Extra story / Siori Banzyou 2
そんな変わり映えのしない日々を送っていたある時、ふと気が付くと、筆箱の中に見覚えのない、白い万年筆が入っていた。
心当たりのある人に聞いてみても、誰も自分のものと言わない。
それもそっか。
今時万年筆なんて使う人、ほとんどいないもの。
仕方がないから、持ち主が見つかるまで、私はその万年筆を自分の筆箱に入れておくことにした。
それからだったと思う。
時々ノートや手帳に、書いた覚えのない書き込みがしてあるようにあった。
書き込んである言葉はいつも同じだった。
『このままでいいの?』と。
ある日の晩宿題をしようとノートを広げ、お気に入りのシャーペンを取りだそうと、筆箱に手を入れる。
そのままノートに書き込もうとしてふと手を見ると、間違えてあの白い万年筆を握っていた。
いつものシャーペンに持ち替えようとして、私は異変に気付く。
右手が万年筆を握ったまま、固まって動かない。
「えっ…何…?」
急に右手が動かなくなる病気でも発症したかと心配になったとき、勝手に右手が動き始めた。
「な、なんなの…?」
右手に力を込めて抑えようとするが、まったく止められない。
私の右手は、白い万年筆でノートに次々と言葉を書き込んでいく。
『いいの?』
『このままでいいの?』
どうやら今までの書き込みは、今右手を操っている、この万年筆の仕業だったらしい。
『もう二度と、書かなくていいの?』
…。
「か、書かないよ!私はどうせ、大したことないものしか書けない。みんなに笑われるようなものしか書けないもの!」
動揺して、私は叫ぶ。
『誰かに笑われたから、馬鹿にされたから書かないの?
あなたの書きたかったものは、その程度のものなの?
なら、最初から何も表現したいものなんてなかったんじゃない?』
っ…!!
「そんなことない!」
私は思わず怒鳴りながら、椅子を蹴って立ち上がる。
「今も私の中に、表現したいものが溢れてる!それを誰かに笑われたからって、ないことには出来ない!それに!」
頭に浮かんだのは、一人の友達。
「たとえたった一人でも、私の書いたものを面白いと言ってくれる子がいる!その子がいる限り、私は今でも、今までもずっと、この胸の内にあるものを言葉にしたい!」
ピシリ。
周りの景色にヒビが入る。
『それがあなたの本心なら。』
ヒビは一気に広がっていく。
『心の殻を破りなさい。』
そして。
私の目に映るもの、いや、映っていると思い込んでいたもの、その全てが砕け散った。




