the fierce battle in the croquet court 8
俺はパワー特化型だが、今のチェシャーネコのパワーには僅かに及ばない。
しかもスピードでも、体格でも劣る。
俺に、チェシャーネコに勝てる要素は全くないように思える。
だが、俺には技術がある。
自分の無意識の世界にいる間、リョウと共に身に着けた、技術が。
その技術のおかげで、今俺はチェシャーネコと渡り合えていた。
チェシャーネコの凄まじい攻撃を、躱し、いなし、打ち消す。
鎖が掠る程度なら、詩織の『守護』が俺を守ってくれる。
俺は一切ダメージを食らっていなかった。
だが同時に、こちらの攻撃も一切通じていない。
どんなに全力の一撃を繰り出しても、黒い鎖の楔帷子に阻まれる。
一撃食らうだけでもヤバい俺と、楔帷子に守られているチェシャーネコ。
状況は、こちらのジリ貧だった。
俺だけならば。
だが、後方には弾正さんと鞘華がいる。
さっきから、特大の一撃を与えるために、溜めに入っているはずだ。
それに、鎧坂の鎧と詩織の文字魔法の支援があれば、十分勝機はあるはず。
だから今は、我慢の時だ。
何十回、爪とハンマーで打ち合っただろうか。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!」
粘り続ける俺に業を煮やしたか、チェシャーネコは爪での攻撃をやめ、大きく後方へと飛ぶ。
そして身に纏っていた鎖を解き、それを全て俺の方に飛ばして来た。
無数の黒い鎖が、俺を押しつぶさんと押し寄せてくる。
くそ、さばききれねえ!
「リョウ!」
『うん!』
俺はその場でハンマーを持って高速で回転し、凄まじい暴風を起こし、それは巨大な竜巻となる。
黒い鎖が全方位から俺を襲うが、それらは全て竜巻に呑みこまれ、砕かれる。
これで、チェシャーネコが俺に鎖が効かないと思って、爪での攻撃に再び切り替えてくると俺は読んだのだが…。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
鎖を破壊されて逆上したのか、チェシャーネコはより一層鎖で攻撃を繰り出してくる。
その間、俺は竜巻を起こし続けなければならない、限界を迎えるまで。
『龍太…。』
リョウが心配そうな声を出す。
くそっ、どうする?
このままじゃ、限界を迎えて竜巻を起こせなくなって、鎖の攻撃を食らって終わりだ。
鞘華と弾正さんは、まだなのか?!
呼びかけて確認したくても、今の俺たちは大声を上げる余裕もないほどだった。
そして遂に、俺は限界に達する。
足元から崩れ落ち、回転を止めてしまった。
竜巻は徐々に勢いを弱め、霧散する。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!」
止めとばかりに、チェシャーネコは一気に無数の鎖を繰り出してくる。
俺は思わず、目を閉じた。




