0:悪役令嬢になりました?
初の悪役令嬢転生ものです。作者と美雨のテンションがおかしな部分が多目ですが初めてなんだなぁと甘く見てください。
冷たいのに心地好い。動けないのに安心する。ここは、どこだろう。知りたいと思うのに知らなくていいとも思える。
目が開かない。声も出せない。さて、どうしようか。全く、私ってどうしてこんな状況で冷静なんだか。
まあいいや。それよりももっと問題なのは私のからだが動かないこと。まるでからだの動かしかたを忘れたみたいに反応しないこと。
(これがいわゆる金縛り? うわあ、妖怪とかって本当にいたんだ。神様とかもいるのかねぇ)
そんなとき、聞きなれない声がした。
『はいはい色々と考えてるところごめんね。お嬢さん聴こえるかな?』
頭の中に直接聞こえてくる感覚。とてつもなく気持ち悪い。
見えないのにわかる「誰かがいる」というそれが私にとっては逃げ出したくなるほど不快でたまらなかった。
(まぁ聴こえるけど……てかお兄さん誰?)
『対応が雑な気がするんだけど……ま、いっか。オレは神様だよ。異世界との境を司る誰も知らない知るはずのない神様。ちなみに性別はありません』
作り笑いしているような声。寂しい、のかな。私みたいにひねくれた性格なのかな。
(え、性別ないのか。じゃあお兄さんじゃ無いんじゃん。なんて呼べば良いの?)
性別無いってあれかな。生殖機能がないってこと、だよね。子供とか新しい神様とかどうやって生まれるんだろうか。そんなどうでも良いことを考えていればまた神様の声がした。
『神様で良いよ神様で。オレっていうのは便宜上の一人称ね。便宜上って分かる?』
(あれでしょ。取り敢えずって感じなやつ)
『その取り敢えずってやつで合ってるよ。オッケーオッケー』
(なんか軽いね、私もだけど)
簡単にカミサマと会話してるけど良いんだろうか。あとで私、バチ当たったりしないよね? というか訳がわからなくなるのでカミサマって呼ぶことにします。異論反論は認めません。
『いや、軽いって言うよりもキミがオレの話を理解できてるからこそのスムーズな会話だね』
え、なら普通の人は理解できないんだろうか。これくらい普通の範囲内では? でも確かにテンション上がってるかも。
(今の私は精神だけでカミサマ達の領域にいるんでしょ? やっぱり死んじゃった、私?)
予想していたことを聞けば歯切れの悪い返事が帰ってきた。
『えーとね、死んじゃったは死んじゃったなんだけど普通の死に方じゃ無かったんだよね。キミの場合は』
(それはどういう?)
『ちょっと長くなるけど聞いてね』
そう前置きしてからカミサマは喋り始めた。
『キミの死因は交通事故でも殺人でもなく自殺なんだよ。でもそれはキミの、三神美雨の意思じゃない。キミと重なったとある少女の意思に共鳴してキミの無意識が行ったことだ。つまりキミはまだ生きることができるはずだった。死ぬ運命ではなかった。本来なら靈の共鳴を起こさないようにするのもオレ達神様の仕事なんだけどキミの世界の神様は今とても忙しくてね、手の出しようがなかったみたいなんだよ。ここまで大丈夫?』
(うん。分かんないけど分かった)
『……それ分かったって言うのかな?』
あ! あきれ口調で言われた! 私これでも頭は良かったんだぞ!!
(共鳴の仕組みとかまだまだ分からないことはたくさんあるけど話の流れは分かったよ)
『やっぱりキミ頭良いね』
(そう? まあこれでも勉強できる馬鹿だったし)
照れ隠しにちょっと鼻高々になってみたら笑われた。なんだよぅ! 感情まで読み取るなよな!
『勉強が軽くできればいいんだよきっと。キミはそれで楽しかったんでしょう?』
楽しかったか否かと問われれば答えはひとつしかない。私の頭のなかを走馬灯みたいに記憶が駆け巡った。
(……うん。幸せ、だったよ)
『……そろそろ時間も無くなってきたから手短にいくね。肉体と精神が分離したキミ達は本来なら輪廻転生するはずなんだけどそれじゃ可哀想だろってことで体を交換して第二の人生を送ることができるようになった。お詫びとして更にオレ達からチート能力をプレゼント。それは向こうについてからのお楽しみかな?』
(その子は? もう一人の子はどんな子なの?)
やっぱり興味があるのだ。どんな子なのかって。ぜひともお話ししてみたい。まぁ無理だけど。
『キミが嵌まっていた乙女ゲーム、戦姫ジュリエッタ~虹の貴公子達~の悪役令嬢役のシェフィーリア・オルセーだよ』
(……は?)
『つまりキミは戦姫ジュリエッタ~虹の貴公子達~の世界に転生するの。正確に言えば酷似した世界に』
(え、ちょなに? シェフィーに転生?)
『大丈夫だよ。行けば分かる。じゃあまたあとでね』
話の流れが一気に速くなったんだけど!! て、もしかしてこれで終わり? もう転生しちゃう? 待って! まだまだ言いたいこととか聞きたいことが!!
(てか、なんで乙女ゲームが趣味なことしってんのよぉぉぉぉ!!!!)
恐らく強制的な眠りにつかされた私は辛うじて残っていた脳みたいなところを塗りつぶされた気分になった。でもそれは、決して嫌なわけではなくてむしろ心地いい。誰かに抱き締められているかのような安心感。
『さよなら、愛し子。もしかして君はオレを見つけてくれるかな……』
そうして私はその温かさにくるまって意識を手離した。大切なことを聴き逃したまま……。
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