17:悪役令嬢と謎のお社
皆さんおはようございます! これからの更新は20時か7時頃になると思います!
ーーお社。
木材と石材で造られた、神を祀る祭壇。恐らく朱色で統一されていたそれは砂埃や枯葉、小石によって見るも無惨な姿になっている。
誰も手入れをしていないようだ。それどころか、長年人の立ち入った形跡が無い。
しかし私が感じた最大の違和感は、別のもの。
「……どうして、お社なんてあるの?」
根本的な疑問。ここにお社なんてあるはず無いのだ。確かにこの場所はゲームに出てこなかった。出てこなかっただけで存在したかもしれない。が、あくまでもこの世界は戦姫ジュリエッタの世界なのだ。製作者が世界観を壊す設定を態々付け加える理由がない。なにより。
なによりこの世界にーー神は存在しない(・・・・・・・)。
だからお社で祀られる神はいない。
なればこそ、お社がここにある理由が無い。道理が無い。理論の筋道が成り立たない。
この世界には神はいない。カミサマがいるとしても信仰されていない。信仰されていない神は存在することが出来ない。
それが世の理。……まぁ、日本での話だけどね。
「さて。どうしよっかなぁ……」
どうしようと言ってみたは良いけれどどうしようもこうしようも無いのだ。
来た道などとうに無いのだから。
何時の間に現れた半透明の壁。近付かなきゃ見えないだろうけどあいにく私は目が良い。こんなこと関係ないか。
この小さな広場みたいな場所にあるのは壊れかけのお社のみ。あとは土と枯葉と枯木と砂埃と小石しかない。
「……掃除でもすれば良いの?」
こんな考えに至った私を責めないで。私の頭は既におかしくなってるみたいなの。なんで森を抜けようとして別の場所に来てるのかとか誰も聞いたら駄目よ。
「全ての謎は置いといてこのお社をどうにかしないとなぁ……」
仮にもお社だ。祀られる神がいなかったとしても、誰かが何かの為に建てたのには代わり無い。物には魂が宿るというのだし、汚れたままというのも可哀想だよな。誰だって綺麗な寝床の方が嬉しいよな。
「壊れてるところを直すのは流石に無理だけど……」
枯葉を払う程度なら、と手を伸ばした。
壊れかけたお社に手が触れたとき、視界が、ぐにゃりと曲がった。
「……っ!?」
ずるり。私の耳には、そう聞こえた。渦巻いた空間のなかに手首までが埋まっている。
「引きずり、こまれる……っ!」
必死に手を抜こうとしたけど飲み込まれるばかり。やがて歪みの中心に引きずり込まれそうになって、思わず目を瞑る。
お社のあった場所から居なくなったとき、私は空にいた。
「…………へ?」
感じたのは引きずり込まれなくなった解放感と空に投げ出されたことの浮遊感。
空が綺麗だなぁと一瞬でも思ったのは馬鹿だ。空はどんどん遠ざかっていくのに。
ここで私は気づいたことがあります、はい。
「落ちてるんだけどぉぉぉ!?」
え、ちょっとまずいまずい! どうしたらいいの誰か助けてぇぇええ!!!
下を見てないからいつ地面にぶつかるか分からない。せめてもの抵抗として身を丸める。
そうして落ちた先にあったものは、人肌の温かさとちょっとした衝撃だった。
「シェフィーリア孃? どうして空から……?」
いや、ちょっとしたなんてものじゃない。空から落ちた私を受け止めたのはあのレオン。レオンハルト・リスレッド。前にも言ったけどレオンは私の最萌えキャラ。最推し。そんな人に抱き締めて貰えるとかーー!
「……もう無理死ぬ」
「シェフィーリア孃?」
しかも本当の名前じゃないとしても私の名前を呼んでるとか……。昇天しそうです……。
「すみません、降ります」
「あ、あぁ」
うわぁぁ、バスから降りるみたいになってしまったっ! なんかもう最悪だよね……。
てか無理だよ無理でしょ辛いんだよ。話せるわけ無いでしょ。もう立ってるだけで格好良い。でも何か話さなきゃ。私の頭大丈夫かな? 大丈夫じゃないことを私は知ってる!
「……大丈夫、なのか」
ぼそりと聞かれた。何これかわいい。
「大丈夫ですよ。ちょっとおかしくなってますが全然平気です。むしろ通常運転です」
「おかしくなってるなんてまずいだろ! 先生に見せたのか!?」
「見せられないし見せるほどじゃありませんよ」
そう言った直後に私は抱き抱えられていた。
誰に? レオンに。
「な、ななななななにしてっ」
向かった先は校舎。見覚えあるなぁって感じたときには既に来たことがある部屋にいた。
「メルビウス先生! シェフィーリア孃の腕を診てくださいっ!」
大慌てで入ったレオンにクリスティーナ先生は言った。
「昨日診たわよ?」
うん、昨日診ていただいたね。
「腕は昨日診ていただきました」
ポカーンとしてるレオンも格好良いよね。やっぱり好き。
「……はぁ?」
久しぶりのレオン様ですね。どことなく懐かしい




