the fierce battle in the croquet court 10
あまりにも鎧坂のリスクが大きいが、上空からのおとり作戦は効果てきめんだったらしく、チェシャーネコは声につられて上を見上げて、俺たちから意識を逸らす。
「今です!文字魔法、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』、『拘束』!対象、チェシャーネコ!!」
その瞬間、合計十本の白い鎖がチェシャーネコに絡みつく。
「ギャギャ?!」
チェシャーネコは慌てて振りほどこうとするが、今度はそう簡単には壊れない。
「うう…、逃しません、逃しませんよ…。」
振り返れば、ぜえぜえと息を荒げ、万年筆を杖代わりに立っている。
「詩織まで無茶を…。」
「むしろ、なんで無茶をするのが自分だけと思ったんだ?兄ちゃんだけに無茶させておくわけないだろ。」
弾正さんは俺に言う。
「良くやった、詩織。これで隙ができた。」
そう言って、鞘華は溜めこんでいた衝撃波を、一気に刃から解き放つ。
「ギャギャッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
それに対抗すべく、チェシャーネコは大量の鎖で壁を作る。
鞘華の衝撃波は鎖の壁を見る見る削っていくが、削り切る前に消失した。
「次は俺だな。」
そう言って、弾正さんは薄くなった壁の部分に巨大な白い弾丸をぶち当てる。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!」
だがチェシャーネコは、両腕の爪と全身の鎖全てを動員して、弾丸を受け止めきった。
「くそっ!!」
あともう少しだったのに…。
「いや、これでいい。」
すると、上空から声がした。
「頭がお留守ですよ!トランスフォーム、ゴーレム!」
見上げると、チェシャーネコへと落ちてくる巨大な影。
鎧坂のゴーレムは、はるか上空からチェシャーネコへと落ち、渾身のドロップキックをかました。
「グエッ!!」
顎を地面へとめり込ませ、チェシャーネコは舌を出して倒れこむ。
舌の錠前が、無防備になった。
「これでおしまい。」
そして鞘華が衝撃波を放ち、見事に黒い錠前を真っ二つにした。
「ギャギャギャ、ギャ、ギャ…。」
チェシャーネコは今度こそ意識を失い、その身に絡みついていた黒い鎖は完全に消え去った。
「や、やった…。」
俺は呟くと、その場にへたり込んだ。
その時、周りで仲間が次々と倒れていった。
みんな、限界を迎えていたのだろう。
鎧坂なんか、上から落ちてきたせいで頭が地面にめり込んでいる。
あいつ、生きてるかな…。
仲間の心配をしながらも、俺自身も意識を闇の中へと手放した…。
近づいて来る、無数の足音に気付くことなく。




