11:悪役令嬢とその婚約者(攻略対象の筆頭)
今回はちょっと短くなりました。
さて、ご飯も食べ終えたことだし。取り敢えず部屋に戻ろうかな。
「私、一度部屋に戻りますね」
「私たちも戻るので、またあとでそちらに向かいますね」
「一緒に教室まで行きましょう! 私達同じクラスなんですよ、シェフィー」
同じクラス……!? 良かった~。知らない人ばかりのところにあとから入っていくのって大変なんだよね。
そんなことを喋りながら廊下へと続く出入り口へ向かうと、目の前に見たことのある人が現れた。
「珍しいな。お前がこんなに早くからいるとは」
白銀に近い金色の髪。人を貫く鋭い眼差し。そして何より、傲慢なその態度。
この男は、私の婚約者でこの国の皇太子、そしてゲームの中心人物である攻略対象の筆頭――アルフレッド・グローム・ド・フェンリアス。
更に言えば、シェフィーリアをとことん嫌っている「馬鹿」である。
「ごきげんよう、アルフレッド殿下。私がいつ食堂に来ようが私の自由ではなくって?」
シェフィーリアの敵は私の敵! とことん嫌ってやるから覚悟するんだな! 残念ながらあんたは推しキャラでも何でもないんだから!
だからこそ、わざと刺々しい態度で対応する。嫌ってくれるならこっちのもの。
少し顔が歪んだのは気のせいかな?
「そういえばシェフィーリアよ。お前は昨日の授業に出なかったみたいだな。何をしていたんだ?」
「あら、では先程の言葉を言い換えてもう一度伝えましょうか。私がいつどこで何をしていようが私の自由ではなくって?」
ていうかとっとと退け。私はそこを通りたいんだから。いや、退かなくても良いから私に対して興味を失ってくれ。なるべく早く。というか、今すぐに。
「ほう、おかしくなったというのは案外事実だったか。可哀想なことだ」
「そう思いたければそう思えば良いのではなくて? 私は貴方に用はありませんし、これで失礼しますわ」
もういいよね!? もうここから逃げて良いよね!? 人に注目されるとか嫌なんだけど私! なにか言いたげだけど知らないからね!
早歩きで廊下に逃げ出して視界からアルフレッドの姿を追い出す。全く、現実にあんなキャラがいると本当に面倒くさいなあ。
別にアルフレッドのことは嫌いじゃない。むしろヒロインに一直線で好きな方。だけどシェフィーリアに対する態度だけは許容出来ないんだよね。裏話を知っている身としてはなかなか筆舌に尽くしがたいというか。
王になる素質はあるのに権威を振りかざすような人だったんだよね、初めは。
まあそれはおいといて。教室に行く準備をしなくちゃ。今日は何が必要なのかな?
「シェフィー!」
ん?
「もう、おいていくなんて酷いですわ!」
「そうですわ! 残される此方の身にもなって下さいませ!」
「も、申し訳ありませんでした。少し頭に来てしまったもので。置いていく気は無かったんですよ、リリィ、レス」
忘れてた! ごめんよ二人とも。でも二人とも大事な友達だからね!
「もう! 今回だけですわよ!」
「次からは許しませんよ!」
「ふふ、ありがとう二人とも」
「そ、それよりも今日の授業について何も聞いていないのでしょう?
昨日は自己紹介と教科書の配付くらいしかありませんでしたから特にやることもなかったんですの」
「ですけど今日は初めから実技だそうですよ。ですから校舎内に行くのはまたの機会にしましょう、シェフィー」
なるほど、今日は実技か~。ちょっと楽しみだな。やっぱり魔法の授業なんだろうな。
「それでは案内も兼ねて早めに出発しましょうか」
……ストックがそろそろ切れそうです。
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