」


「そうそう! ほんとに謎だよねー。そんなの無理ゲーじゃん! 出来たら怖い」


「無理ゲー……?」


「もしかして出来ちゃったの!? 逆ハールートまでコンプリートしたの?」


 そもそも話が噛み合って無いので分からないのだけど……? というかそれより……。


「うわ流石だね! ちょっと美雨の見してよ! 逆ハーのってどんなスチル出るの? もしかして出なかったり?」


 嗚呼、話が終わらないっ! もう我慢の限界になりそうなのだけれど!


 きっと終わらないなと思ったので勇気を出して話を遮ってみた。


「あ、あのっ!!」


「ん?」


「お、お手洗い……」


「…………え?」


「行きたいのですけど……」


 とても不思議そうな顔をして私を見る桜さん。でも不思議そうにされたら困るんです。こちらにも乙女の意地というものがありますからっ……!


「行ってくれば?」


「ですから、その……」


「? どうしたの?」


「ば、場所が分からなくて……!」





「……………………はい?」





 以外と可愛いシェフィーリア。悪役令嬢の設定どこ行った!? と言わんばかりで私も驚いてます。


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