the fierce battle in the croquet court 1
庭師たちに教えられた方向へと、俺たちはまっすぐ向かった。
「そのクロッケー場ってところに次に向かえばいいのか?」
俺は詩織に聞く。
「はい。そこが次にアリスが向かったはずの場所です。」
「詩織、クロッケーってなに?」
鞘華が尋ねる。
「昔、ヨーロッパで行われていた球技ですよ。ルールは良く知らないんですが、物語ではボール代わりにハリネズミを、クラブの代わりにフラミンゴを使っていました。」
いや、代わりにならねーだろ。
「おまけにボールを潜らせるアーチは、トランプの兵隊さんを体を弓なりに曲がらせて代わりにしてたんです。」
「ひでえ。」
それもはやただの人権侵害じゃね?
「そんなことより、今度は何が出てくるんですかー?さっきみたいに一瞬で済ましてくれればありがたいんですけど…。」
鎧坂が尋ねる。
「そのことなんですが…。クロッケー場での登場人物は、実はとても多いんです。」
「えっ…。多いって、どれくらい…?」
鎧坂の声が一気に不安そうなものへと変化する。
「まず、さっき言っていたハリネズミ、フラミンゴ、トランプの兵隊さんたち。それからトランプの廷臣さんたち、トランプの子供たち、王様、女王様、侯爵夫人…。」
「そんなに…。」
鎧坂はみるみる青ざめていく。
俺も一度には相手にしたくない数だな…。
「それに…白ウサギとチェシャーネコ。」
『「「「「っ!!」」」」』
…ここに来て、よりによってあいつらか。
「し、白ウサギって、荒木先輩と鞘華先輩がボコボコにされたっていう化けウサギのことですか?!それにチェシャーネコって…。ボクもう帰っていいですか?」
「…どうやって?」
「ですよねー!あはははははははは!」
鎧坂が弱音を吐いて、鞘華にツッコまれる。
不安のあまり鎧坂のテンションがおかしい。
「やかましいわ中坊!」
「いて、いてててててて!」
すかさず弾正さんが鎧坂の顔を鷲掴みにして、強制的に黙らす。
「なあ嬢ちゃん、それって真面目にヤバくないか?こっちも人数が増えたとは言え、さすがにそいつらを一度に相手して、勝てるとは思えないんだが…。」
鎧坂にアイアンクローを食らわせながらも、弾正さんは真面目に考える。
「希望的予測を言えば、きっとその全員が一度に出てくることはないと思います。王様や女王様、白ウサギには後でも出番がありますから。逆に言えば、チェシャーネコはまず間違いなく出てくると思います。」
「そうか…。それならまだ戦えそうだ。詩織、文字魔法を頼む。」
「もちろんです。」
丁度、そのクロッケー場らしき空き地が見えたところで、俺たちは歩みを止めた。
「それじゃあ行きます。文字魔法、守護!対象、荒木さん、詩織さん、弾正さん、鎧坂さん、それに私!」
それぞれに詩織の書いた文字が、白い光となって飛んでいく。
一瞬、なにか見えない温かいものに包まれたのを感じ、俺たちは確かに詩織の魔法がかかったのを確認した。
「よし、全員準備はいいか?くれぐれも油断すんなよ。」
『うん!』
「了解。」
「おう。」
「はい!」
「はい、大丈夫です。」
激戦の予感を胸に抱きながら、俺たちはクロッケー場へと足を踏み出した。




