Extra story / Siori Banzyou 3
気が付くと、私は薄暗くて狭い場所に、手足を縮こまらせて入っていた。
もぞもぞ動くと、手足や背中が丸みを帯びた壁らしき固いものに当たる。
このままでは息苦しくて死んでしまう。
必死で壁を叩くと、ペキッという音と共に壁にヒビが入る手応えを感じた。
そのまま叩き続けると、ヒビは広がり続ける。
そして遂に、壁は破れた。
私はその狭いところから転がり出る。
「プハッ。」
思い切り深呼吸をして、息を落ち着かせ、私は周りを見渡す。
そこはおっきな鳥の巣だった。
いや、おっき過ぎると言うべきか。
なにせ巣の縁が、はるか先に見えるのだ。
振り返ると、私が閉じ込められていたものが転がっていた。
それは大きな卵の殻だった。
どうして私はこんな大きな卵の中に入っていたのだろう。
そもそも、私はどうしてこんなところにいるのだろう。
…そうだ、思い出した。
私は自分の部屋で寝ようとしていたんだ。
そしたらスマホに誰かからメールが届いた。
その『Please help Alice.』という件名のメールを開いた瞬間、激しく画面が点滅したと思ったら、急に目の前が暗くなって…。
ダメだ、そっから先を思い出せない。
それに、さっきまで見ていたものは何だったのだろう。
私は白い万年筆なんて持っていない。
途中から、全て現実では過ごしていない、偽りの日々の記憶だった。
あれは、夢だったのだろうか。
何も分からない。
手掛かりを求めて辺りを見渡すと、いつの間にか何かが私の後ろに置いてあった。
それは私の部屋の机だった。
「どうして私の机が、こんなところに…。」
近づくと、机の上には以前物語を書くのに使っていたノートの新しいページが広げられている。
その上には、見覚えのある白い万年筆が置かれていた。
「この万年筆、さっき夢で見た…。」
そっとその万年筆に触れると、それは私の手を離れて浮き上がり、白く輝く。
「えっ…。」
万年筆は白い光の塊になると、そのまま私の中に吸い込まれていった。
その瞬間、私の中にいろんなものが溢れ出てくる。
そして一遍に、全てを理解した。
ここは私の心の中の世界。私の表には現れない、無意識の世界。
さっきまで見ていたのは、書くことから、自分の夢から逃げた私が生み出した幻影。
そしてあの白い万年筆は、私がいつの間にか自分から切り離していた、『書きたい』という気持ち。
今、分かれていた私たちは、また一つになったこと。
私はノートを手に取って、開かれていたページを見る。
『書いて、書いて、書き続けて。
誰に笑われても、馬鹿にされても、書き続けられた物語だけが、誰かを変える力を持つ。』
本当にそうだね。
ありがとう、気付かせてくれて。




