about the little dragon and this world 1
俺は今座り込んで、リョウと名乗った小さなドラゴン(元ハンマー)と向かい合っている。
「聞きたいことが山ほどある。ここはどこだ?いつここに来た?無意識の世界ってなんだ?お前はなんだ?さっきの黒いマネキンどもはなんだ?なんで…。」
『はいはい、ストップストップ。気持ちは分かるけど、そんな一遍に聞かれても困るよ。』
「お、おう…、すまん。」
『とりあえず、君が知りたそうなこと一通り説明するねー。』
そう前置きして、リョウは説明を始めた。
『まずここは君の無意識の世界。精神世界っていう方が分かりやすいかなー。ここでは君が見たもの聞いたもの、感じたもの、それと君の今までの記憶によっていろんな反応が起こるんだ。例えば感情、思考、反射とかね。それらの反応のうち、極々一部がここを出て表に現れる。それが君、荒木龍太という人格だよ。どう、分かった?』
「…なんとなく、理屈は。」
『うん、それでいいよー。そして本来表に現れて、外の世界で暮らしているはずの君の人格が今この無意識の世界にいるってことは、君の現実の肉体は今ものすごく深く眠っているってことになるねー。』
「つまり俺は、今夢を見てる状態ってことかな。」
『うーん、それはちょっと、いやかなり違うかな?夢は眠れば見れるけど、ここに来るには死にかけるとか、変な薬を使うとか、外の世界ですごいショックを受けるとかしないと来れないよー。それに夢は朝が来れば覚めるけど…、
…この無意識の世界には、一度来るとそう簡単には出られないよ。』
「なっ!」
じゃあ、俺はここから出られないのか?
『まあ多分、外から脳に特定の刺激を与えれば目が覚めると思うよー。いつになるかわからないけど、待っていればそのうち外のお医者様達も気付くでしょ。』
そうか、良かった…。
「でも、なら俺はどうしてここに来たんだ?多分俺は死にかけても、変な薬を使っても、ショックを受けたりもしてねぇぞ?」
『そのことなんだけど…、君が意識を失う直前、何を見た?』
確か…。
「スマホに届いた変なメールを開いて、そしたら急に画面が点滅しだして…。」
『たぶんそれだよ。』
「へ…。」
『君はよく覚えてないみたいだけど、前に君は光過敏性発作についての知識を得たことがあるんだよねー。それによると、強い光や激しい光の点滅などの刺激によって、人は気分が悪くなったり体調を崩したり、ひどい場合は気絶するなんてこともあるらしいよー。』
そう言えば、そんなことを書いた記事を見た覚えがある。
「じゃあ、今俺がここにいるのは…。」
『多分、そのスマホの画面の激しい光の点滅が原因だと思うよー。』
まてよ、そうなると…。
「メールの送り主は、その光過敏性発作を利用して、わざと俺をこんな状態にしたかもしれない…?」
『君だけじゃないかもよー。メールは不特定多数の人に送れるから。さすがに受け取った人全員が君のような状態になるとは思えないけどねー。』
「…一体何が目的なんだ?」
『さあ、そこまでは分からないよ。メールの題のPlease help Alice. だけじゃなんの手掛かりにもなりゃしないしねー。』
それもそうか…。…ん?
「なあ、さっきからお前、俺が見たものを知っているような言動をしてる気がするんだが…。」
なんで、こいつは俺が昔読んだ記事やあのメールの題を知っている?
『そりゃそうだよー、なんせ知ってるんだから。』
「…お前は一体、何なんだ?」
『うーん、なんて言ったらいいかなー?一言で言えばさ、僕は君なんだよ。』
「…は?」