Extra story / Siori Banzyou 1
小さい頃から、私は本が好きだった。
字が読めなかった頃、私は何度もママに絵本を読んでもらった。
同じ絵本を、飽きずに何度も読んでもらっていたそうだ。
「読んで」を覚える前に、「もう一回」を覚えてしまうほどだったらしい。
文字が読めるようになってからは、いろんな本を何遍も繰り返して読んできた。
絵本から小説へ。小説から文学作品へ。
読む本は、どんどん難しく、分厚くなっていった。
いろんな物語の中で、私はたくさんの人と出会い、様々な体験をした。
どの物語も、私に大切なものをくれた。
やがて私は、自分でも物語を書いてみたくなった。
実際に書いてみると、これが難しい。
思ったほどペンが進まない。
どうしても、自分が今まで読んできた作品と比べて、劣っているように感じてしまう。
自分が書いたものの展開が、読んだことのあるものに似ている気がしてしょうがない。
それでも、私は書いた。
書くことは、思った以上に楽しかったからだ。
書いた以上は、読んでもらいたい。
中々勇気が出なかったけれど、とうとうある日、私は書いたものを友達に見せた。
その子は、私の書いた物語を面白いと言ってくれた。
ほんのちょっぴり、私は自信を持てた。
物語を書くのに夢中になっていたある日。
クラスの子たちが、私のことを影で笑っているのを聞いてしまった。
いつも変なものを書いている子、と。
それから、私は物語を書けなくなった。
何か書こうとするたびに、あの子たちの笑い声が脳裏によみがえる。
その瞬間に一気に、恥ずかしいような、悲しいような気持ちが込み上げてきて、急に自信がなくなる。
そうすると、今の今まで書こうと思っていたことが、萎んでしまう。
私はペンを置いた。
書けなくなってから、私はあれほど読んでいた本を読めなくなった。
たぶん私の中に、物語を書ける人への嫉妬が芽生えたんだと思う。
なにを読んでも、適当な理由を見繕って、つまらない、面白くないと読むのをやめてしまう。
そしていつも最後に、こっそりと思う。自分ならもっと上手く書ける、と。
毎日学校に行って、勉強して、友達とおしゃべりして、部活に行って、家に帰って寝る。
そんな日々も、本当はきっと悪くないのだろう。
悪くないどころか、幸せな方であることは、頭では分かってる。
だけどどうしても、前よりも私の見る世界は色あせているように感じてしまう。




