15:悪役令嬢とお話ししてたのは幻の精霊でした
久しぶりの投稿です! またよろしくお願いいたします!!
『お前、腕怪我してるだろ』
言いながら緑の小人に腕を指された。確かに怪我はしてるけど血は出てないはず。もし血が出てたらまた制服が汚れちゃう。
「怪我はしてるけど大したものじゃないよ?」
「怪我だと? 早くクリスティーナ先生に見せに行け」
「昨日すでに見せました」
先生も会話に入ってきた。敬語やらタメ口やらが混じって嫌だな。だから目上の人と知り合いと同時には話したくないんだ。誰か代わりに喋ってくれ。
「処置が適当だと悪化するぞ。見せてみろ」
先生がやったんだから大丈夫なのに、なんて思いながら制服の袖を捲って包帯を外していく。かさぶたとなった傷が露になったところで……怒鳴られた。
「これを大したものじゃないだと!?」
『なに? マゾヒストだったりするの? これについてどうも思わないの?』
いや、あの二人とも近いです。
『取り敢えず治すからね』
蔓が傷をすべて隠すように巻き付くと、内側から光が漏れ出してきた。
『これでいいぞ』
蔓を外された時にはもう傷はなく、前より艶があるような気もする。おお、肌ももちもちだ。この蔓、いったいどういう仕組みなのかな?
「さすが精霊だね。いったいどういう仕組みなのかな? シェフィーリア、通訳をお願いできる?」
「え、あ、はい」
あれ、先生キャラ変わってない? というか先生も同じこと考えてたのか。先生ちょっとオタクっていうか科学者みたいだからな。やっぱり仕組みに興味があるんだろうな。
「荊を操る精霊、あの幻の薔薇の精霊かい?」
『幻かどうかは知らないけど薔薇の精霊だね』
薔薇の精霊はゲームの最終章で出てきたな。確か捕らえられていて戦姫たちに助けてもらうはず。正確に言えば薔薇の精霊がラスボスなのだけどね。
……あれ? ここに居たらゲームどうなんの!? え、あれ?
『俺は俺だぞ。気づいたらこの辺にいたんだ』
「え、気づいたらこの辺にいた……?」
「なるほど、それは少し興味深いかも知れない! 昔精霊は分身を作ることも可能だと聞いたことがあるよ。彼は本体でなく薔薇の精霊の分身なのかもしれないね。本物はこんなところにいるはずないから。もし分身だと仮定したとして、記憶が無いのは何故かな? それは何らかの外的要因があったりするのかな? 能力的な差は? いやそもそも新しい人格なのかな!? ねえ、シェフィーリア、彼は何と言ってるの!?」
なんか先生の目がめっちゃ輝いてる! オモチャを見つけた子供ですか貴方は!? ほら精霊なんてめっちゃ引いてるよ! 私の後ろに隠れちゃったよっ!
『お、おおおれはもう行くぞ! 行くからな!』
「あ、ちょっと待って!!」
森の方に逃げていった精霊を追いかけるように走っていく先生。速度が違いすぎるから追い付かないと思うんだけど……。
あ、転んだ。
……動かないな。先生大丈夫かな?
「先生? 大丈夫ですか?」
ゆっくりと仰向けに戻せば、目を回していた。まあ、貧弱っぽいしなぁ。女の子みたいな白くて細い腕。私と同じ漆黒の髪が、どこか触れたら壊れそうな儚さを現している。魔術の達人でも武術の達人では無いのだ。日頃運動もしていないのかもしれない。そう思うと、向こうに残してきた弟が気にかかる。
もう、会えない。
それが心に酷くのし掛かって、自分が潰れそうだ。
……。取り敢えず先生を起こさなくては。
「起きてください先生。皆が帰ってきます。先生!」
しばらく呼び続けても起きなくて、結局起こすのに十分くらいかかった。「精霊について調べるんじゃなかったんですか!?」とは起こしたときの台詞。
……初めからこう言えば良かったんだね。
「えっと、これから私も探索に向かった方が良いのでしょうか?」
そう、私だけ話があるからと言われて残ったのだ。このままじゃ私だけずるい子になってしまう。元からずるいと思われていたかもしれないけど。
「そうだよね、シェフィーリアも行かなきゃだね。じゃあ行ってこようか」
え、そんなに軽くて良いの?
「はあ、まあ行ってきますね」
先生の目が輝いていたことは気のせいにしておこう。いったい何に期待しているんだろうね。
苦笑いをしながら、私は森へと入っていった。
ところでこれじゃ現場監督とかにならないよね? どうしてるんだろう。あとでリリィとレスに聞いてみようか。