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3:悪役令嬢VS ごろつきども

 シェフィーリアお怒りの回です。

 全くもって訳の分からん場所に降ろされてしまったシェフィーリア。「どうにかして学園に行かなければならないのにっ!」と考える彼女の周りに見知らぬ男性達が。その正体は実家からの追っ手……。


「シェフィーリアの運命やいかに! なんてね」


 そんなこと考えてるんならとっとと動けば? とか言われそうだな。でも考えてもどうしようも無いんだもの。


「取り敢えず馬車が去った方へ行ってみようかな」


 安直な考えによって導き出された答えに従って歩き始めた私の耳は、通りの反対側の路地から聞こえてきた騒音をキャッチした。


 瓶の割れる音、柄の悪い男性の怒声、年若い女性の涙混じりの叫び声。


 はっきり言って逃げたい。聞かなかったことにしたい。助けになんて行ったら私がどうなるか分からないのに。頭の中とは裏腹に自然と体は動いていた。


 駆け寄ったその先で見たのは、私と同じ制服を着ている、否着ていたであろう少女二人といかにも頭の悪そうな顔をしたごろつき数名。彼女達は辛うじて下着を身に付けているだけであられもない姿になっている。足元には破かれた制服。


「……っ! 助けて!」


 助けるつもりじゃなかったらこんなとこに来ないよ。


 一人が私に泣きながら助けを求める。そしてどうやらごろつきは私もターゲットにしたらしい。


「おいおい嬢ちゃんよ。こんなところで何してるんだい? 金持ちなんだから馬車でも使えば良いのによぉ」

「逃げてっ! お願い、逃げて助けをっ!」


 私が弱いと思ったのか先程と真逆のことを言う。しかしその言葉は途中で止められた。少女が顔を殴られたことによって。


 ああ、本当に何してるんだろうか私は。いつもみたいに能天気にするはずが、どうやら私は怒っているらしい。どうにも感情のコントロールが出来ない。人が怒ると冷静になるとは事実だったのか。


 今の私はシェフィーリア・オルセー。ならば悪役令嬢として貴族の権利を振りかざして真っ向から叩き潰してあげましょう!


 努めて冷徹に声を上げる。


「貴方達。誰に不敬を働いているか分かっているの?」

「何だやる気か? 俺たちはこれでも元ようへ――」

「だからなに?」


 相手の注意を完全が完全に此方に向くように。相手の言葉を途中で止めることによって不快感は増すだろう。


「この私を不快で不愉快な気持ちにさせておいてそれかしら? 本当になってないわね」


 この言葉にごろつきが反応する。


「てめえ何様のつもりだっ!」

「名乗る理由があるかしら?」


 どうやら私は本格的に餌から外れたらしい。奴等の私を見る目は敵に対するもの。


「行きなさい」

「で、でもっ!」

「言い換えるわ。助けを呼んできて頂戴」


 というかとっとと行って。人質取られたら確実に負けるから。あと早く化けの皮剥がしたいから。


 助けを呼んでくるという使命を与えられたこともあってか、二人とも地面に落ちていた制服で前を隠しながら大通りへと逃げていった。


「これで嬢ちゃん一人だなぁ。あいつらを逃がしたせいでこっちもいらいらしてるんだ。全員分の相手、してもらうぜ?」


 全く、私はただの貧弱な小娘じゃないんだけど。体はシェフィーリアでも中身は三神美雨。


「あんまり私を舐めないで? これでも元黒帯持ちだよ? っていうか全員分の相手とか不潔」


 話しながら鞄を斜め後ろに放り投げて左足を下げる。


「やれ」


 相手が元傭兵だろうが知るか。親に通わされ続けた少林寺拳法の強さ、思い知るがいい!


「この餓鬼がぁああ!!!」


 背後さえ取られなければ特に問題は無い。と思うんだけどこの人数はさすがに厳しいかな? 助けは来ないだろうし途中でなんとか逃げるしかないな。


 初めの攻撃は上段突き。相手の重心がばらばらだから体捌きだけで避けれる。特にこういう重みのない攻撃は。すれ違い様に中段突き。


 一度で相手を潰せるようにしたい。少林寺憲法はそうは出来てないから速さでカバーする。


 今度は左右から二人同時。一度しゃがんでから左の相手の後ろをとって一人ずつ倒す。


 そして最後の一人。踏み込もうとしたその時、視界の端で鈍く光る金属を捉えた。


「いっ!」


 頬に熱が走る。どろりとした液体が輪郭に沿って顎まで続く。


(ナイフ!?)


 金属の正体はナイフ。ペーパーナイフなんて優しいものではなく小刀と呼ぶべきか。刃渡りは十五センチ程度。


「ははっ! 怖じ気付いたか!! 今までの威勢はどうした!?」


 さすがにナイフはまずい。実物を使われたことがないから対応の仕方が分からない! その間にも相手は攻撃を繰り返してくる。眉間、腕、心臓――。


 制服が斬られ肌が露出する。お嬢様らしく白いそれに相手は欲情したようで猥雑な笑みを浮かべる。


「この変態がっ!」


 自分に向けられる視線ほど気持ちの悪いものはない。避け続けるうちに、倒した男の体に足を引っ掻けて派手に転んだ。首元にわざと傷を作るようにナイフを突き刺される。


「残念だったなぁ。助けなんて来ない、観念しな」

「ふざけないで。まだ敗けと決まった訳じゃない」

「強がりも程々にしておけ」


 手が伸ばされる。肌に触れそうになったその時、


「何をしている!」


 助けの声が響いた。


 さて助けに来たのは誰なのか?


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