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18:悪役令嬢とレオンハルト様

 遅くなりました……!

「待て、いやだって大丈夫じゃないんだろ!?」


 慌ててるレオンかわいい……!


「昨日来てすぐに診ていただきました。今はもう完全に治っていますよ」


 ほら、というように私が腕を巻くって見せるときめ細やかな白い肌が現れた。こんな体を自分が使っていると思うとなんか吃驚するよね……。


「じゃ、じゃあ大丈夫じゃないというのは……?」

「私の考え方が大丈夫じゃないという話をしていたのでは無いですか?」


 うん、本当は私の頭が大丈夫じゃないっていう話をしていたと思っていたんだけど……。黒歴史確定かな。

 クリスティーナ先生は微笑ましそうに笑っているし、やっぱりこういうほわほわした感じが好きだなぁ。


「え、ぁ……」


 みるみるうちに赤くなっていくレオン。耳まで真っ赤になっててかわいい……。林檎みたいだな。……林檎ってこの世界にあるのかな。「レオンハルト様は林檎って知ってます?」って聞いてみたいなぁー。


「いつまでもいちゃいちゃしてたら時間無くなっちゃうわよ? それとも、先生お邪魔かしら?」


 意味深な笑い方止めてください先生! 私とレオンはそんな関係じゃないのですっ。

 こんな感じであまり動揺してない私と比べてレオンは全くと言って良いほど耐性がないようだ。


「な……! ち、がいます……!」


 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ! 何これ癒しが! 尊いっ!! え、昇天しそうなんだけど……。

 思わず顔を覆ってしまう。尊さで目がやられて死んじゃう……!


「シェフィーリア孃……。その、降りていただけるとありがたいのだが……」


 小さな弱々しい声が聞こえてくる。照れてるんだよね。ゲームじゃこんなところまで見られなかったから新鮮だぁぁぁ! やばいやばい辛い……!


「あの、シェフィーリア孃?」

「あ、ごめんなさい! わざわざありがとうございます」


 いつまでもレオンの腕の中だとさすがに心臓がもたない……。今だって結構どきどきしてるんだけどなぁ。


「それでは失礼します」

「失礼します」


 レオンと二人で保健室を出る。クリスティーナ先生のところにいると心が浄化されるよね。そこにレオンまで追加されて効果が桁違いだよもう!


「シェフィーリア孃はどこまで付いてくる気なんだ?」

「へ?」


 気付いたときにはレオンが立ち止まっていて訝しげに私を見ていた。辺りを軽く見てもおかしなところは無いと思う。


「どこまでも、ですけれど……?」

「言いにくいが……用を足すところまで付いてこられるのは、その、あれだ」


 用を足す……? それって、トイレ!? 一秒もかからずに正解を導きだした私はすごいと思う。それにしてもこっちの世界ではトイレって言葉が無いんだろうなぁ……。あったら回りくどい言い方しないもんね。


「すみません、外で待っていますね」

「……」


 どうして外で待っているって言っただけでこの威圧!? おかしくない!?


「……シェフィーリア孃」

「はいっ!?」


 待って待って怖いんだけど……!


「もしかして……」

「はい……?」


 怒られるのか怒鳴られるのか殴られるのか……! いや、紳士なレオンはそんなことしないか。あれ、じゃあ安心? え、あれ!? 頭がこんがらがってきた……。


「道が分からないのではないか?」


 え、なんでそのことを……? 怒られているわけではないってことで安心はしたけど……。なんで道の話?


「確かに、分からないです……」


 道が分からないってやっぱりまずいのかな。授業ほったらかしてることと同じくらいまずいのかな。


「ならそうと言ってくれ。案内するから」


 ……案内? え、案内?


「レオン様が……?」

「レオン?」


 あ、やってしまった。


「レオンハルト様が案内してくださるんですか?」

「あ、あぁ。ところで、レオンというのは……?」

「じゃあ早速行きましょう! 場所が分からないと大変ですしね!」


 私はシェフィーリア・オルセー。間違えたことを無かったことにしようとしてる女っ! 心のなかで拳握ってるけど別にいいよね。外身は可憐な女の子だし!


「シェフィーリア孃」

「はい?」


 ぐいっと引っ張られたのも、爽やかな柑橘系の香りがすることも、腰の後ろに軽く回された温もりも、こんなに顔が近いのも。全部気のせいだと思った。


「シェフィーリア孃」

「は、い……」


 声が私の耳に届くとき、微妙に温かくてくすぐったい。なんで、こうなってるの。


「シェフィーリア孃、レオンとは、俺のことか……?」


 怒ってる、のかな。なら、謝らなくちゃ。謝らなくちゃいけないのに。恥ずかしくて、言葉が出ない。


「ぁ、う……」

「俺のことで、あってるよな」


 疑問符がない。確信してるならわざわざ聞かないでくれ。心臓が音を立てて肉を突き破って出てきそう。


「ごめ、んなさい……」


 謝ったら、腕の力が少し弱まった。


「いや、その」


 何か言いにくそうだ。まだモゴモゴとしてる。


「もう言わないように気を付けますのでーー」

「き、気を付けなくて良い!」


 へ?


「レオンで、いい。シェフィーリア孃に呼ばれるのは、悪くない」

甘く、できた? と、思います……。

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