resistants and teaching of the duchess 1
ある日の晩。
遅くまでリビングで仕事をしているとドアが開き、さっき寝たはずの少女がリビングに、目をこすりながら入ってきた。
手には、お気に入りのぬいぐるみを持っている。
どうしたの?眠れないの?
そう尋ねると、少女はこくんと頷く。
じゃあ、また絵本を読んであげる。お部屋に戻りましょう。
うん。
自分は立ち上がって、少女の手を引いた。
絵本を半分ほど読んだところだったろうか。
寝ぼけまなこで、少女は尋ねる。
ねえ、わたしのこと、好き?
ええ、好きよ。世界で一番大好き。
そう言うと、少女は微笑んで目を閉じる。
ありがとう、ママ。
そして、穏やかな寝息を立て始めた。
愛してるわ、アリス。
ああ、そうか。
これは、アリスと、その母親の日々の記憶だ。
アリスも、母親も、心からお互いを愛している。
だからこんなにも、温かい気持ちになるのか。
だけど、どうして。
同時にこんなにも、胸が痛くなるのだろう…。
ゆっくりと、意識が浮き上がってくるのを感じる。
手足の感覚が戻り、耳に風の音を聞き、まぶた越しにわずかな光を見る。
そして俺は、ゆっくりと目を開ける…。
「ぐえっ?!」
…前に、腹に思いっきりなにかが刺さり、俺はむせて目を見開く。
目の前には、やたらとがった顎を俺の腹の上に置いて、俺の顔を覗き込む巨大な歪な顔。
「うおっ?!」
俺は思わず勢いよく後じさり、いつの間にか寝ていたベンチからずり落ち、頭を打つ。
「あら、目が覚めたのね。」
そのやたらけばけばしい服をまとったおばさんが言う。
あんたが目を覚まさせたんだよ!!
つーかあんた誰?!
俺が頭と腹の痛みにお悶絶しながら、声なき叫びを心の中であげていると、聞き覚えのある声が次々とかかってくる。
『あー、龍太が起きた!』
「やっと起きたか、荒木。」
「おう、よく寝たか、兄ちゃん。」
「おはようございます、荒木先輩!」
「大丈夫ですか、荒木さん?」
顔を上げると、目にしたのは次々と駆け寄ってくる仲間たち。
良かった、全員無事か…。
『あれ、龍太ー、なんでおなかと頭押さえてんの?』
頭は打って、腹は顎で刺されたんだよ。
「早く立て、荒木。」
「兄ちゃん、いい加減起きろよ。」
「まだ眠いんですか、荒木先輩?」
だれも察してくれねえ…。
「荒木さん、さっきベンチから落ちてましたけど、頭大丈夫ですか?」
詩織、それは俺を心配して言った発言だよな?
決して俺をけなしてるわけじゃないよな?
頼むから、その言い方はやめてくれ…。




