the opening of the war 7
20メートルほど上昇した後、俺はゆっくり落下していく。
眼下には、さっきまで俺がいた地点をほぼ中心に円状にひしめく無数の黒いマネキン達。
「で、どうすんだよ?このまま落ちんのか?」
『ううん、落ちる勢いを利用して僕を地面に振り下ろして叩き付けて。』
「そんなことしても地面に激突して俺がぺちゃんこになるだけだろーが。」
『だいじょーぶ、そんなことにはならないよ。ここは外の世界とは違うんだから。』
「外の世界?」
『質問は後々。ほら、僕を構えて。君ならできるよ。』
…なんとも信用できないが、今はこいつの言うことを信じるしかない。
俺は言われたとおりにハンマーを構える。
地面が近づいて来るにつれ、俺が落ちるスピードはどんどん速くなっていく。
俺が地面と衝突する寸前、俺は思い切りハンマーを下へ振り下ろす。
「っらあぁぁぁ!!」
ハンマーを地面へと叩き付けた瞬間、轟音と共に凄まじい風が吹き荒れ、俺は思わず目を閉じる。
数秒後、吹き荒れていた風が収まりやっと俺の前に広がっていたのは、俺を中心とする巨大なクレーターだった。
あれだけたくさんいた黒いマネキン達は跡形もなく消え去っている。
「…やりすぎじゃね?」
『あ、やっぱりー?』
軽い口調で手元のハンマーはそう言うが、割と深刻な事態だと思う。
もし誰かに見つかったら、この状況をどう説明しようか。
そんなことをつらつらと悩んでいると、急にハンマーが俺の手をするりと抜けて
自分で動き出した。
「は?え?なに?」
『じゃ、元の姿に戻るねー。』
そいつは空中に浮くと黒い靄に包まれ、数回回転した後に直径1メートルほどの黒
い球体になった。
次の瞬間、ピキリ、という音と共に球体にヒビが入る。
今度は何が出るのか。俺は息を呑んで見守った。
ヒビは次第に広がっていき、そして。
『どーん。』
黒い球体を粉々にして出てきたのは。
「…ドラゴン?」
俺の頭ほどの、小さな赤いドラゴンだった。
『とりあえず、僕のことはリョウって呼んでねー。』
これがリョウとの最初の出会いであり、俺の最初の戦いの終わりだった。
この時の俺はまだ知らない。
戦いは終わったどころか、始まってすらいないことを。
『じゃ、改めて。…無意識の世界へようこそ。』