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4:悪役令嬢とヒーローの登場

 ちょうど逆光で相手の顔は見えない。でも、それでもこの声を私が間違えるはずがない。何故なら、この人は――。


「俺の名はレオンハルト・リスレッド! 今一度問う! 何をしている!」


 私の一番好きな人(最萌えキャラ)だから――!


「リスレッド? 騎士の家系のリスレッドか!? くそっ! よりにもよって駆け付けてきたのがこいつなんて!」


 私から飛び降りると一目散に逃げ出す。それはそうだろう。リスレッドと言えば現騎士団長の姓でもあるのだから。知らない人がいるはずがない。


「覚えてろよっ!」


 定番の台詞きたー。ほんとに言う人なんているんだ。でもちょっと古くさいよね。


 とにかく逃げてくれて良かった。あのままだったらどうなっていたか分からないし。レオンもわざわざ追わなくて良かった。


「おい、大丈夫か? 名前は?」


 レオンが声をかけてきた。ヤバイ返事できない。どうしよ。はやく返事しなきゃいけないのに。嗚呼、他のキャラだったら簡単に返事できるのにっ!


「……ん?」


「どうした、傷口が痛むのか?」


 今更だけど、レオンも攻略対象者だよね? だったら話しちゃ駄目じゃない? ……どうしろっていうのこの状況!? 未来をとるか今をとるか。究極の二択!


「それとも腰でも抜けたのか?」


 でも名前聞かれたよね? だったらこのまま逃げれば良いんじゃないかな? 不敬に当たるだろうけど少しくらい我慢しないとね。いやでも行くまで待つという選択肢もある。よし、そうと決まれば即行動!


「レオンハルト様、助けていただきありがとうございました。私は大丈夫ですのでどうぞお戻りになってください」


 立ち上がって頭を下げ、頑として動かないという姿勢をつくる。さあ早くこの場を去ってくださいレオンハルト様! 私は未来を取りますから! 今だけ我慢しますから!


「顔を上げてくれ。今は爵位なんて関係ない。同じ学院の生徒だろう?」


 レオンハルト様それ大事! でも今持ち出さないでー!!


「いえ、それでも助けていただいたのですから。これは私からのお願いです。どうかこのままお戻りください」


 お願いだから、このまま去って行ってー!! 私、心臓が飛び出そう!!


「分かった」


 良かった……。これで退いてくれる。


「君を連れてこのまま戻ろう」


「へ?」


 そう言うと私の手首を掴み、大通りへと向かう。


「な、あのっ! レオンハルト様!?」


「別に顔は上げなくても良い。だが傷の治療くらいはさせて貰わなければ気がすまない。これは私の頼みだ。勿論聞いてくれるな?」


 途中で私の鞄まで拾い、彼の従者が待つリスレッド家のものだろう馬車に乗り込む。勿論私が逃げ出さないよう手首を掴んだままで。


 忘れてたぁー!! レオンは騎士を志すような立派な人だけれど、その分頑固なんだった!


「乗れ。簡単な手当てなら俺にもできる。そのままだと傷が悪化する」


「いえ、ですから私は――」


「早くしろ」


 ぐいぐいと引っ張られる私の腕。斬られたときよりもこっちの方がよほど痛いです!


「分かりました乗りますからそんなに腕を引っ張らないでっ!」


「っ、すまん」


 もういいです。根負けしました。煮るなり焼くなり好きにしてください。……嘘です。実際にはやらないでください! 私はまだ死にたくなんてないっ!


 脳内でそんなに必死になっているなんて露ほども知らない本人は、私を奥に座らせると私の向かいにある木製の箱からタオルと包帯を取り出した。その間に扉は閉まって馬車が動き出す。二人きりだ。


「すまないな。俺は魔法の才に恵まれていないんだ。傷が残るかもしれない」


 彼はそう言って、まず剥き出しの足を拭いて包帯を巻いてくれた。次に血が滴り落ちている腕。袖を捲るよう言われ捲ったのは良いものの、自分で想像していたよりもずっと酷かった。手首から肘にかけておおよそ二十センチの傷が出来ていたのだ。そりゃあこれだけの出血になるよね。


 私の腕を見たレオンも痛ましそうに顔をしかめた。足と同じように乗せるようにタオルで拭き、包帯を巻く。そして次に、首に手を出してきた。


「なに、するんですかっ!」


 よく考えなくても私の質問はおかしい。怪我をしているのだから手当てをするのは当たり前だ。


「止血だ。何故拒む?」


「レオンハルト様は先程顔を上げなくても良いと仰いました!」


「治療は別だ。首の傷は命に関わるかも知れないんだぞ」


「そんなの貴方に関係ないでしょう!」


 普段の私であったらこんなことはしなかったと思う。でも本物の、生きているレオンがいるという興奮と顔を見られたくないという焦りが、彼の顔を叩くという形で表されてしまった。


「あ……。も、申しわけっ」


「お前なっ! いい加減にっ!」


 尚も拒んだ私に、怒りが我慢できなくなったのだろう。顎を掴み、上を向けさせる。そう、少女漫画や乙女ゲームでよく見かけるあの顎クイである!


「へ?」


 目の前には瞳に怒りを宿したレオンがいる。もう一度言おう。レオンの顔が私の顔の前に――。


「p●£:%¢∞mあ*″¥♂″ぃゆ@%&∞!!??」


 未知の言語が私の口から溢れ出した。いやちょっと待てこれはシャレにならないくらい精神的にまずいっ!


「は、はなして――」


 だけど私がすべてを言い終わる前に顎は放され、レオン自身も離れて行った。


「な、シェフィーリア嬢……?」


 レオンの顔からは怒りが抜け、愕然としたものに変わっていた。


 展開が早すぎない? って思う方とか居ますか? 自分的にはこんな感じかなと思ってるのですが……。


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